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色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 文春文庫
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商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 文藝春秋 |
| 発売年月日 | 2015/12/01 |
| JAN | 9784167905033 |

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色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
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商品レビュー
3.8
586件のお客様レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
初めて読んだのは高校三年の春だった。そのころとは私自身の考え方が随分変わったし、視野も変わっている。約二年越しに読んで思ったのは多崎つくるの感情をより身近なものに感じたし、同時にクロの犠牲にも、どこか孤立無援の静けさを感じた。色彩を持たない多崎つくるが人生で最も大切にしていた四人の友人たち。その四人は彼の望まない形で離れていき、そのうち三人と十六年の月日を隔てて再会する。その再会は、私にはどこか儀式的で、荘厳ささえ感じた。自分を切り離したかつての友人と、再会することができるだろうか。再会した三人は、それぞれ隔てていた年の分だけ変わっていた。シロを起点とした亀裂はその五人グループを決定的に破壊したが、各々にもその亀裂の影響はあった。多崎つくるは自分のことを色彩のないどこか空虚な冴えない人間であると認識しているが、私にはとてもそうとは思えない。彼の周りにはたくさんの色があったが、彼はその色を受け入れるパレットのように、彼ら彼女と触れながらも自分の譲れないことは譲らなかった。互いに影響されながらもその安寧を保つ土台の役割をしていた。 つくるが学生時代に出会った灰田という青年とシロ。二人は他の三人と異なりもう二度と会うことはできない(少なくともシロは絶対)二人とつくるは、やっぱり別離しなければならない運命にあったのだと思う。特に、どんな色にも影響を受けてしまう「白」は、彼女が生きた世界は残酷で無慈悲だった。灰田とつくるが再会してほしいと願うものの、それはやっぱり叶わないのだと思う。 クロの犠牲。短い少女時代をシロのために犠牲にした。彼女は誰よりも早く大人にならなければならなかった。何色にも染まりづらい「黒」。彼女のタフな性格とユーモア。その下で守られるのはきっと心地よくて安心なのだろう。だけどクロ自身の傷には誰も気づいてはくれない。彼女はもう名古屋はおろか日本にすら戻れない、戻ることはないと決意を固めている。フィンランドでの彼女の生活が、長い時間をかけて傷を癒してくれることを願う。これは私自身の願い。
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不協和音が小さい音でずっと鳴っているような薄い不快感がある。ミステリアスな要素が落ちきらないところがある。ダークな音調、闇が深いのに対する光の照射が小さく、彩度が低い。全体を通して強い諦観がある。彼らは色を名前に持ちながら、36歳というおそらく人生においてもっとも豊かな、あるいは...
不協和音が小さい音でずっと鳴っているような薄い不快感がある。ミステリアスな要素が落ちきらないところがある。ダークな音調、闇が深いのに対する光の照射が小さく、彩度が低い。全体を通して強い諦観がある。彼らは色を名前に持ちながら、36歳というおそらく人生においてもっとも豊かな、あるいは豊かに差し掛かる年齢にありながら、すっかりその色を失いほとんど枯れ切っていた。資本主義社会に疲弊し諦めていた。沙羅も私も少しうんざりしていた。面白そうな人たちは物語から早々にいなくなる。他作品に比べカタルシスが少ない。 とモヤモヤしていたが、巡礼の年を聞いてすっきりと腹落ちした。なるほど、先にこの曲があるのなら、確かにこの物語は春樹にしか書けないな。すごいな。
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自分が気にしている事項あるいはその優先順位が、自分の関係している他の人と異なる、このことについて、何を気にして何を気にしないか? あるいはその結果、その各人が取ったあるいは発生した行動に対して、どのように評価したり感じたりするのか。そして、これらに対し、人はどこまで責任をとる必要...
自分が気にしている事項あるいはその優先順位が、自分の関係している他の人と異なる、このことについて、何を気にして何を気にしないか? あるいはその結果、その各人が取ったあるいは発生した行動に対して、どのように評価したり感じたりするのか。そして、これらに対し、人はどこまで責任をとる必要があるのだろうか。 つくるがフィンランドに飛び判明した事項からそんなことを考えた。そして自分でコントロールできない事柄について、どこまで気にするべきであるか? 「色彩を持つ、持たない」ことについても同様。名前という表層の世界でも、実際の活動に対する評価としての「色彩」についても、観念的な世界では極めて主観的である。 苦しんできた、「つくる」とそれを解いていく「沙羅」との関係は一見好ましい感じ、関係であるように見えて、それなりに複雑な関係であり、読者はやはり著者に翻弄されてしまう。 もう一つ理解が難しいのが灰田の存在である。苦しみを乗り越えるステップとして中間点が必要なのか、複雑な「彩り」を加えるためにもうひとつ方向が必要であるのか。「巡礼の年」を登場させるために必要なくだりなのか。その父のエピソードと共に、不思議な位置付け。安保闘争から距離を置くのと、山奥の温泉に逗留してバイトする原体験はどこにあるのか。 本作は村上春樹作品の中でも展開が多彩なほうであり、擬人化した動物らしきものは6本指エピソードだけという、ストレートな小説構成である。これはこれで村上春樹の作品!こんな大それた感想を記してしまうのもまた本作品の複雑さからくる影響のひとつであるのかなーと。
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