商品レビュー
3.8
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キシュ自身の少年時代の思い出が元になっていて、ほとんどの舞台が田舎。植物や動物の描写が細かく、色や匂いを生々しく感じられるほど。庭や野原に咲き乱れている花。様々な果樹。森の中の木々、生い茂る草、きのこの群れ。農家にとって身近な存在である牛、馬、鶏。帰って来なかった父、辛抱強く働く...
キシュ自身の少年時代の思い出が元になっていて、ほとんどの舞台が田舎。植物や動物の描写が細かく、色や匂いを生々しく感じられるほど。庭や野原に咲き乱れている花。様々な果樹。森の中の木々、生い茂る草、きのこの群れ。農家にとって身近な存在である牛、馬、鶏。帰って来なかった父、辛抱強く働く母、優しい姉。そして、行動をともにして心を通わせた飼犬。 子どもの頃の思い出なので、懐かしく甘い思い出もあるけれど、それが常に死と隣りあわせになっているのが、キシュらしいところ。手紙とか証明書とか手帳とか何かしら文書が絡んできて、それが不穏な空気を醸し出していくのに効果的な役割を果たしているのも、特徴だと思う。 飼っていた犬との別れには胸が締め付けられる。犬好きの人なら、読んでいられなくなるのではないかな。飼われている動物って、飼い主の運命に左右されるのを避けられないから、余計につらい。
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悲しくて美しいと思った。美しさがわからない人が増えたのは、悲しみがわからなくなったからかもしれない。美しさは必ず悲しさと一致しているかはわからないけど、関係があると思う。
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ダニロ・キシュを日本語で読む……なんと甘美な体験だろう(もちろん山崎佳代子の訳業がなければ成り立たなかったことだ)。激動の時代を生きたこの作家の書いたものを、わざわざ政治性を切り離して読むことは端的に無意味かつ無礼な振る舞いというものだ。でも、それを踏まえてもなおキシュのこの繊細...
ダニロ・キシュを日本語で読む……なんと甘美な体験だろう(もちろん山崎佳代子の訳業がなければ成り立たなかったことだ)。激動の時代を生きたこの作家の書いたものを、わざわざ政治性を切り離して読むことは端的に無意味かつ無礼な振る舞いというものだ。でも、それを踏まえてもなおキシュのこの繊細さは「大文字の言葉」「イデオロギー」が塗りつぶしてしまうものをこそすくい取っていると評価したい。子どもはその幼心に、大人たちやこの世界の愚かしさと崇高さを見抜く目をすでに持ち合わせている。そんな唯物論的な目線と詩心が幸福に融合する
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