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餓死した英霊たち ちくま学芸文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 筑摩書房 |
発売年月日 | 2018/07/09 |
JAN | 9784480098757 |
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餓死した英霊たち
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餓死した英霊たち
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商品レビュー
4.4
9件のお客様レビュー
アジア太平洋戦争における軍人軍属の死者数は約230万人。そのうち140万人の死因が餓死と、栄養失調による戦病死、すなわち広義の餓死であったと著者は指摘する。(この数字についてはその後異論も出されているようだが、多くの戦病死者が発生していたことは間違いない。) これらを踏まえ...
アジア太平洋戦争における軍人軍属の死者数は約230万人。そのうち140万人の死因が餓死と、栄養失調による戦病死、すなわち広義の餓死であったと著者は指摘する。(この数字についてはその後異論も出されているようだが、多くの戦病死者が発生していたことは間違いない。) これらを踏まえ、第二章は「何が大量餓死をもたらしたのか」との問いについて、補給無視の作戦計画、兵站軽視の作戦指導、作戦参謀の独善横暴といった事項が指摘される。こんな無謀な計画や作戦によって戦地に駆り出され、多くの兵士が無念の死を遂げたのかと思うと、何とも居たたまれない。 そして第三章では、こうした事態を引き起こした日本軍隊における根本的な原因の探求として、精神主義への過信、兵士の人権の軽視や無視、兵站部門の軽視、幹部教育の偏向、降伏の禁止と玉砕の強制といった問題点が明らかにされていく。 「陛下の赤子」と言われてはいたが、兵士は捨て駒のように使い捨てにされていたことが良く分かったし、「強気強気で行けば上手くいく、あとは精神の問題だ」といった観念に取り憑かれた作戦参謀の存在など、読んでいて堪らなくなった。
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日中戦争からアジア太平洋戦争における日本人の死者は、約320万人で、そのうち軍人は230万人と推定されています。但し、玉砕地域などは記録もなく、終戦間際に戦犯訴追を恐れて組織ぐるみの書類の大量破棄が行われた為、そもそも正確な数字を弾き出す方が困難な状況です。 そんな中にあって、研究者たちの地道な調査の結果、上記の数字が暫定的ではあるが公式に用いられています。 軍人の死者230万人のうち、戦闘中ではなく、餓死をはじめ栄養失調や医薬品不足からくる広義の餓死者がどの程度の割合を占めるのか。著者は60%強と推定しています。 この背景にあるのが「精神主義」です。これは合理主義の対義語として位置すると思います。 思うに、戦争とは一番合理的思想に基づいて実施すべきものです。何故なら、合理的な判断、例えば兵隊の数や、兵器の能力の差など、冷静に理解しなければ生死に直結します。合理的に判断して勝つ見込みがあるから戦闘に入ることができる訳です。これは医療でも同じです。 合理主義が排除され、精神主義が台頭していたのでまともな判断ができなかったのだと思います。 餓死に至ったプロセスはシンプルだと思います。戦闘に入って、勝つ見込みが無ければ、降伏か逃亡です。日本軍の場合、他国とは違い「降伏(捕虜)」は戦陣訓にある「生きて虜囚の辱めを受けるな」であり、禁止事項でした。また陸軍刑法の罰則規定でもありました(P254)。結果、投降はできない、逃げるしかないとなったのです(もちろん玉砕もありましたが、これは戦闘中の死となるのでしょう)。 加えて兵站の考え方が希薄で、現地調達を推奨していました。故に、逃亡は食糧もないまま山岳地帯に逃げ込むことになるので餓死と背中合わせになるのでした。 戦闘の勝敗は、しっかり戦略を練って準備してもやってみないとわからない訳ですが、作戦の形として勝つプランしか考えていないと思いました。いわゆる「プランA」しかないように感じてしまいました。結果、負けた時は「玉砕」か「逃亡≒餓死」、すなわち死しかない訳です。日本軍の作戦の枠組みが、勝ちか死かの二者択一しかなかった訳です。 戦争でお国ために死んでこいと言う思想教育がなされていましたが、上記の作戦の枠組みで捉え直すと、至って「合理的」です。 背景には先にあげた精神主義があり、人権感覚が希薄な点も挙げられます。これは戦後になっても生活の様々な場面で引き継がれました。過労死やサービス残業、クラブ活動での勝利至上主義等、戦後76年経っても解決途上の問題です。
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なかなか強烈なタイトルだが、内容はまさにこの通りである。 アジア太平洋戦争において、戦没した日本兵の多くが、「名誉の戦死」ではなく、餓死や栄養失調による病死で命を落としていたという。 大量の兵を投入した挙句に餓島と呼ばれたガダルカナル島の戦い、無謀な陸路進攻を強行したポートモレス...
なかなか強烈なタイトルだが、内容はまさにこの通りである。 アジア太平洋戦争において、戦没した日本兵の多くが、「名誉の戦死」ではなく、餓死や栄養失調による病死で命を落としていたという。 大量の兵を投入した挙句に餓島と呼ばれたガダルカナル島の戦い、無謀な陸路進攻を強行したポートモレスビー攻略戦、20世紀の鵯越を目したインパール作戦。太平洋の孤島群の置き去り部隊。フィリピン戦。中国戦線。 多くの犠牲を出したこれらの侵攻は、勝算が薄いにも関わらず敢行され、奇跡を起こすこともなく失敗した。そして多くの兵は、戦闘そのものというよりも餓えや病に斃れた。 いったい何が起きていたのか。なぜ防げなかったのか。 本書では多くの一次資料にあたりながら、その背景を探る。 第一章は、個々の戦地を取り上げながら、餓死の実態を追う。 第二章では大量餓死を招いた背景を、第三章ではこうした事態を招いた日本軍隊の特質を歴史に絡めて解説していく。 1つの重大な要因として、兵站の軽視がある。「腹が減っては戦はできぬ」とは言うが、まったくもってこの点が考慮されていなかったのだ。兵をどんどんと送り込むが、食料は現地調達せよ、という始末。中には作物の種子を持たされた部隊もあるが、気候条件も違う地で、まして戦闘も行いながら、呑気に栽培などしていられるはずもない。 民間から徴発された馬も多く戦地に運ばれたが、熱帯雨林やサンゴ礁の島では馬は適応できぬまま死んでいく。人間の食糧も十分でない戦地で馬の飼料は真っ先に削られ、馬が食料になってしまう場合さえあった。 武器も十分ではなく、米兵の圧倒的な火力に対して、歩兵の持つ軽火器や銃剣で立ち向かうしかなかった。この背景には武器よりも兵を重視する方針がある。武器に金を掛けるよりも歩兵を増やし、武器はむしろ兵の「補助」的なものと考えるのだ。 制空権も制海権も奪われた状態では、兵を送り込んだとしても大量の兵器や食料は送れない。 そして行きつくところは「精神論」になる。 物資がない。武器もない。兵は送り込まれる。 外から見ればうまくいくはずはないのだが、「大義」の元では、たとえおかしいと思っても反論すら許されない。 かくして多くの兵が餓えに斃れた。 著者自身、陸軍士官学校卒業後、中国各地を転戦したという。復員後、史学の研究者となり、日本近現代史を専攻する。 筆は終始、歯切れよく、悲惨な現実を淡々と冷静に分析していく。 個々の論については反論もあろうが、ともかくも各章に付された膨大な一次資料の数に圧倒される。 客観的に歴史を見つめようとする視線の背後に、著者の痛みと憤りが見え隠れする。
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