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短くて恐ろしいフィルの時代 河出文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 河出書房新社 |
発売年月日 | 2021/08/06 |
JAN | 9784309467368 |
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短くて恐ろしいフィルの時代
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短くて恐ろしいフィルの時代
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商品レビュー
3.9
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独裁者が誕生する様子や、同調圧力に流される集団心理などが、ブラックユーモアで語られる寓意に満ちたディストピア小説。 国民が、一度に一人しか住めない極小国と、その周囲を取り囲む大国の物語。ある日、大国の国境警備員が巡回中に、小国からの侵犯を発見。騒動を大国の論理を押し付けて治めた...
独裁者が誕生する様子や、同調圧力に流される集団心理などが、ブラックユーモアで語られる寓意に満ちたディストピア小説。 国民が、一度に一人しか住めない極小国と、その周囲を取り囲む大国の物語。ある日、大国の国境警備員が巡回中に、小国からの侵犯を発見。騒動を大国の論理を押し付けて治めたのは、たまたま近くのカフェにいた中年男のフィル。この男、脳がはずれて地面に転がるたびに熱狂的な演説を繰り返し、次第に民衆を魅了していきます。対して、この男が独善的な要求を小国に突き付けるたびに、小国は疲弊していき……という話。 脳がはずれると書くと、面喰らいますが、そもそも登場人物たちが荒唐無稽・奇妙奇天烈な容姿なため、決してグロテスクに感じることはありません。それより”脳みそ空っぽ”の人が、私的な感情のこじれから暴走し、隣国の生活基盤の破壊から虐殺にいたる過程や、国境を紐に例えて、自他を線引きする様は、風刺の効いた現代への警鐘ともとれました。ラストを読むと、まだまだ平和な世界は遠いことを示唆しているようで考えさせられました。 正誤(2刷) 単行本あとがき3行目: コロラド鉱業大学→コロラド鉱山大学
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翻訳でも伝わる著者の文章力。盲信的、狂信的に破壊の道へと突き進むフィルの凶暴さが、ある種のアイロニーを伴って面白おかしく表現される。 一番印象深いのは大統領のもうろくさ。人ごとではない。周囲の人間関係に当てはてめても、さらには自分ごとに鑑みてみても。 他人がいる限り受け入れら...
翻訳でも伝わる著者の文章力。盲信的、狂信的に破壊の道へと突き進むフィルの凶暴さが、ある種のアイロニーを伴って面白おかしく表現される。 一番印象深いのは大統領のもうろくさ。人ごとではない。周囲の人間関係に当てはてめても、さらには自分ごとに鑑みてみても。 他人がいる限り受け入れられない主義思想は生まれてしまう。そこには誤解や妄想が含まれようとも。相容れない対象に対する慈しみと寛容の心を。今一度噛み締めたい戒めですね。
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- ネタバレ
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NHK「理想的本箱」、「戦争が近づいた時に読みたい本」の回で初めて知り、今日ようやく読むことができた。 中編程度の長さで、文章も決して難しくなく、児童文学のような雰囲気もあるので、活字に慣れていない人でも読みやすいのではないだろうか。 登場人物たちは機械の部品や植物、触手などで出来ている不思議な生物たち。 しかしその発言内容や行動は、人間にとても近く、特にSNSを見ていると差別主義者やヘイターがよく口にするような言い分のオンパレード。 そして完全に「善人」と言える人物はいないし、完全に「悪人」と言える人物も存在しない。 見たこともない不思議な生物たちの滑稽とも言えるような争いの話なのだが、その行動はナチスをはじめあらゆる人間(もちろん日本人も)が繰り返し、戦争に突入してきた流れの縮図であり、創作内のことでありながら全く他人事とは思えない。 最後、突如現れた創造主によって彼らは解体され、作り直される。 その時創造主はフィルの体は使わず、「モンスター」と名付けて象徴とした。 組み直された本ホーナー国の人々は正体不明のフィルを恐れるけれども、その中にフィルを恐れず、むしろ美しいものと感じる人物が現れーーー話は終わる。 創造主は本来の性質は「善」だと言った。 しかしフィルの部品を取り除いても、結局フィルの火種を摘むことはできなかったのだ。 ナチズムにも、レイシズムにも完全な“終わり”はない。 「いつまで先の戦争の話をしているんだ」と戦争反対を訴える人々を冷笑する人々がいる。 ホーナー国のように、現実でも火種はいつどこに芽生え、再燃するかわからないのだ。 だからいつまでだって訴えなければいけないと改めて感じた。 戦争反対。 憲法改正反対。 第二、第三のフィルは“生まれる”のだ。それはもう防ぎ用がない。 だから民衆は常に目を光らせ、のさばらせないように注意しなければいけないのだ。
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