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世界は分けてもわからない 講談社現代新書
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 講談社 |
発売年月日 | 2009/07/20 |
JAN | 9784062880008 |
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世界は分けてもわからない
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商品レビュー
3.9
182件のお客様レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
先ず言葉遣いの巧さに惹き込まれた。専門的な内容は理解し切れていない部分もあるが、主に研究者が何を考えて研究に取り組んでいるのか、その視点を得ることができた。特にミクロ-マクロのパラドクス(世界は分けなければわからないが、分けてもわからない)は、答えこそないものの、謙虚に自身の中に留めておくものであると認識。過度な一般化を避けつつ、但しどこまでは正しそうなのか、仮説を基に自身の発見を主張していく、これが研究者の生き方なのであると学んだ。分ける(解像度を上げる)ことにより自分の視野から外れている物事があるということ、厳密にはいつまでも成立するようなたしかな因果関係は存在しないということ、そして、世界をわかるためにはそれでも分けなければならない、ということを念頭に置きつつ、そのパラドクスをいかに越えるか、研究の世界で挑戦をしてみたいと感じた。 特に印象に残った箇所は以下の通り ・研究者の希望は、毎朝生まれて、夜毎に消える(p.23) ・この世界には、階層構造がある。マクロを形作るミクロな世界の中に、マクロな世界と同じ階層原理が、無限の入れ子構造として内包されている(p.38) ・顕微鏡で生物組織を観察すると、細胞が整然と並んでいる様子を見ることができる。倍率を上げると細胞の一粒が、一気に近づいて見える。しかしその瞬間、私は元の視野のどの一粒が切りとられて拡大されたのかを見失う。拡大された絵は元の世界のごく一部であり、一部の光しか届いていない。ほの暗い。その暗さの中に名もなき構造物がたゆたっている。そして、今見ている視野の一歩外の世界は、視野内部の世界と均一に連続している保証はどこにもないのである(p.62) ・絵柄は高い視点から見下ろしたときだけ、そのように見えるのであり、私たち人間は、そのような絵柄として生物を見なしている。心臓の細胞は、心臓の形や大きさを知らない。心臓の細胞は、自らが一個の細胞から出発してできた個体の一部であることは知っているかもしれないが、心臓の一部であることを知らない。なぜなら心臓とは、われわれマップラバーが人体を見下ろしたとき見える絵柄に過ぎないからである(p.104〜105) ・たとえ実際の、酵素発見、酵素精製の研究競争に負けたとしても、スペクターとラッカーの名前は生化学史上の偉大な天才として残ったはずなのだ。なぜなら、彼らは正しかったから。彼らの描いた星座は、そのとき皆が見たいと渇望した星座そのものだったという意味において(p.269) ・そして、この世界のあらゆる因子は、互いに他を律し、あるいは相補している。物質・エネルギー・情報をやりとりしている。そのやりとりには、ある瞬間だけを捉えてみると、供し手と受け手があるように見える。しかしその微分を解き、次の瞬間を見ると、原因と結果は逆転している。あるいは、また別の平衡を求めて動いている。つまり、この世界には、ほんとうの意味で因果関係と呼ぶべきものもまた存在しない。世界は分けないことにはわからない。しかし、世界は分けてもわからないのである(p.274〜275) ・分けてもわからないと知りつつ、今日もなお私は世界を分けようとしている。それは世界を認識することの契機がその往還にしかないからである
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(2009/9/5) 福岡伸一さんの「難しいことをやさしくわかりやすく文学的に伝える」文章にはいつも感心している。 今回もそういう雰囲気で書かれている。 いくつかの福岡氏の著作を読んで疑問だったことがある。 福岡氏の理論からすれば、 「なぜ切れた指は生えてこないのか」 「体に入...
(2009/9/5) 福岡伸一さんの「難しいことをやさしくわかりやすく文学的に伝える」文章にはいつも感心している。 今回もそういう雰囲気で書かれている。 いくつかの福岡氏の著作を読んで疑問だったことがある。 福岡氏の理論からすれば、 「なぜ切れた指は生えてこないのか」 「体に入った毒はどうして抜けずに後遺症となるのか」 が説明できていない気がしたのだ。 しかし、前者はひょんなことでわかった。 日本テレビの「世界一受けたい授業」 本とは指は復元しようとするのだが、その前に皮が覆ってしまって指ができなくなるそうだ。そこで、皮が出来ない物質「細胞外マトリックス」(豚の膀胱から取る)を傷口につけると、復活するそうなのだ。 福岡理論は成り立っていることになる。 でもほんとに指が元に戻るの? そして後者。水銀によって水俣病で苦しむ人、これもすぐに体が入れ替わるなら何の問題もないはず、、、というあたりを、今回の著作で説明していた。代謝できないものもあるようだ。 と、謎は謎でなくなったが、今回の著作はちと難解だった。絵がでてきたり、モナリザのモザイクが出てきたり、世界を分断する壁が出てきたり、、、最後は似非実験。 うーん、いいたいことがなんだったのか、、、 いつもより深かった。
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本作は私がアメリカ・サンディエゴへの留学から帰国するときに飛行機の中で読んでいたもので、とても印象に残っている。本作は旅行記のような形式で、筆者が自身の専門分野である分子生物学の諸問題について旅先で考えたことを綴っていくのだが、その旅先のひとつにカリフォルニア州サンディエゴが登場したのだ。こうゆう偶然があるのだなと1人でニヤニヤしていたわけだが、自分が見てきた景色とリンクさせながら読むことができて非常に味わい深かった。 さて内容についてだが、扱っているテーマは「生物と無生物のあいだ」と似ていて、著者は一貫して「境界・あいだ」を考え続けている。そこで印象深い一節を記しておく。 「私たちは見ようと思うものしか見ることができない。そして見たと思っていることも、ある意味ですべてが空目なのである。世界は分けないことにはわからない。しかし分けてみてもほんとうにわかったことにはならない。」 この一節は京極夏彦の「姑獲鳥の夏」を思い出させるお気に入りの一節である。
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