鳩笛草 燔祭/朽ちてゆくまで 光文社文庫プレミアム

宮部みゆき【著】

• 販売会社／発売会社: 光文社
• 発売年月日: 2011/07/12
• JAN: 9784334749729

商品レビュー

2025/12/06

超能力と聞くと少年ジャンプやアニメの影響で気持ちがワクワクしてしまう。
『クロスファイア』のスピンオフ作品が収録されているということで手に取った作品。
ただ『クロスファイア』は結末を知ってしまってるだけに本編を読む前に読みたかったというのが本音。ちょっと残念。
超能力を持った故の３人の女性の苦悩を描いた中編を三篇収録。

『朽ちてゆくまで』
　タイトルからして少し悲しげな印象。
幼い頃のある事件をきっかけに記憶と
能力が失われてしまう。本人は超能力を持っていたことすら覚えていないので、ある意味三人のなかでは一番幸せだったかも。
亡き両親が残したビデオを見た智子はかつて自分に特殊能力があったことを知る。
呪いのビデオを何度も再生するように負のスパイラルへ陥ってしまう。
私はネガティブに考えてしまうことが多い。
でも曇った心のガラスを打ち破るヒントは自分のことを大切に思ってくれる人の言葉。力があるないに関わらず「見える世界は、結局自分が決めてしまっている」のではと感じた。
最後は希望の光が…

『燔祭』
『クロスファイア』のスピンオフ作品。
青木淳子の「装填された銃」という言葉が弾丸のように深く突き刺さった。
パイロキネシスという特別な力を持ったために、普通の女の子が経験するはずの青春やおしゃれ、恋さえも「自分には無縁なもの」として遠ざけてしまっている。
その姿は余りにも悲しく読んでいて辛い。
でも日々ニュースで見る理不尽な犯罪、もし自分に同じ力があっのなら淳子と同じように正義の鉄槌を下したくなるのは理解できる。
どうせ力を使うなら社会が良くなるために使いたいと…
やはり大きな力を持つと力を使ってみたくなるし役立てたいと思うのは人間の性だろう。
例えそれが間違った方向だとしても。
同じ能力の仲間や相談できる人が身近にいれば彼女の人生はもう少し明るくなったのではないだろうかと思わずにはいられない。
それは超能力に限らず強い個性を持った人、病気の人も同じような気がする、
人間は一人では生きていけないのだと。

『鳩笛草』
他人の心が読める刑事、貴子は自分の持つ能力が失っていくのではと疑心暗鬼になる。
本作品を読んでいると貴子の姿に不思議とドラえもんののび太君が頭をよぎった。
のび太君の安易に道具に頼る姿と貴子が能力に頼ってキャリアを積んでいく姿が重なって見えた。
両者も努力を怠り、力と道具に頼りきりで依存している。
いざ道具や能力なしでといわれると不安になってしまう。
話は少し逸れるがドラえもんはのび太君を助けているのか？ダメにしているのか？
どちらなのだろう？とふと思うときがある。
理想は道具や能力に囚われないのが良いのだろうけど手に届くところにあるとまたそれも難しいだろう。
そう考えると私達が日々使っているスマホも考える力を損なわせているようにも感じた。
結局は使う人しだいで良くもなるし悪くもなる。

それでも私は超能力に憧れてしまう。
外見は爺でも中身はいつまでも童心のままだからかな。

2025/10/17

最初の２作品はサクサク読めたけど

鳩笛草が長かった〜

でも全て最後はモヤモヤせずに読み終えれた

2025/09/19

以前読んだ「クロスファイア」をもう一度読もうとしていたところ、この本にその主人公が出てくるのを知って、読んでみました。
とても面白かったです。

宮部みゆきさんって、色んな種類の作品を書く作家さんだけど、このちょっと現実離れしたお話を書くのが本当に上手だと思う。
読んでいてわくわくできるし、つまらないと思う瞬間がゼロだった。
ひとつひとつの話は短いのに、物足りなさが全くなく、終わり方も良くて。素晴らしかったです。
登場人物たちが良い人が多いところも良かった。