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海辺の金魚
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | ポプラ社 |
発売年月日 | 2021/06/09 |
JAN | 9784591170243 |
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商品レビュー
3.7
17件のお客様レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
児童養護施設で暮らす花は、夏を迎えて18歳になった。翌春には施設を出るきまりだが、将来のことや遠く離れた母親のことで葛藤を抱えている。 ――― (引用) ――― 家族とは、そんなに素晴らしいものだろうか。いつか読んだ本に、家族とは「自分から決して逃げない人」のことだと書いてあった。一度逃げられてしまった私たちは、この先その「家族」というものを、一体どう信じれば良いというのだろう。 ――― (引用おわり) ――― そんなある日、ぬいぐるみを抱えた女の子・晴海が施設にやってくる。複雑な事情を抱えながらも日々を懸命に歩む晴海の姿に、花はかつての自分を重ね合わせていることを知る。 ――― (引用) ――― 「花、いい子でね」 いつになったら、私はあなたのいい子になれますか。いい子になれば、あなたはその手で私を撫で、優しく抱きとめてくれますか。 「いい子にしても、帰れないじゃん」 わかっている。晴海の言った通り、どんなにいい子になったって、帰れる場所もなければ迎えてくれる人もいない。あの人の言う「いい子」とは、解き方のない呪いなのだ。 そうとわかっていながらも、私はかつての世界の全てを手放すことができなかった。手放したくても、できなかった。あの人のいい子をやめてしまえば、私は誰の何になればよいのかわからない。あの人のいい子であること以外に、私は私自身を見出すことができなかった。その虚しさを自覚しながらも、もはやどうすることもできない。 私は心の奥底で、名もない金魚の奇跡を信じていた。信じなければ、今にも自分もろとも海の底へ引きずり込まれてしまいそうで怖かった。 「ママ、」 私は思わずあの人を呼んだ。 「ママ、」 届かぬ声が虚しく波音にかき消され、それでも私は呼び続けた。 「ママ!」 ずっと呼びたかったあの人の名を、ずっと呼んで欲しかった私の名を、今日、ここですべて流してしまおう。この世界の丸さに乗って、いつか優しさとなって返ってくる日を信じて待とう。私はその日まで、どんな荒波が押し寄せても、恐ろしい強風が吹いても、「おかえり」と言えるようにこの世界で生きていよう。 私たちに起きた事実は変えられないけれど、真実は自分次第だと、いつかタカ兄が言っていた。事実をどう受け取るか、それを抱えてどう生きるか、答えは出なくてもその道のりが自分なりの真実になると。 ――― (引用おわり) ―――
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読んでいる間ずっと音のない空間にいるかのような感覚を受けた。 中卒で働く、と決めた(決めざるを得なかったであろう)あのクラスメイトはその後どんな日々を過ごして、何を思っていたんだろう と中学生の頃に気になったことがある。 それに近い人たちのおはなし。 中はもっと辛い経験をした人...
読んでいる間ずっと音のない空間にいるかのような感覚を受けた。 中卒で働く、と決めた(決めざるを得なかったであろう)あのクラスメイトはその後どんな日々を過ごして、何を思っていたんだろう と中学生の頃に気になったことがある。 それに近い人たちのおはなし。 中はもっと辛い経験をした人たちなんだけどね、なんとなくあの人と近いなと感じた。 私には親がいて、両親とも揃っていて、そのことを疑うこともなく当たり前と思って日々を重ねてきたわけだけれども、 親と暮らせなくなった人たちの心境が、なんとなく分かるのはなんでだろう。 リアルでそういう人に出会ったことが無いし、実際会ったらなんて声をかけていいか分からなくて戸惑うだろうけど、でもこうして文章にされるとなんか分かった気になっちゃうんだよなあ。なんでだろうな。 親がいても寂しさを感じることはあって、それのせいかもしれない。 本質のところでは全く同じ心境に至るなんてことは出来ないが、厳密に言えばそんなの誰だって当て嵌るだろう。 うまく言えないけど、読んでいる間の静謐な空気が、冬の雪の降る日のシンと冷えた音を飲み込んだ街中の空気にとてもよく似ていると感じた。 他の方の感想を読んで、言葉遣いが綺麗だと思った。この本に近い表現をされている人が多くて、それもこの本の魅力なのかな、なんて思うほどに。 そしてノベライズされたものなんですね。知らなかった。 だから表紙が写真なのかあ。 このお話が原作でもおかしくない、というか単体で見てたので軽く衝撃を受けた。
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小川糸さんの並びにあって間違えて借りた本。笑 小川紗良さんって全然知らなかったけど、俳優や監督もやっているとか。 意図していなかったのだけど、親と暮らせない子どもの話をまた読んでしまった。 主人公の花が、淡々と状況を受け入れ、でも割と前向きに家の人たちと関わって暮らしているから...
小川糸さんの並びにあって間違えて借りた本。笑 小川紗良さんって全然知らなかったけど、俳優や監督もやっているとか。 意図していなかったのだけど、親と暮らせない子どもの話をまた読んでしまった。 主人公の花が、淡々と状況を受け入れ、でも割と前向きに家の人たちと関わって暮らしているから、そんなに悲壮感は感じない。胸が痛くなるようなエピソードは、いくつも散りばめられているのだけど。 迷いつつも前向きに生きていけそうな花の未来に、希望を感じる終わり方。
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