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愛の顛末 恋と死と文学と 文春文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 文藝春秋 |
発売年月日 | 2018/11/09 |
JAN | 9784167911812 |
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愛の顛末
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商品レビュー
4.5
6件のお客様レビュー
作品を読んだことのある人、作品を読んではいないが名前や代表作は知っている人の中、唯一知らなかったのが近松秋江。ちょっと前の日本の私小説作家というと葛西善蔵とか貧困を赤裸々に描く人が多い印象だったが、この人は妻や恋人に対し、ストーカー行為を繰り返し、それを小説として書いたというんだ...
作品を読んだことのある人、作品を読んではいないが名前や代表作は知っている人の中、唯一知らなかったのが近松秋江。ちょっと前の日本の私小説作家というと葛西善蔵とか貧困を赤裸々に描く人が多い印象だったが、この人は妻や恋人に対し、ストーカー行為を繰り返し、それを小説として書いたというんだからたまげた。 現代だったらちょっとあり得ない。女性のプライバシーや人権に全く配慮してないし。(この時代の男は大抵そうだっただろうけど。)愛というより、妄執。田山花袋なんかもそうだけど、気持ち悪い。しかし、男子たるもの、という考えが当たり前だった時代に、妻に逃げられて追いかけ回して愛想つかされてというのを書いて、「滑稽だが、ただ嘲笑して済ませることのできない切実さがある」(p42)というのだから読んでみたくなる。 全体的には、男たちは本当に勝手で、八木重吉なんか、(昔はそのピュアな詩が好きだったが)あきれた。家庭教師した少女に夢中になって、相手が困惑するほどの熱烈なラブレターを送り続け、学校もやめさせて結婚したのに、今度はキリスト教に夢中になって(夢中になると他のものは何も見えなくなる人であったようで)「つまよ、ひとりの児よ、このようにくれ、またあしたをむかへる これだけが いのちの あぢわひなのか」なんて、勝手極まりない。無理やり結婚したくせに! 吉野せいの夫、三野混沌もそう。猛烈にアタックして結婚したくせに、結婚したら自分は文学をするからって農作業も子育ても丸投げ。しかも、彼女には文才があったのに、そのことは歯牙にもかけない。封印。俺の文学は大事だが妻の才能はどうでもいい。混沌を亡くしてすでに70歳を過ぎてから、やっと書くことができたのが名作『洟をたらした神』。しかし、それで彼女の命も尽きた。もし彼女がもっと若いときから書いていたら。 ま、自分の作品は忘れられてるのに、妻の作品は今も読まれていることを知って、混沌は泉下で地団駄踏んでるだろうよ。 性愛を詠んで「情痴俳人」「娼婦俳人」と呼ばれた鈴木しづ子、恋も知らぬまま19で結婚させられ三人の子を産み、不貞の夫と別れて恋の歌った歌人中城ふみ子も「やすやすと堕ちる」女と言われる。 才能があり、当時の状況からしたらすごい度胸もあった彼女たちに対する(男)社会の扱いはひどいもので、胸が痛む。 作家や詩人、歌人、俳人たちの恋愛をテーマにした本書は、一昔前の才能ある女性の生きづらさが胸に刺さる。 寺田寅彦の妻たち、特に三人目の志んなんか(当時は悪妻と言われていた)、現代に生きていたら、のびのびとその能力を活かせたのではないかと思う。 いろいろ考えさせられる、興味の尽きない本だった。
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人が恋愛に費やすエネルギーは、やはり大きい。しかもそこに人間としての美しさも醜さも、ひっくるめて現れてくるから、ひとりの作家につき、20頁ほどの少ない分量で描かれていながら、その中で彼ら作家の魅力が最大限に引き出されているのだと思う。なぜなら未読の作家の作品を悉く読みたくなったも...
人が恋愛に費やすエネルギーは、やはり大きい。しかもそこに人間としての美しさも醜さも、ひっくるめて現れてくるから、ひとりの作家につき、20頁ほどの少ない分量で描かれていながら、その中で彼ら作家の魅力が最大限に引き出されているのだと思う。なぜなら未読の作家の作品を悉く読みたくなったもの。女性の強かさ。
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書かれたものにも、書かれなかったものにも、言葉にしなかったことにも、想いは詰まっているのだなあ、と思う。 中井英夫と八木重吉と、吉野せいに俄然興味が湧いた。
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