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私の文学史 なぜ俺はこんな人間になったのか? NHK出版新書681
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | NHK出版 |
発売年月日 | 2022/08/10 |
JAN | 9784140886816 |
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なぜ町田康が好きなのか。作品に対して自分がぼんやり感じてはいたことと町田康自身の言葉で説明されていたことに乖離がなく嬉しかった。なぜだか。 まず文体。 最近は文体の時代ではないのかな、というのには納得というか共感。主義主張、もしくは物語の価値が強い気がする。個人的に、物語を読むの...
なぜ町田康が好きなのか。作品に対して自分がぼんやり感じてはいたことと町田康自身の言葉で説明されていたことに乖離がなく嬉しかった。なぜだか。 まず文体。 最近は文体の時代ではないのかな、というのには納得というか共感。主義主張、もしくは物語の価値が強い気がする。個人的に、物語を読むのは面白いのだが感動は薄いのである。物語や主義は、私は消費してしまうみたいだ。 言葉を疑うということと、オリジナリティに拘泥しないこと。本当にこの言い回しは真実なのか?と追求するだけでなく、自分らしさにこだわるほうにも寄らない。どこにも身を置かない感じが、町田の文体なんじゃないか。 また笑いについて。 「この世の真実こそがおもしろいことなんです」 ーーよくわかる。それが“interesting ”なときもあるし、“笑ろてまう”なときもある。おもしろいことを虐げているとおもしろくない、というのもわかる。 ところで井伏鱒二読みたくなった。一幅の絵のようなエピソードを「なんかわからんけどいいなぁ」と感じることは、日常でもよくある。 純文学が好きなのだが、たぶんこのせい。 それと 昔のものが好きだというシンプルな話。 自分も子どもの頃から時代劇や落語が好きだったため、もとから町田の世界観に惹かれる素養があったんだろね。 最後に翻訳の話。 要するに言葉の選び方の話であるが。 「決定された一個しかない言葉ってないんですね。その人がそれをどういうふうに使っているかというのは、いつでも考えないと」 これは人と会話しているときにすごく感じる。同じ日本語を使っていても、実は相手と自分は違う意味で用いているなという感覚。そして自分の言語が自分にしか通用していない恐怖というか。 「共通で、絶対に疑いようのない言葉だけ使って、誰もそれを疑わないというものにしていくと、結局何も言うてないのと一緒だし、何も聞いていないのと一緒やな」 そのとおりと思う。今、それでケンカしている人らをよく見る。お互い言っている意味が理解できてない状態で戦っている。 そして「人間はたまらなく孤独」で、 「自分しかわからん魂」に形を与えたい。そのために言葉で塗り固めていく。 文学の最終的な目的… と、書いているとキリがない。 ただなんか、自分の考えと町田康の言ってることに乖離がなく嬉しかった、とか感じている自分が恥ずかしいやつだなと最後に。 自意識。
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※このレビューにはネタバレを含みます
ギケイキシリーズを読んで新たに盛り上がってきた個人的な町田康に対する熱。著者の背景を知れそうな1冊があったので読んでみた。自身を振り返りながら、手の内こんだけ明かすの?と読者が心配になるくらいに創作の秘話を語っており、めちゃくちゃ興味深かった。ブログ等で駄文を綴る私のような人間、ひいては文字で何か伝える人全員に刺さる内容だと思う。 小説家の中ではかなりマルチな仕事が特徴的であり、そのスタイルに至るまでの流れを幼少期に読んだ本から影響を受けた作家など様々な要素を踏まえて語っている。対談やインタビュー形式ではないことで自分語りをせざるを得ないがゆえの情報量がふんだんに詰まっていた。また講義を書籍化しているのでかなり読みやすいし、著者の書き言葉ではない語り口を味わえてよかった。(本著内にもあるとおり話し言葉を文学へ積極的に取り込んだ1人ではあるが、それとはまた別の「talk」という意味で) 文章を書くことに対する著者の態度、考えが個人的には一番興味深かった。どちらかといえば破天荒な小説が多いので直感的かと思いきや想像以上に理詰めで何がオモシロいのか?に関する考えが解像度高く明らかにされている。それは長いキャリアを振り返って見出した解かもしれないが、それにせよこれだけ自己分析して語ることのできる作家はどれだけいるだろう。小説においては文体論がめちゃくちゃオモシロかった。音楽のミキシングをアナロジーとして文を書くときにどんな要素をどれだけ入れ込むかが大事だという話はかなり勉強になった。以下引用。 *時折、ある一つのトーンで埋め尽くされて、本人は「カッコいいな」と思ってんやろうなという文章ってありますね。「恥ずっ!」みたいな。それは仕事でもあると思うんですけど、カッコよさだけで塗り固めていると、やっぱり、響きがない。* 随筆の書き方の話も納得することばかりで著者曰く、おもしろいことは「本当のこと」だと著者は主張していた。何気なく文章を書いていると、自意識に絡め取られたり、社会などを想定してどうしても少なからず建前の要素が入り込んでしまう。そこに引っ張られずにシンプルに本当に感じた気持ちを書くのが一番オモシロいと。著者は西村賢太をそこで引用しており、まさに!と思ったしベクトルは別だけども植本一子さんの日記がオモシロいのも同じ理由だろうなと感じた。 作品語りもめちゃくちゃオモシロくて特に井伏鱒二の『掛持ち』という小説の紹介内容は完全な門外漢でも思わず読みたくなる内容だった。また終盤の古典論も興味深く流行りものに対する熱狂の嘘くささから身を置くために古典があるという話や、そうやって今の時代と距離を取ることで人間の本質を見つめることができる古典の良さなど、まさしくギケイキシリーズを読んで感じたことが言語化されていた。 そしてラストにある「魂の形を自らの言葉で塗る」という章がマジでとんでもない。「文学の言葉の中で生きたい」というテーマで自分の魂と言葉の関係性を語っているんだけど、全文引用したくなるレベルでかっこよかった。大衆、社会の影響を受けて思考停止で使ってしまう言語をオートマチック言語と名付け、それに対して文学で抗っていく姿勢の表明が本当に痺れた。一番好きなところだけ引用。まだまだ読めていない作品だらけなので、ゆっくり楽しんでいきたい。 *自分しかわからん魂を持っていることが、人間はたまらなく寂しいんです、孤独なんです。だから、この、自分しかわからん魂を一人一人が持っているということに対して形を与えたいんです。(中略)魂って形がないですから、言葉によって塗り固められるから、言葉がしょうもなかったら、魂がしょうもないということとイコールになってまうんです、文学化したときに。その魂に形を与えて、外側に出して、自分も他人も見るというふうにした場合、それが、しょうもない言葉で、一色の自動的な言葉で塗られたというのは、それはしょうもない話なんです。*
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北杜夫作品を笑いながら読んでいたら「そんなの読んだら頭おかしくなる」と親に心配された。というエピソードを取り上げられていましたが、私は町田氏の作品で同じ経験をした人間です。
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