蒲生邸事件(前編) 講談社青い鳥文庫

宮部みゆき【作】, 黒星紅白【絵】

• 販売会社／発売会社: 講談社
• 発売年月日: 2013/07/13
• JAN: 9784062853712

商品レビュー

2024/12/03

おれは帰らないよ。たとえ今帰れるとしても、現代には帰らないよ。（p.272）／ホテル火事時をかけるおっさんに救われ着いたあの蒲生邸／主人公いまいち好きになられへん素直やないし身勝手でもある／平田はんホンマにタイムトラベラー？　そしてここでの目的は何／大将は史実の通り自決するホンマにそうかその影響は／この事件吹雪の山荘ではないがクーデターにより孤立している／／読もうとは思っていたし青い鳥絵師が黒星紅白さんで／なかなかに分厚い本ではあるけれど読みやすいゆえ一日ですむ。

たとえば、ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんの主人公たちもひねくれてたり身勝手やったりすることがわりと多いんやけどなぜか好感抱けるんやなあ。どこがちゃうんやろう…と、ちょっと考えてみて、まずどこか軽いゆうのがあるかな。あと、他者に対する悪意みたいなもんが感じられんのと、身勝手ゆうよりも、それは負けへんぞという不屈さのあらわれかな。あと、ひがみみたいなものもなくて陽気な感じすることが多いからかもしれへん？

■蒲生邸についての簡単な単語集

【尾崎孝史】主人公。受験生。一浪。ホテルが火事になりタイムトラベラーに救われたが行った先は1936年だった。
【小野松吉】蒲生邸跡地を買い取り平河町一番ホテルを建てた。
【葛城】蒲生家御用達の医師。
【蒲生貴之】お坊ちゃま。青年。
【蒲生珠子】お嬢様。若い娘。
【蒲生憲之／がもう・のりゆき】陸軍大将だった人物。蒲生邸の主。二・二六事件の起こったときに自決したがその遺書に書かれていた内容は日本のその後を予言していた。
【蒲生嘉隆／よしたか】憲之の弟。石鹸会社の社長さんらしい。
【ちゑ】蒲生邸の使用人。六十歳近い。
【時をかけるおっさん】→平田
【二・二六事件】1936年2月26日に起こった軍事クーデター。蒲生憲之が自決した日でもある。
【平河町一番ホテル】尾崎孝史が受験のため宿泊しているホテル。旧蒲生邸を小野松吉が買い取り創立した。
【平田次郎】時をかけるおっさん。一族の一世代に一人現れる能力なんだとか。本人に言わせると「病気」。1936年の日本では「平田」と名乗っている。本名は不明。今度蒲生邸で働くことになっているようだ。《わたしには、いつどんなときでも、自分がここにいる――という現実感がないんだ。》前編p.99。その周囲では光がかなり減衰している。
【ふき】向田ふき。蒲生邸の使用人。尾崎孝史が1936年に行ったとき世話をしてくれた。孝史はきれいな人だと思った。
【鞠恵】憲之の妻？
【向田ふき】→ふき

2018/05/28

二・二六事件の日にタイムスリップしてしまった謎の中年と主人公。蒲生憲之は誰が殺したのか？の推理小説としての面と、タイムトラベラーの苦悩、そして二・二六事件以降、戦争へと向かっていく日本という国について知ることができる。
どの側面も面白い上に、絵がとても可愛い。
黒星紅白のイラストと、宮部みゆきの文章を同時に楽しめるなんて最高だ。
ただ一つ、「小学校高学年以上向け」だそうだが、小学校高学年にはちょっと難しいのでは…？

2015/06/25

黒星紅白さんの画集で興味を持って、あえて青い鳥文庫で購入。十数年振りの青い鳥文庫でした。まさか成人してからもお世話になるとは……（笑）

小学生向けに一部改稿されているようですが、特に違和感なく読めました。（あえて挙げるなら、振り仮名の多さにちょっと読みにくさを感じる程度です。）
小学校高学年でこんな難しいテーマの小説を読むのかぁ……と思わず感心してしまいました。