垂直農場 明日の都市・環境・食料

ディクソンデポミエ【著】, 依田卓巳【訳】

• 販売会社／発売会社: NTT出版
• 発売年月日: 2011/09/09
• JAN: 9784757142756

商品レビュー

2019/08/25

コロンビア大学教授として微生物学および環境衛生学の公衆衛生分野の鞭を取ってきた著書の一冊。

都市の高層ビル内に建てられる農場のコンセプトを
農業の歴史から含めて紹介。
垂直農場とは季節に影響される、作物が年間を通して、干ばつや洪水などの気候に関連した不作がないなど栽培面でのメリットが多くある一方で、農業排水量や化石燃料の使用を抑えられるなど環境面でのメリットも大きいと説く。

農業分野で働いている身としては、そのコンセプト自体は今後2050年までに人口91億人の時代がきて、
圧倒的に農地が足りなくなるので、コンセプト自体は非常に好きだし、もともとそういうものは出てくる必要があると思っていた。

そういった意味では夢があったけれども、技術的にどこまで可能な状態なのか、実際にある場所ではこういった事例が行われているなど、現実に即した記述が少なかった。

なので、あくまで学者が思い描く理想像止まりの記述に本書が止まっていたのが、残念だった。

問題は、それを如何に現実的に実現していくか。

2014/10/07

【読了メモ】（140706 14:05） ディクソン・デポミエ Dickson Despommier、訳:依田卓巳『垂直農場 THE VERTICAL FARM』／NTT出版／2011 Sep 16th

2011/11/16

都市部にデカイビルを建てて、その中に農場を作ったらいろんなことが解決するよ…という話。アメリカと日本の違いがどれだけあるかわかりませんが、こと日本ではどうでしょうか。
天候に左右されず、環境負荷を減らし、安全な食料を消費地で生産し、フードマイレージを小さくする。雇用も生まれる。そして農地は自然に戻してやれと。いいことに聞こえますが、それは「すべてを都市に」ということです。TPPでこれだけ騒いでいる日本の農村では受け入れがたいことでしょう。
農業生産からさまざまなリスクやメリットが少なくなってコモディティ化・究極の地産地消が進むと、いざデカい事件があったときのダメージも大きいでしょう。
幻想かもしれませんが、日本の農地は彼の国ほど破壊型ではないように見えますし、風景でもあると思います。
技術の本としてとらえるか、政治・経済(あるいは本書にはほとんど出てこない文化・宗教)として考えるかで、随分違って見えます。
そういえばアメリカ産の「シムシティ」には、当初、農地という概念ががありませんでした。やはりアメリカでの農業は工業なのかなと納得してみます。