- 書籍
- 文庫
百年泥
商品が入荷した店舗:0店
店頭で購入可能な商品の入荷情報となります
ご来店の際には売り切れの場合もございます
お客様宅への発送や電話でのお取り置き・お取り寄せは行っておりません
百年泥
¥495
在庫なし
商品レビュー
3.8
14件のお客様レビュー
この本に出てくる主人公と場所は違えど同じ職業をしている身として、彼女の日本語を教える教室での心労が手に取るようにわかるのだけど、この本の本筋はそこにはなく、インドという国とそこの考えに全く馴染みのない自分でも、そこにある宗教的というか土着的というか、そういう世界観の深さを垣間見る...
この本に出てくる主人公と場所は違えど同じ職業をしている身として、彼女の日本語を教える教室での心労が手に取るようにわかるのだけど、この本の本筋はそこにはなく、インドという国とそこの考えに全く馴染みのない自分でも、そこにある宗教的というか土着的というか、そういう世界観の深さを垣間見ることができる話だった。 百年泥から湧き上がってくる記憶とも過去ともつかない幻想的な物事の中で、主人公と主人公を悩ませる生徒の過去が一際色鮮やかに語られて、そこに何があるという訳もなく、ただ彼らが今どうして彼らであるのかがわかっていく話。橋を渡り始めてから渡り終わるまでに、主人公と学生がこの企業の一教室で出会ったことの不思議というものを体感させらる。 この本の中で一番好きだったフレーズは、『世界はただ受け、おしみなく返事をする』だった。砂浜を歩く主人公の母親が感じた安心、生きているという感触を、こよ一文からひしひしと感じた。
Posted by
インドで日本語教師をしている私が、百年に一度の大洪水に遭った。街は泥まみれ。災害から復興する物語かと思ったが違った。泥の中から出てくるはずもない思い出の品が出てきて、回想が始まる。 面白くて、仕事に遅刻しそうになった芥川賞受賞作。
Posted by
南インドのチェンマイで若きIT技術者たちに日本語を教えている「私」。 ある日、豪雨が続き百年に一度の洪水が町を襲い、もたらしたものは圧倒的な”泥”だった。 「私」は会社を目指して橋を渡り始めるが、百年の泥はありとあらゆるものを吞み込んでいた。ウイスキーボトル、人魚のミイラ、そして...
南インドのチェンマイで若きIT技術者たちに日本語を教えている「私」。 ある日、豪雨が続き百年に一度の洪水が町を襲い、もたらしたものは圧倒的な”泥”だった。 「私」は会社を目指して橋を渡り始めるが、百年の泥はありとあらゆるものを吞み込んでいた。ウイスキーボトル、人魚のミイラ、そして哀しみも。 新潮新人賞、芥川賞の二冠を獲得した文学小説。 百年に一度の大洪水であふれた泥の中から、登場人物たちの過去を振り返っていく作品です。 チェンマイという具体的な地名が出ており、主人公の「私」も現地IT企業の日本語講師という地に足のついたものであるにもかかわらず、現実と虚構、現在と過去の境が曖昧で、SFのようなファンタジーのような掴みどころのない雰囲気。 言葉選びもストーリー展開も独特な浮世離れした空気感で、読み進めるにつれ幻惑されたような、酩酊したようなふわふわした気分になります。 外国に行った事が無い日本人が、インドのミステリアスな印象だけを固めたような、過去に無くしてしまったものがきっとインドに行ったら見つかるのではと思わせてくれるような、不思議な異国情緒を感じさせるお話です。
Posted by