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昨夜のカレー、明日のパン
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商品詳細
内容紹介 | 7年前に25歳で死んでしまった一樹。遺された嫁のテツコと一緒に暮らす一樹の父のギフが周囲の人物と関わりながらゆるゆると一樹の死を受け入れていく感動作。 |
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販売会社/発売会社 | 河出書房新社 |
発売年月日 | 2013/04/20 |
JAN | 9784309021768 |
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昨夜のカレー、明日のパン
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※このレビューにはネタバレを含みます
今月の22日に、私たちの初めての小説「昨夜のカレー、明日のパン」が河出書房出版から出る予定だが、その中の登場人物は次に進めない人たちばかりだ。人と別れるのに何年もかかってしまうような、ちゃんと社会人として暮らしているのに、世の中の時間の流れに乗り切れない部分をひっそりと抱えている。そんな人たちの話である(木皿食堂ひとりメシ) 手放すってことは、裏切ることじゃないよ。生きる方を選ぶってことだよ。 重いの背負わないと生きてる甲斐っていうの、そういうの味わえないんだよね。 【 ぴったりのコトバを探そうとしたが、そんなものが、この世にあるとは到底思えなかった。 ・・・・・・そうか、「助けて」というコトバが、今の気持ちに一番近いんだと思った。 そもそも、カズちゃんの病状は、この病院のどのぐらいのランクに位置しているのだろう。そんなことを考えていると、病院には治る人と治らない人の二種類しかいない、ということに気づいた。死に向かっている人と、生に向かっている人の間は、非情にもくっきりと線引きされているのだ。 「死んだら星になって言うでしょ? あれ、ボク、信じられないんですよね」 「でも、本当にそうだったらいいのにね。星になってみていてくれたら、それだけで、救われる部分はあるよね。」 「根拠はないです。でも、そういうふうに二人で信じるというのは、どうでしょうか?」 「オレ、くたくたになるまで生きるわ」 タカラは今、私はファスナーの先端だと思った。しっかりと閉じられているこの道は、私が明けてくれるのを待っている。そう思ったら、なんだか嬉しくて、気がつくと心の底から笑っていた。 みんな、新しいことを覚えるのに一生懸命だった。こうしたら見やすいのではないか、こうやれば早くできるのではないか、この方がみんなが気持ちよく仕事ができるのではないか、というささやかなOLの技術は、先輩から後輩へと細かく伝授され続けていたが、それをいきなり誰かが、ぶった切ってしまったような感じだった。 先輩も後輩もなく、ただただ新しいことを覚えていくだけの職場に、もう夕子は面白さを見いだせなかった。 街では、商品の種類がどんどん増えていってる気がする。・・・ みんな選ぶという楽しさに夢中になっているようだった。夕子はそのことにもなじめなかった。デパートいくたびに、欲しいものが増えていく。そのことが、とても不安にさせる。何かを買っても、次に行くとまた新しいものがあって、心がざわざわした。 ギフは、何もかも白状して、気分が楽になったのか明るい声だった。 「一樹が生きていてくれたら、私も気兼ねなく年をとることができたのかなぁ」 とギフは、銀杏の木をさすった。 一樹を入れた三人の生活が、ここにはあったんだよなぁ、と岩井は思い、それはたやすくイメージできた。 そして、一樹の代わりを自分がやるというのは、どう考えても違うような気がした。 人間関係というのは、方程式のように、どんな数字を代入しても成り立つ、というようなものではない。 テツコが言っていた意味は、自分の部屋に戻ってしばらくすると、岩井にもわかってきた。ここはただ眠ったり食べたりする場所だということが、いやおうなく思い知らされる。仕事をすることをベースにした、そのために合理的に作られた空間なのだと、岩井は思った。そうなのだ、ここには暮らしというものが一切ないのだ。それをこれから自分一人でつくらねばならないのだろうか。だとしたら、それは気が遠くなるような作業だと思えた。ギフの家には暮らしがあった。それはおそらく、そこに住んできた人たちが何年もかけて作り続けてきたものだろう。 酔っぱらったギフが、饒舌に人生を語る。 「人は変わっていくんだよ。それは、とても過酷なことだと思う。でもね、でも同時に、そのことだけが人を救ってくれるのよ」 世の中は、今までになく景気がよかったので、古いものばかり着ている一樹は浮いていた。 一樹は風と雨に顔を打たれながら、今度こそつかまえなければ、と思った。母のときみたいに、バカみたいにかっこうをつけていたら、大事な物がするりと腕からこぼれてしまう。今度こそ、恥も外聞もなく、待ってくれと頼むのだ。
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連作短編集は大好きで最初の話に出てきた人がフッと別の話に登場するとか、すごい好みなのに、好きな話とそうでもない話の差が大きかった。同じ作家さんなのに?と不思議に思うほど。それでも一人の人の死を中心にして進んでいく過去と今の物語には引き込まれて、久々に手元において時々読み返したくな...
連作短編集は大好きで最初の話に出てきた人がフッと別の話に登場するとか、すごい好みなのに、好きな話とそうでもない話の差が大きかった。同じ作家さんなのに?と不思議に思うほど。それでも一人の人の死を中心にして進んでいく過去と今の物語には引き込まれて、久々に手元において時々読み返したくなる本に出会った。
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※このレビューにはネタバレを含みます
【あらすじ】 悲しいのに、幸せな気持ちにもなれるのだ----7年前、25歳で死んだ一樹。遺された嫁のテツコと一緒に暮らし続ける一樹の父・ギフの何気ない日々に鏤められたコトバが心をうつ連作長篇。 「自分にはこの人間関係しかないとか、この場所しかないとか、この仕事しかないとかそう思い込んでしまったら、たとえひどい目にあわされても、そこから逃げるという発想をもてない。」 「悲しいのに、幸せな気持ちにもなれるのだと知ってから、色々なことを受け入れやすくなったような気がする。」 「生きてるって、本当は殺伐としてるんだよ。みんな、それを分かってるから、きれいに着飾ったり、ご馳走食べたり、笑い合ったりする日をつくってるのかもしれないな。無駄ってものがなかったら、人は辛くて寂しくて、やってられないのかもしれない。」 「人は変わってゆくんだよ。それは、とても過酷なことだと思う。でもね、同時に、そのことだけが人を救ってくれるのよ。」 「本当にあったことでも、いずれそれは記憶の中で曖昧になってゆくだろう。本当かどうかなんて、どうでもいい気がした。そういう記憶をまといながら、どこへいくのかわからないけど、オレはゆるやかに変化してゆくのだ。」 【個人的な感想】 どの短編も繋がっていて、ほっこりする小説だった。 ハッとさせられる言葉も多くて好きな小説だった。
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