ゴリラ裁判の日

須藤古都離(著者)

• 販売会社／発売会社: 講談社
• 発売年月日: 2023/03/15
• JAN: 9784065310090

商品レビュー

2024/09/14

凄い。人権とルーツの物語だった。
前半は読むのに時間が掛かった。たぶん人と同じ言語を操るゴリラのサイエンス・フィクションだと思ってたから。それなのにローズは他の読んだことがある言葉を操る類人猿の小説のどれよりも人間的だったから、読みにくかった。
折り返したあたりから、ローズは完全に人だった。リリーという友人が出来て、ギャビンにパワハラを受け、担当弁護士にはモラハラを受けていた。
ダニエルの答弁は、正直詐欺の手口というか、DV彼氏のやり方というか……詭弁でパフォーマンスだったと思うけれど、私も陪審員達同様に考えさせられた。
本当に面白かった！

2024/09/09

オススメされて読んでみた。
言葉を喋れるゴリラのローズが、ゴリラとしても人間としても暮らすこともできないという葛藤をする中で、あることをきっかけに裁判を起こすことになる。話の過程で動物保護の正義、人権保護の正義など様々な正義が入り乱れる。

人間とは何か？に触れる場面も多くあり、何をもって人間であるのか、権利について動物と人間を分けることは可能なのか？など論点が多々あった。展開の中で時折そうしたことに思いを巡らせながら進む小説だ。
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「正義は人間が独占しているだと？人をバカにするのもいい加減にしろ。君は正義というものを全く理解していない。そもそも、完璧な正義なんてものは現実には存在しないんだよ。僕たち人間が不完全な存在だからな。人間は粗暴で矛盾を抱えた、利己的な存在なんだよ。だが、僕たちはそれで満足していたわけじゃない。何千年もの歴史をかけて憲法や法律を作り、司法制度を練り上げてきたんだ。完璧な正義を達成するためじゃない、より良い社会を築くため、正義に少しでも近づくためだ。その過程でどれだけの犠牲があったと思う？どれだけの苦労があったと思う？」（p.245）

2024/09/01

サリージョーンズの伝説、の現代版。(めっちゃ褒めてる。サリージョーンズは傑作)
でも、それだけじゃない。
人間とは何か？だけじゃない、今の現代社会が抱えるあらゆる矛盾をコミカルに浮かび上がらせている。

でも、問題提起だけじゃない。
話としておもしろい。特にプロレスと裁判！
ローズの生真面目さと優しさと人間の狡さがコントみたいに際立っててめっちゃおもしろかった！