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「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済 光文社新書829
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 光文社 |
発売年月日 | 2016/07/14 |
JAN | 9784334039325 |
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「その日暮らし」の人類学
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商品レビュー
3.7
53件のお客様レビュー
著者はタンザニアのムワンザという都市で零細商人のビジネス手法を研究しており、本書ではそこから導かれた「その日暮らし(living for today)」の生活に新たな視点を提供する本となっています。「その日暮らし」というと多くの日本人はネガティブな生活を連想し、国の社会保障が存在...
著者はタンザニアのムワンザという都市で零細商人のビジネス手法を研究しており、本書ではそこから導かれた「その日暮らし(living for today)」の生活に新たな視点を提供する本となっています。「その日暮らし」というと多くの日本人はネガティブな生活を連想し、国の社会保障が存在していないような発展途上国に多く見られる「やむを得ない」ライフスタイルと考えがちではないでしょうか。 しかし本書で書かれているように、それは大変ではあるが、むしろ先進国の人々が持っていない心のゆとり、今日を楽しむ気持などが存在するライフスタイルでもあるということです。近代資本主義は勤勉、倹約を是とし、今日を犠牲に将来のために働く、あるいは学ぶことを社会規範とします。しかしそれはまさに「いまここ」を犠牲にしている、いいかえると時計、時間の奴隷になっているとも言えます。 本書ではタンザニア商人の「試しにやってみる」マインドセットや、「誰も信頼しないことによる、誰にでも開かれた信頼」、信頼を構築してから商売がはじまるのではなく、商売がうまくいった結果として信頼が生じる、といった現実について解説されていて、とても興味深く読みました。日本や欧米の経済システムこそが唯一無二(あるいは先進的)だというのは完全な間違いで、世界には多様な生活様式がある、というのを認識できました。
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貯金とか退職金とか社会保障とか、本邦の現代人なら将来を見越した生き方をしないと漫然と不安で、未来なんか無いみたいに短期的視野で暮らす生き方なんて想像つかないし、安定してなくてなんかかわいそう。 と、見下している読者に新たな世界を教えてくれる面白い本でした。 作者は想定してないと...
貯金とか退職金とか社会保障とか、本邦の現代人なら将来を見越した生き方をしないと漫然と不安で、未来なんか無いみたいに短期的視野で暮らす生き方なんて想像つかないし、安定してなくてなんかかわいそう。 と、見下している読者に新たな世界を教えてくれる面白い本でした。 作者は想定してないと思いますが、その日暮らしの類型によく似た存在を最近読んだ本で見ていました。 安定した職がない、行き当たりばったりで仕事する、貯金もしない、それなのに客人にパッと気前よく振る舞ってしまい知り合いにたかりに行く、人間関係で金を回してしのぐ。 それはヤクザと言います。 (ただし、ヤクザは作中の類型と大きく異なる部分、道義的な無法でなくガチの違法行為を生業としがちなので、完全に重なりはしません。しかし、ヤクザと狩猟民族の思考の類似性を見つけられたのは興味深かったです) たくさん引用のある豊かな本でしたので、 引用元も探して読めたら読みたいなと思います。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
同著者の『チョンキンマンションのボスは知っている』が以前から気になっている中で先に新書を読んでみた。日本という枠組みで生きていると絶対に気づくことができない視座の連続。これぞ読書の醍醐味という感じで興味深かった。我々の当たり前が当たり前ではない世界から学ぶことがたくさんあるなぁと感じた。 文化人類学者である著者がフィールドワークを含め研究してきたタンザニアの商売の状況を中心に「その日暮らし」=Living for todayをキーワードにして様々な論点を解説してくれている。具体的な仕事の中身もさることながら、仕事をする上での価値観や仕事の在り方が現状の資本主義社会と大きく異なり、そこがもっとも興味深い。たとえば時間の感覚。私たちは来たるべき未来に向けて備えるために現在を犠牲にすること(ローン、貯金など)が往々にしてあるが、彼らは1日をどう生きていくかに焦点をおく。つまり未来のことはほとんど考えないし、不安定であることを不安に思わず、場当たり的な対応を繰り返す。あらかじめ計画し生産性や効率性を追い求める社会に生きているので違和感しかないのだけども、社会全体が暗黙のうちにコンセンサスが取れているのであれば、弾力性のある社会が形成されることを知れた。と同時に社会が硬直していることが日本の今の息苦しさの要因だとも感じた。もっと思いつきとかノリでやれることを増やしていきたい。(隣の芝生が青く見えているだけかもしれないが…) また近年話題の負債論についてもタンザニアの事例から、負債を負債として取り扱わずに誰もがお互いに「借り」があると感じながら支え合う話に納得した。日本で金銭の貸し借りについて、タンザニアほどラディカルな考え方を持つことは難しいと思う一方、電車や公園などの公共空間ではお互いに「借り」があるという認識を持てれば少しは生きやすくなるのでは?と思う。信頼の概念は従来の資本主義社会の中でも変えていけるのではないかという希望を持ちたい。この言葉とかかっけぇっす。 *「俺たちが困難なときに頼りにするのは、仲間の人間性( utu)だ。なぜなら、困ったときに『貸してくれ』と頼ることができる友とは、同じく困ったときに頼ることができる仲間がたくさんいる人だ。たくさんの仲間に助けてもらえる人間がいい友であることは、昔から変わらぬ事実だ」* コピー商品を中国から輸入してアフリカで販売するというビジネスの流れについて細かく解説されており、その話題の中心にあるのが香港にあるチョンキンマンション。その有象無象っぷりが未知のこと過ぎてめちゃくちゃオモシロかった。なので『チョンキンマンションのボスは知っている』も早々に読みたい。
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