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台所太平記 改版 中公文庫
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台所太平記 改版 中公文庫

谷崎潤一郎(著者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 中央公論新社
発売年月日 2021/09/22
JAN 9784122071117

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商品レビュー

4

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2024/11/14
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※このレビューにはネタバレを含みます

一応、千倉磊吉(ちくららいきち)という作家の家で働く女中さんの話というフィクションの態を取っているけど、これは谷崎純一郎宅で働いていた女中さんたちの話。 すべてがすべて完全実話じゃないかもしれませんが、この突拍子もなさは多分ほとんど実話。 だからとても愉快に読んだ。 今のご時世、女中さん(お手伝いさん)を雇っている家となれば大金持ちでしかありえないけれど、昭和の初めころのそれは、わりとよくある職業の一つだった。 何せ原作マンガのサザエさんでさえ、ご近所のお手伝いさんとして働いていたことがあるのだから。 しかしさすがは文豪谷崎潤一郎。 彼の家には複数人の女中さんたちが入れ代わり立ち代わり雇われては、家族のように己をさらけ出しながら暮らしていた。 その様子を面白おかしく書いたものなのだから、これがおもしろくないわけがない。 折々挟まれる挿絵がまたいい。 それぞれの女中さんの特徴を見事少ない線で書き表しているのだが、谷崎がモデルの千倉磊吉だけがうさぎの被り物をした三頭身に描かれているのはなぜだ?笑 あくまでも雇い主の眼で書かれたものなので、本人たちにはもっと言い分があるのかもしれないが、主人にマッサージを頼まれると嫌そうな顔をしてしぶしぶ行うなど、案外好き放題にやっている様子である。 恋愛にかまけて家のことをさぼるとか、台所でこっそり飲み残しの酒を飲むとか。 一番驚いたのは、子どもの名前を付けてくれと頼んでおきながら、候補の名前が気に入らないからもう一度考えてくれという銀。 彼女は文豪谷崎潤一郎…じゃなかった千倉磊吉が彼女の店の暖簾に染める短歌にダメ出ししたうえに、こう変更したらどうでしょう?などと提案までしてくる。 そして、実際そのとおりに暖簾は作られた。 自尊心が強すぎる勘違い女中の百合が付き人になったのは(そもそも大女優の付き人になりたいから紹介してくれと主人に言う女中というのが…)、国民的女優の高嶺飛騨子(たかねひだこ)というのだが、これは高峰秀子のことですよね、きっと。 これを読むと彼女もまた、とても鷹揚としてよい人でした。

Posted by ブクログ

2024/11/02

作家の千倉磊吉(ちくら らいきち)が昭和10年に50歳で二度目の妻の讃子と所帯を持ってから、戦後の昭和30年代まで、たくさんの女中さんたちが千倉家で暮らした。 前の職場で、あるじに手篭めにされそうになって逃げてきた子などもいたが、磊吉はそんなことはせず、女中たちにも美味しいものを...

作家の千倉磊吉(ちくら らいきち)が昭和10年に50歳で二度目の妻の讃子と所帯を持ってから、戦後の昭和30年代まで、たくさんの女中さんたちが千倉家で暮らした。 前の職場で、あるじに手篭めにされそうになって逃げてきた子などもいたが、磊吉はそんなことはせず、女中たちにも美味しいものを食べさせ、妻の讃子も、困っている者があればすぐに雇った。 そういう家風(?)のせいか、女中さんたちは存分すぎるほどにに個性を発揮する。 さほど厚い本ではないけれど、「女の一生」を何冊も読んだ気分になる。まさに、女の博覧会のよう。そのリアルな描き方はさすがに谷崎ではあるけれど、視線は働く若い女性に対するエールにあふれている。 磨けば「お嬢さん」になれる資質を持っているのに、生まれた場所によっては満足な教育を受けられないという不公平を嘆くなど、女性に対する眼差しは温かい。 筆頭はなんといっても、40代になるまで千倉家に仕え、故郷の鹿児島から吟味した人材を呼び寄せては千倉家に斡旋し、教育もしてきた、「初(はつ)」。 他には、美人だけど目に星が無い「鈴(すず)」、恋愛に翻弄される「銀(ぎん)」、女優の付き人になった驕慢な「百合(ゆり)」、電気パーマの刺激で癲癇(てんかん)になった「梅(うめ)」、夫と共に店を大きくした働き者の「定(さだ)」など。 千倉夫妻が親代わりとなって結婚の面倒を見た女中さんも多く、時代を描いている。 磊吉は谷崎自身がモデル?最晩年に発表されたパワフルでユーモラスな、女中さん列伝である。

Posted by ブクログ

2024/09/14
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

谷崎潤一郎の、文豪、磊吉の家で働く代々の、個性豊かな女中たちを描いた話。 癇癪までもが結婚で治るなど、女性の幸せは結婚で決まる的な、古い考え方満載だが、当時の捉え方、地域による文化や考え方の違いなどがよくわかる。 磊吉夫妻は、迎えた女中たちの結婚の仕度など面倒をみたり、後々まで彼女たちのことを気にかけたりしてくれる雇い主で、彼らのもとで働けるのは女中たちにとってはラッキーだったことと思う。

Posted by ブクログ