清浄島

河﨑秋子(著者)

• 販売会社／発売会社: 双葉社
• 発売年月日: 2022/10/27
• JAN: 9784575245707

商品レビュー

2024/02/05

エキノコックス症殲滅に向けた闘い

[fugyogyo]

本書は、北海道礼文島の風土病と恐れられた「エキノコックス症」の解明のため、昭和29年道立衛生研究所から同島に派遣された動物研究者である主人公が、島民との軋轢や葛藤、懊悩を乗り越えながら島の支援者とともに奮闘する姿を描いた、史実を基にした長編フィクションである。重厚で地味なテーマながら、主人公をはじめとして魅力ある個性的な登場人物を配しながら物語を緩急自在に展開し、読み手をその世界に引き込んでいく著者の筆力は見事で読みごたえがある。そんな物語の中から、エキノコックス症殲滅に向けた闘いには、今や陰に隠れて忘れられてしまいがちな多くの先達の地道な努力と苦渋の決断や、幅広い住民の理解と献身的な協力の歴史があったこと、そして現在も感染症拡大の防止に向けた弛まぬ歴史が刻まれている厳粛な事実を教えられる。

2024/07/12

松岡圭祐さんの「８月１５日に吹く風」しかり、歴史上の出来事を現代の小説のタッチで描いてくれる本が私は好きです。
久しぶりにこの値段でこれだけの大作を読んでよいのか、と感動した小説。

北海道の礼文島でエキノコックスと戦った人々のお話です。

エキノコックスの存在はうっすらと（それこそ最近の知多半島のニュースで）知っていたけれど、こんな壮絶な戦いがあったのだなぁと。小野不由美さんの屍鬼のような未知の病原菌を突き止めていくような展開ではなく、既に原因も対策もわかっている上で、それをどう実現していくか、というお話。

もともとの知識で礼文島の飼い犬・飼い猫がすべて処分されたというのを知っていたので、最初に島で迎え出てくれた少年が愛犬を大切にしている描写がでてきた時点で鬱展開を覚悟していたものの、まぁ辛い…。
最初は抵抗していた飼い犬・飼い猫の殺処分について、進んでいくにつれてまだ犬猫を隠している家庭がやり玉にあげられて自ら供出するようになっていくあたりが日本の嫌なところが凝縮されているなぁと…。

難しい、とっつきにくいテーマと感じるかもしれませんが、ふだん小説を読み慣れている方ならさくさくと読める内容です。おすすめ。

2024/06/13

エキノコックス症と闘う研究者の話。
北海道の礼文島で流行するエキノコックス症の拡大を防止するため、苦渋の決断を迫られる。
史実を基にしたフィクションで、今のところ今年のベスト小説かも。