逃亡者 幻冬舎文庫

中村文則(著者)

• 販売会社／発売会社: 幻冬舎
• 発売年月日: 2022/11/10
• JAN: 9784344432420

商品レビュー

2025/08/14

奇しくも戦後80年という節目で、本書を読む。

最近所属するグリークラブで「うみゆかば」を合唱する機会があり、初めてこの曲の存在を知った。本書第3部鈴木の朱記に登場し、歌詞の苛烈さに衝撃。
歌う身としてはメロディの荘厳とした響きに酔いしれてさわやかな気分になるが、そこに軍歌として無条件に青年を鼓舞するの魔力が秘められているのだろうと、推察。

全体として、やはり出てくる圧倒的な悪"B"。
天災のごとき破壊力と無常さ。抗う余地など1mmたりともない。制限された環境でもがく主人公。この構図に、読者として惹かれる。
本作は、史実にもとづく物語もふんだんに盛り込まれている。フィクションで留まらない世界観拡張のなかに、著者の創作への貪欲な姿勢をみる。
やはり、自分の人生観に影響を及ぼし続ける大切な作家のひとりである。

2025/01/10

- かなりたくさんの要素が入り混じっていて、一言では難しいし、楽しめたかと言われたらよくわからない。
- 中村文則は、文体に自分にとってのざらつきのようなものがある気がする。なぜ、そういう表現なのか？なぜ、その言葉のチョイスなのか？というのが、ストーリーそのものとは違ったところで、自分の印象に残る。これが文体の影響ということかな。
- 隠れキリシタンの弾圧は想像よりやはり酷いというか、踏み絵があったとか、島原の乱で天草四郎が活躍した、みたいな歴史の1行でしか理解していなかったなと思った。
- 弾圧されていた隠れキリシタンとの繋がりという主人公のルーツ、第二次世界大戦での非侵略国であるベトナムのアインのルーツ、そして第二次世界大戦旧日本軍のトランペット吹き鈴木、というファクターをどのように繋げて読むと良いのか、結構難しい。

2024/09/15

タイトルに惹かれて読み始めましたが、途中でやめられないというプライドと時間との戦いでした。かなり長かったです。折り返した後からは入り込めて思ったよりすらすらと進みました。
スケールが大きい物語で、読了後のなんとも言えない浮遊感がありました。
僕はとても面白かったと思います。若いからかもしれません。