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くらやみの速さはどれくらい ハヤカワ文庫SF
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くらやみの速さはどれくらい ハヤカワ文庫SF

エリザベスムーン【著】, 小尾芙佐【訳】

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くらやみの速さはどれくらい ハヤカワ文庫SF

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 早川書房
発売年月日 2008/12/15
JAN 9784150116934

くらやみの速さはどれくらい

¥550

商品レビュー

4.3

49件のお客様レビュー

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2024/07/11

「光の前にはいつも闇がある。だから暗闇のほうが光よりも速く進むはず」 自閉症と診断を受けている主人公のルゥはそのアイデアを胸のうちで温めている。 裏表紙のあらすじで「光の前にはいつも闇がある。だから暗闇のほうが光よりも速く進むはず」という言葉を読んだだけで、内容もまったく知らない...

「光の前にはいつも闇がある。だから暗闇のほうが光よりも速く進むはず」 自閉症と診断を受けている主人公のルゥはそのアイデアを胸のうちで温めている。 裏表紙のあらすじで「光の前にはいつも闇がある。だから暗闇のほうが光よりも速く進むはず」という言葉を読んだだけで、内容もまったく知らないうちから、深く感動して泣いてしまいそうになる。なぜ感動したのか自分でも思うわからない。それどころかそのセンテンスが果たしてなにを意図しているのかさえもわからぬまま、泣きそうになる。そういったことが、この小説のなかにはあふれている。 ルゥの語りによって物語は進む。『アルジャーノンに花束を』に似ているとのことだったが、実際には似ているところもあればそうでないところもある。この物語は、新開発の自閉症の治療法を、ルゥが受けることにするかどうか、その過程に重きをおいている。『アルジャーノンに花束を』のように、自閉症の状態と、自閉症でなくなった状態がどう違うかに重きをおいた作品ではない。 自閉症とはなにかということをルゥは突き詰めていく。自閉症であることによってなにを失ってきたのか、自閉症でなくなることによってなにを失うのか。自閉症であることはノーマルであることとどう違うのか。ノーマルとはどれだけノーマルなのか。はたして私たちは治療されなければならない存在なのか。その問いは果てしのないものだ。そして切実だ。 作中での描写や発言の意図を完全に理解するのは難しい。理解することが難しいことが、この本の持つ魅力になっている。そして理解するのが難しいことはルゥが自閉症だからだという人もいるだろう。一方で他者の言動からその人の思考を推測することはつねに不可能なことなのだともいえる。一見繋がっているようにみえる論理も、一見充溢しているようにみえる意味内容も、果たしてこれまで一度でも本当の意味で理解されえたことはあっただろうか? この問いかけは、作中で繰り返し扱われる、ノーマルは自閉症性をいっさい排除しているのか、ノーマルと自閉症のあいだで誰がどうやって線を引いているのか、自閉症は異常なのか、という問いかけに呼応する。意味はつねにひとつのアナロジーであり、理解とはアナロジーによって生み出されるものだ。意味の理解とはひとつの構造であるはずだ。ゆえに、ルゥの語りの「真意」を知ることはできずとも、私たちはその文章を理解することができる。そこに、祈りを読みとることができる。翻って、意味がわからないということそのものが、そのまま、ある祈りなのだ。

Posted by ブクログ

2024/06/17

タイトルも著者名も美しいネビュラ賞受賞作。裏表紙に「21世紀版『アルジャーノンに花束を』」とありますが、なるほど同じ訳者なんですね。 自閉症の療法が飛躍的に進化した近未来。治療の適齢を過ぎた最後の世代であるルウは、製薬会社に勤めていて、クラシックを聴いたり、仲間とフェンシングを...

タイトルも著者名も美しいネビュラ賞受賞作。裏表紙に「21世紀版『アルジャーノンに花束を』」とありますが、なるほど同じ訳者なんですね。 自閉症の療法が飛躍的に進化した近未来。治療の適齢を過ぎた最後の世代であるルウは、製薬会社に勤めていて、クラシックを聴いたり、仲間とフェンシングをするなど、充実した日々を送っていました。そんなある日、会社に新任の上司が着任し、ルウたち自閉症者を集めたセクションに、解雇をちらつかせながら、自閉症治療の実験台になることを迫られます。ルウは、ノーマルな人たちが普通に感じ取れる微妙なニュアンスや、他人の表情や仕草から感情を読み取れないことを気に病んでいました。それでもフェンシングは楽しいし、好きな女性がいるなど、今の自分を変える必要があるのか、ルウの視点から語られます…。 自分は、自閉症の人の内面は、この小説で語られる内容でしかわからないですが、ルウの視点から語られる内容はとても考えさせられました。しかし、逆にノーマルの世界も、あまり褒められたものではないことに気付かされて、少し複雑な気もしました。特に嫉妬の感情とか。ルウの車に対するイタズラなどは、ちょっとした犯人探しになっていますが、ルウの思考がとても興味深かくて好きですね。 あと、ラストについては、自分はこれで良かったと思いました。 他に印象深かったシーンの覚え書き。 P271-275の自分は何物なのかということについて、脳の働きを学ぶ決意をするところ。 P471-473の心の葛藤。 P538-542での実験に対する決意と友への心情の吐露。 追記: クラシックでバッハやマーラー、パガニーニやショパンなどが出てきますが、登場人物でジャニスとヘンドリックス博士の名前が面白いです。ロックのジャニス・ジョプリンとジミ・ヘンドリックスから名付けたんでしょうね。著者も好きなのかもしれない。 正誤 (2刷) P492の14行目: それがだれの声がわからなかった。 ↓ それがだれの声かわからなかった。

Posted by ブクログ

2023/10/19

自閉症の男性が主人公。自閉症とは言え、自分に合った職業があり、フェンシングの趣味ももち、それなりに満たされた暮らしをしている。 彼の一人称で話が進む。彼が音楽を理解して感じるやり方や、他の内面世界は、一般的な自閉症者のイメージと違ってとても豊か。感情的には落ち着いていて、合理的で...

自閉症の男性が主人公。自閉症とは言え、自分に合った職業があり、フェンシングの趣味ももち、それなりに満たされた暮らしをしている。 彼の一人称で話が進む。彼が音楽を理解して感じるやり方や、他の内面世界は、一般的な自閉症者のイメージと違ってとても豊か。感情的には落ち着いていて、合理的で美学も感じるような世界観。それに加えて数学の才能も天才的。 だが、新しい上司が彼ら自閉症の従業員を自閉症治療の治験者にしようと圧力をかけてくる。 趣味のフェンシングサークルでの人間関係のいざこざもあり、その治験を受けることを決める。リスクを感じつつも決断する、その葛藤、筋道の付け方がしっかりしている。 結果的に、治療は成功して、彼は元々持っていた宇宙工学への夢を叶える。失ってしまった元の自分と、新しく生まれた自分、それが統合されて、最後は感動的。 自閉症だった彼も、そうではなくなった彼も魅力的で、その二つの立場から世界を見る面白さがある。変化に立ち向かう勇気と未来への希望に満ちている(作中には治療に失敗した同僚の存在も窺わせるものの、詳細はなく、勇気を出して治療してよかった、という印象)

Posted by ブクログ

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