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餓死した英霊たち ちくま学芸文庫
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餓死した英霊たち ちくま学芸文庫

藤原彰(著者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 筑摩書房
発売年月日 2018/07/09
JAN 9784480098757

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商品レビュー

4.5

10件のお客様レビュー

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2025/08/10

とても興味深く読んだ。 戦争について詳しくなく、兵站(へいたん。戦闘部隊を支援するために、補給、輸送、管理を行う活動を行う部署)についてもはじめて聞いた程度だが、一次資料に基づいた淡々とした記述で趣旨が明確で、読んでよかった。 日本兵の死者のうち230万人のうち60%にあたる14...

とても興味深く読んだ。 戦争について詳しくなく、兵站(へいたん。戦闘部隊を支援するために、補給、輸送、管理を行う活動を行う部署)についてもはじめて聞いた程度だが、一次資料に基づいた淡々とした記述で趣旨が明確で、読んでよかった。 日本兵の死者のうち230万人のうち60%にあたる140万人の死因が戦病死であり、飢えて体力や抵抗力を失って伝染病にかかるなど広義の餓死であった。 その原因は補給を無視し、作戦を優先し、制空権・制海権を抑えられているにもかかわらずほぼ無課金状態の兵士を投入して火力に対して白兵戦で挑み続けるという精神主義、降伏を認めず捕虜になることを禁止して餓死か自決するしかない状況であったことなどが指摘される。筆者自身も中国で夜襲を試みて返り討ちに遭う経験をしている。本当に無駄死にした人達が多かったんだろうと思う。しかも、戦後記録を隠滅したために正確な被害者数はわからないという。 たぶん受験生のときにはこの愚かしさにリアリティを感じなかったが、大人になった今読むと恐ろしさがよくわかる気がする。

Posted by ブクログ

2024/10/22

 アジア太平洋戦争における軍人軍属の死者数は約230万人。そのうち140万人の死因が餓死と、栄養失調による戦病死、すなわち広義の餓死であったと著者は指摘する。(この数字についてはその後異論も出されているようだが、多くの戦病死者が発生していたことは間違いない。)  これらを踏まえ...

 アジア太平洋戦争における軍人軍属の死者数は約230万人。そのうち140万人の死因が餓死と、栄養失調による戦病死、すなわち広義の餓死であったと著者は指摘する。(この数字についてはその後異論も出されているようだが、多くの戦病死者が発生していたことは間違いない。)  これらを踏まえ、第二章は「何が大量餓死をもたらしたのか」との問いについて、補給無視の作戦計画、兵站軽視の作戦指導、作戦参謀の独善横暴といった事項が指摘される。こんな無謀な計画や作戦によって戦地に駆り出され、多くの兵士が無念の死を遂げたのかと思うと、何とも居たたまれない。  そして第三章では、こうした事態を引き起こした日本軍隊における根本的な原因の探求として、精神主義への過信、兵士の人権の軽視や無視、兵站部門の軽視、幹部教育の偏向、降伏の禁止と玉砕の強制といった問題点が明らかにされていく。  「陛下の赤子」と言われてはいたが、兵士は捨て駒のように使い捨てにされていたことが良く分かったし、「強気強気で行けば上手くいく、あとは精神の問題だ」といった観念に取り憑かれた作戦参謀の存在など、読んでいて堪らなくなった。

Posted by ブクログ

2021/10/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 日中戦争からアジア太平洋戦争における日本人の死者は、約320万人で、そのうち軍人は230万人と推定されています。但し、玉砕地域などは記録もなく、終戦間際に戦犯訴追を恐れて組織ぐるみの書類の大量破棄が行われた為、そもそも正確な数字を弾き出す方が困難な状況です。  そんな中にあって、研究者たちの地道な調査の結果、上記の数字が暫定的ではあるが公式に用いられています。  軍人の死者230万人のうち、戦闘中ではなく、餓死をはじめ栄養失調や医薬品不足からくる広義の餓死者がどの程度の割合を占めるのか。著者は60%強と推定しています。  この背景にあるのが「精神主義」です。これは合理主義の対義語として位置すると思います。  思うに、戦争とは一番合理的思想に基づいて実施すべきものです。何故なら、合理的な判断、例えば兵隊の数や、兵器の能力の差など、冷静に理解しなければ生死に直結します。合理的に判断して勝つ見込みがあるから戦闘に入ることができる訳です。これは医療でも同じです。  合理主義が排除され、精神主義が台頭していたのでまともな判断ができなかったのだと思います。  餓死に至ったプロセスはシンプルだと思います。戦闘に入って、勝つ見込みが無ければ、降伏か逃亡です。日本軍の場合、他国とは違い「降伏(捕虜)」は戦陣訓にある「生きて虜囚の辱めを受けるな」であり、禁止事項でした。また陸軍刑法の罰則規定でもありました(P254)。結果、投降はできない、逃げるしかないとなったのです(もちろん玉砕もありましたが、これは戦闘中の死となるのでしょう)。  加えて兵站の考え方が希薄で、現地調達を推奨していました。故に、逃亡は食糧もないまま山岳地帯に逃げ込むことになるので餓死と背中合わせになるのでした。  戦闘の勝敗は、しっかり戦略を練って準備してもやってみないとわからない訳ですが、作戦の形として勝つプランしか考えていないと思いました。いわゆる「プランA」しかないように感じてしまいました。結果、負けた時は「玉砕」か「逃亡≒餓死」、すなわち死しかない訳です。日本軍の作戦の枠組みが、勝ちか死かの二者択一しかなかった訳です。  戦争でお国ために死んでこいと言う思想教育がなされていましたが、上記の作戦の枠組みで捉え直すと、至って「合理的」です。  背景には先にあげた精神主義があり、人権感覚が希薄な点も挙げられます。これは戦後になっても生活の様々な場面で引き継がれました。過労死やサービス残業、クラブ活動での勝利至上主義等、戦後76年経っても解決途上の問題です。

Posted by ブクログ