カレーの時間

寺地はるな(著者)

• 販売会社／発売会社: 実業之日本社
• 発売年月日: 2022/06/08
• JAN: 9784408538068

商品レビュー

2024/06/02

終戦後の祖父と現代の孫の話を行ったり来たりしながら物語が進んでいく。
食べるに困っていた時代に食事を与えてくれた男は「お前が大人になった時に腹を空かした子どもに会ったら食わせてやれ、約束だと言った。これが祖父の仕事に大きな影響を与える。
子どもの頃に親から愛情を得られなかった祖父は頑固で愛情表現のできない人。
思っている事なんて言葉にしないとわからないと教えてあげたくなるが、上手く愛情表現ができず、その年齢の人にありがちな男尊女卑ともとられかねない発言をしたり、本当の思いを伝えそこなったりしてしまう。
半強制的に同居し始めた孫息子と少しずつ心を通わせ、少しずつ変化していく祖父と孫息子。
周囲を巻き込みながら祖父と孫息子の間柄も少しずつ変化していく…
家族との時間、家族への愛情をカレーに託したかの様な祖父が少し切なく感じられた。
家族に愛がなかったわけではなかった。
不器用ながら男が女を守らねばと懸命に生きてきたのが祖父だったんだと思う。
祖父の家族への愛がなんとなくかもしれないけれど家族に伝わったラストに救われた。

2024/06/02

祖父と同居することになったキレイ好きの若者・桐矢と、祖父の義景の回想の二視点で構成された小説。
要所に出てくるレトルトカレーのアレンジが美味しそう。祖父・義景の頑固さは読んでいてしんどかった。いくら内面では相手を思いやっていたとしても、伝えるべきことは伝えるべきだったと思う。

2024/05/29

カレーを食べながら、みんなから疎まれている祖父と暮らし、物語は過去と現在をいったりきたり。

おじいさんの過去の話は壮大で、食べ物が無い時代を歯を食いしばって生き抜き、自分の家庭を築き上げてきたおじいさん。
こういう時代を苦労して過ごすと少々偏屈になってしまうのも致し方ないのであろう。

しかしながらこの本を読み進めていると少しこの主人公のおじいさんがかわいらしく見えてきて応援したくもなる。

不器用であるけれど、3人の娘達や孫への愛情は深く力強い。
働きながら娘達を育てあげるのは大変な苦労だったろうけど、この上なく幸せな人生だったことも間違いない。

想像力をかき立てられる本。