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善の根拠 講談社現代新書

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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 講談社 |
発売年月日 | 2014/12/17 |
JAN | 9784062882934 |
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善の根拠
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商品レビュー
3.7
7件のお客様レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
善の定義としては、一般には大きく2つに分かれる様に思う。一つはある絶対的な、ないしアプリオリな規範があり、それに近づくほど善、それから離れるないし規範が欠乏するほど悪、とするもの。もう一つは2つの両極端の間を善、とするもの。 前者は一神教や独裁がそれに当たり、後者はアリストテレスの倫理体系や古代中国の道教、中庸で説かれる思想等が近いか。いずれも、自分以外の何処かに善の参照点を置き、それを前提にしているように思われる。 この本は、どちらの立場でも解釈出来ない論理を掲げているように思われる。著者の他の書に見えている思想と根本は同一ながら、かなりラディカルな思想ではないかと思う。この人の本が好きなので、らしいとも言えるが。 著者は、そもそも外部的な論理や倫理に善の根拠を求めていない。先の後者の倫理体系ですら、社会や他人との関係の中で様々に変わる中間点を模索する事がキーだと思うが、この本では、善とは自己を引き受け、生きる事を選択する事と解釈している。 この部分だけなら、汎用的な規範や他者の決めたルールは必要ない。ただ、著者の言う自己とは他者からの働きかけの集大成として形成されるものであって、自己それ自体は自然発生的には存在し得ない。自分なりに理解すれば、自我の境界線の外側にある他者が先に決まり、その線の内側を仮に自己とするしかない、と読める。そこで、自己を引き受ける事が善であるなら、その否定、つまり他者からの働きかけという構造の拒否や他者を顧みない自己の認識が悪、という事になる。 それ自体では独立して存在し得ず、他者によってしか作られない自己をあえて引き受ける事から、善と呼ぶべき何かしらが生まれ得る(必ず生まれるわけではない)。だから自己の引き受けの放棄はすべからく悪だし、自己の必要条件である他者が自己を引き受ける事の妨害、すなわち殺人や障害は悪、となるのだろう。 たしか、著者の「老師と少年」にあったと思うが、生きる事それ自体が良いことでも、生きれば必ず良いことが生まれるわけでもない。ただ、全ての良い事は生きる事からしか生まれ得ない。生きられた生が、良きことを生み出すことがある、というだけでしかない。そう言う意味では本書で述べられているのは善そのものでなく、前提条件という意味でのまさに善の根拠、なのかも知れない。 禅僧の修行が、必ずしも悟りに至れるという確証がある訳でなく(涅槃が定義出来ない以上、やむを得ない)、ましてや確定したスキームがある訳でもない中でひたすら帰依を繰り返していくこと、それ自体が尊く善きことであるとするなら、これはある面において人生そのものでは無いか。 自分としては、これを信じれば幸せ、あれをやれば人生安泰、という考えよりはよほどしっくりくるし、ある意味では自分の人生を自分で作っていくしかない、という点では安心できる考え方だった。
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『人間においてのみ、善悪が問題になるのは、この「自己」が「他者」に由来するという矛盾と困難があるからだ。すなわち、そういう存在の仕方を「自己」がしているからなのだ。この矛盾を矛盾として、困難を困難として認識できるということ(すなわち、それが「ある」こと)は、「自己」と「他者」の関...
『人間においてのみ、善悪が問題になるのは、この「自己」が「他者」に由来するという矛盾と困難があるからだ。すなわち、そういう存在の仕方を「自己」がしているからなのだ。この矛盾を矛盾として、困難を困難として認識できるということ(すなわち、それが「ある」こと)は、「自己」と「他者」の関係性それ自体を認識できるということである。(略)「自己」という存在が「他者から課された」という構造によって無根拠に開始されてしまうということである。善悪はこの構造に対する態度のとり方の問題なのだ』 あと、3回はこの本を読まないと!
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2冊ほど読んだ南師の本が面白かったので読んでみた。 善悪というのが一体どういう構造で起こるのかというのを実験的に解説されているけれど、すごい。 冒頭の序とⅠがすごい。 その後、戒律(十重禁戒)を例にして解説をされていくのだが、自分はわが身に引き当てたことをいろいろ想像して...
2冊ほど読んだ南師の本が面白かったので読んでみた。 善悪というのが一体どういう構造で起こるのかというのを実験的に解説されているけれど、すごい。 冒頭の序とⅠがすごい。 その後、戒律(十重禁戒)を例にして解説をされていくのだが、自分はわが身に引き当てたことをいろいろ想像してしまって重い。さーっと読める人もいるかもしれないが、自分の生活の現状と合わせて見たら考えさせられる。 そこが終わって後半が対談(っていうか相手誰?)になるのだけど、これがさらに面白い。前半での解説の意味が生きて届いてくる感じ。善悪の根拠について死刑制度にまで発展する。不貪淫についおおおそこにくるのかというところ。面白い。自殺についてのところもこういう整理された文章をみると自分も考えやすいなと思った。 あとがきでこの不可解な構成の本の成立について明かされている。まさに本という体裁にされるための苦心がうかがわれた。 自分はこの本を読んで、「自灯明法灯明」について再考させられた。自己がどうして自己たり得ているのか。自分はだれかに「課せられている」。ひとつひとつ自分に当てはめて考える。自分はひとりで自分でいられないのだなとつくづく思い、また縁起によってなりたついまこのひとときも変わりゆくものなのだと思ってこれを書いている。 自分が南師の著作が好きなのは、本質のところをきちんとおっしゃっているところ。温かく優しい世界でない仏教をダイレクトに伝えている。背筋が伸びる。禅やってないけど。
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