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虐殺器官 ハヤカワ文庫JA
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商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 早川書房 |
| 発売年月日 | 2010/02/15 |
| JAN | 9784150309848 |
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虐殺器官
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商品レビュー
4.2
1099件のお客様レビュー
血みどろのなかの繊細さ
戦争とか、殺戮とか、死体とか血みどろな描写がけっこう鮮明に描かれている。 それでもこれは完璧なフィクションじゃなくて、今もどこかで行われている現実なんだろうなと思い知らされる。 その中で生きる主人公の繊細さも読みどころ。
れい
1.なにのために戦うか。 諸悪の根源のように描かれていたジョン・ポールにも、明確な行動原理があった。彼は「破壊するために戦った」のではなく、「守るために破壊した」。単純な善悪の対立ではなく、葛藤のなかで揺れ動く主人公クラヴィスを通して、それぞれの「正義」の輪郭を見ていく物語だった...
1.なにのために戦うか。 諸悪の根源のように描かれていたジョン・ポールにも、明確な行動原理があった。彼は「破壊するために戦った」のではなく、「守るために破壊した」。単純な善悪の対立ではなく、葛藤のなかで揺れ動く主人公クラヴィスを通して、それぞれの「正義」の輪郭を見ていく物語だった。誰もが誰かを守ろうとしているのに、結果として誰かを殺してしまう。そこに人間の矛盾が凝縮されていた。 2.SF的な要素 IDタグ、環境追従迷彩、人工筋肉……。「ありそうな未来」を想像させるテクノロジーの描写がリアルで良かった。倫理と科学がどこで交わり、どこで断絶するのか。虐殺器官という発想も、単なる空想のようには思えなかった。 3.戦争 9.11のとき、世界が終わるのかと思った。終わりに向かうのかと思った。でもそんなことはなくて、あのときの感覚はなんだったんだろうか。いまとなっては日本海にミサイルが落ちても他人事のように感じる。結局、自分にとっても国外で起きている虐殺については無関心かもしれない。 4.救い 国家から赦されることではなく、ルツィアから「赦す」と言われたいという願望は、彼がまだ人間であることの証左のように思う。 俺自身も「仕事とは宗教なのだよ」というセリフに共感する部分がある。仕事を信仰のようにすがっているが、本当はそんな抽象的な結果ではなく、ただ誰かに認めてもらいたいだけなのかもしれない。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
『虐殺器官』の“genocidal organ”は、人間の内側にある「虐殺を引き起こす臓器」──すなわち認知や集団心理そのものを指しているように感じた。 ジョン・ポールは「虐殺の文法」を操り、後進国での内戦や武装蜂起を恣意的に発生させていく。だが、プロパガンダや情報統制、戦意高揚のための国民精神統一など、現実世界にも同じ構造は存在していて、それらによって民意が扇動され、国家的犯罪へと進んでいった例は枚挙に暇がない。 民族浄化や歴史修正主義も、他者への憎悪と、同胞への強すぎる一体感の裏返しとして起こる。そして現代では、憎悪や対立でさえ「マーケット」になり、平和そのものはビジネスになりにくいという逆説がある。 その結果、平和と紛争のあいだに、どこか見えない「バランサー」がいるかのような感覚を抱いてしまう。 ジョン・ポールは、その世界のバランスを取る存在のメタファーであり、世界を俯瞰する知性そのものの象徴として描かれているように思う。 一方クラヴィス・シェパードは、感情調整を施された兵士として、麻痺していく神経と感情のままに戦場を見続けてきた。家族や恋人を失う経験を経て、彼自身もまた世界をメタに捉えるようになっていく。 ジョン・ポールとの邂逅を通じて、クラヴィスは次第に彼に共感し、その知性や世界との対峙の仕方を、どこかで自らの理想像として見るようになる。 だからこそ最後に、クラヴィスは「次のジョン・ポールになる」道を選ぶ。世界を破壊するのでも試すのでもなく、平和と紛争のあいだを振り子のように揺れ続ける社会を見守り、そのバランスを監視する役割を、自分自身の使命として引き受けたのだ。
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