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ゴリラの森、言葉の海 新潮文庫
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ゴリラの森、言葉の海 新潮文庫

山極寿一(著者), 小川洋子(著者)

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ゴリラの森、言葉の海 新潮文庫

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 新潮社
発売年月日 2021/10/28
JAN 9784101265926

ゴリラの森、言葉の海

¥330

商品レビュー

4.1

11件のお客様レビュー

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2024/06/12

昔、立花隆の「サル学の現在」を読んで、人類の先祖がチンパンジーのように残忍ではなく、ゴリラのように穏やかな性格だったら我々はもっと平和な歴史を刻んだだろうなと思っていた。どうやら、僕の考え違いだったようだ。山際先生は集団間の暴力の理由を言葉、死者の利用、共感性としている。ユヴァル...

昔、立花隆の「サル学の現在」を読んで、人類の先祖がチンパンジーのように残忍ではなく、ゴリラのように穏やかな性格だったら我々はもっと平和な歴史を刻んだだろうなと思っていた。どうやら、僕の考え違いだったようだ。山際先生は集団間の暴力の理由を言葉、死者の利用、共感性としている。ユヴァル・ノア・ハラリ「サンオピエンス全史」言う処の認知革命が原因なんだな。 山際先生の近親相姦のタブーの起原説に納得した。育てる経験が性的な関心を抑制する。そのインセスト・タブーがあるからこそ娘を他の家に差し出すことができる。また、類人猿のメスは親元を離れて繁殖するとある。 ここでレヴィ・ストロースの云う「女の交換」が発生する。構造主義者は女の交換ありきで考えているけれど、親と子供が過ごす時間、またメスが独立して作る関係性があってのことだと思う。 橋本治「源氏供養」のことも思い出す。紫の上にとって光源氏は父親のような保護者だったはず。とんでもない裏切りだよね。 メスにとっての前のオスの子供を今のオスが殺す子殺しは立花隆の本で知っていた。ゴリラにも見られるという。人間の目から残酷だと考えるのは不遜かもしれない。メスは何故子供を殺したオスを受け入れるのかという見方もそういう風にゴリラは認識しているか判らないともある。しかし、知能の高いゴリラがそう認識しないなんてあるんだろうか。 最後は山際先生と小川さんの屋久島探索。小川さんが森の中を歩くようという作家感が語られる。変なサル、人類はどんどん変なことになっちゃっているなあ。 そんなことを考えさせられる読書だったと思う。

Posted by ブクログ

2023/08/19

ゴリラの専門家(霊長類学者)の山極寿一さんと、小説家の小川洋子が、ひたすら対談する。対談集なので、徹底的に突き詰めるというより、ふわっと終わった感がある。学者は、霊長類のゴリラの特性から、人間との共通点、違う点、なぜ違いが出たかについて語る。小説家は、なぜ人間界にだけが戦争や暴力...

ゴリラの専門家(霊長類学者)の山極寿一さんと、小説家の小川洋子が、ひたすら対談する。対談集なので、徹底的に突き詰めるというより、ふわっと終わった感がある。学者は、霊長類のゴリラの特性から、人間との共通点、違う点、なぜ違いが出たかについて語る。小説家は、なぜ人間界にだけが戦争や暴力や強姦が起きるのかを考えている。山極さんは『言語』、それによるメタファー、そして死の記憶等の、他の動物にはない人間特有の特性だとする。それは人間が文明を築き上げた源でもあり、それがまた、戦争、暴力をも引き起こす源でもあるのか。個人的には、ゴリラの子殺しの話が興味深い。自分の子どもを殺した男ともつながれる。それは死の記憶がないから?ゴリラと人間の大きな違いは、罪の意識の有無かもと思ったが、それも言語による幻想なのか?資本主義が効率化を善とする風潮を生んだが、子育ては効率化できないもの。ゴリラを見習って共同で育てるべきと言うが、言うは易しだわなあ・・・。

Posted by ブクログ

2023/05/03

人間の独特の能力であるフィクションを駆使して世界の可能性を紡ぎ出す作家と、サルやゴリラを通して人間を理解しようとしている研究者。この対比は、巻末に紹介される両者の往復書簡にて、研究者側が表現したものだ。本著はまさに、霊長類が保有する物語や現前性について、それを比較探求する事で真理...

人間の独特の能力であるフィクションを駆使して世界の可能性を紡ぎ出す作家と、サルやゴリラを通して人間を理解しようとしている研究者。この対比は、巻末に紹介される両者の往復書簡にて、研究者側が表現したものだ。本著はまさに、霊長類が保有する物語や現前性について、それを比較探求する事で真理に触れんとする試み、或いは、その探求や比較の楽しさを伝える本だ。 例えば、子殺しの意味について。社会生物学的に解釈すれば、自分の子どもを殺したオスは、自分の子どもを守れなかったオスより強い。だから一層、これから作る子どもを守ってくれるに違いない、とメスが見なす。こうした仮説は、人間側が自らの感性でゴリラ側に当て嵌めた物語だが、その証拠も出てきているとの事。そこには進化論的意義、遺伝子の利己性と共に、種全体の社会的関係性が関与する。メスが抵抗仕切れない肉体的差異とか、殺しが容認される社会形態とか、それでも全滅はしない合理性とか。他にも、オランウータンを除く昼行性の霊長類では、メス単独、メスだけの集団は存在しないが、オスは単独やオスだけの集団は見られるなど。 では人間は。人間ばかりが、自然に反する独自の物語を用いて、その自然状態を意識的、持続的に変更させていく。フィクションはまさしく人工物であり、言葉の意味を組み合わせる事で、複雑な社会形成を可能にした。同じ日々を繰り返す霊長類と、日々の変化を積み重ねる霊長類の差。その原点としての言葉の海という表現は、まるで原始の海がシアノバクテリアから多様性を構築したように、一方では、変わらぬ森と共に生きるゴリラの対比。二つのアプローチによる書。素晴らしい。

Posted by ブクログ