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わたしを離さないで ハヤカワepi文庫
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商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 早川書房 |
| 発売年月日 | 2008/08/23 |
| JAN | 9784151200519 |

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わたしを離さないで
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商品レビュー
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淡々とした調子で主人公の口から過去のエピソードが語られるなかで、前半は主人公たちが置かれている立場や運命が少しずつ明らかにされていく。 寝る前に読んでいたら、その静かな不気味さに背中がゾクゾクしてきて、いい歳して寝つくのが怖くなった日もあった。 ヘールシャムを出てからは、特殊な環...
淡々とした調子で主人公の口から過去のエピソードが語られるなかで、前半は主人公たちが置かれている立場や運命が少しずつ明らかにされていく。 寝る前に読んでいたら、その静かな不気味さに背中がゾクゾクしてきて、いい歳して寝つくのが怖くなった日もあった。 ヘールシャムを出てからは、特殊な環境に置かれた主人公たちが、狭い人間関係の中で葛藤する様子に焦点が当てられていて、後半は不気味さは薄れ、切なさや歯痒さを感じることが多かった。 個人的にはトミーが人として好き。1番人間らしさを感じた。 ルーシー先生の葛藤にも胸にくるものがあった。ルーシー先生が学校を去る前に、トミーを助けようとして以前伝えた言葉を訂正したのはどうしてなのか、そこのルーシー先生の真意が読み取れなかった。 原著を読んでいないけど、とても読みやすくて、本当に女性が語っているような口調で、架空の話なのにとてもリアル。翻訳もすごかったのだと思う。
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読み終わって最初に出てきた感想は、「面白かった」とか「感動した」とかよりも、「なんだこれ、めちゃくちゃうまいな」 この小説、とにかく時間軸が行ったり来たりする。 キャシーが今のことを話していたと思ったら、突然ヘールシャム時代の話になって、そこからまた別の記憶に飛んでいく。 ...
読み終わって最初に出てきた感想は、「面白かった」とか「感動した」とかよりも、「なんだこれ、めちゃくちゃうまいな」 この小説、とにかく時間軸が行ったり来たりする。 キャシーが今のことを話していたと思ったら、突然ヘールシャム時代の話になって、そこからまた別の記憶に飛んでいく。 でも、不思議と読みにくいわけではない。 むしろ、その行ったり来たりに付き合っているうちに、こっちの頭の中に少しずつ物語ができあがっていく感じがする。 特に印象に残ったのが、「そのときはよく理解できなかったけど、なぜか頭には残っていた」みたいなことが何度も出てくるところ。 登場人物たちは、何も知らされていなかったわけじゃない。 ある程度は教えられている。 ただ、まだ本当の意味を理解できない時期に教えられている。 だから、大人になってから「あのとき言われていたのは、こういうことだったのか」と意味がつながっていく。 これが読んでいる側にも起こる。 何気なく書かれていた一言や出来事が、何十ページか後になって急に意味を持ち始める。 時間軸だけじゃなくて、「理解する順番」までめちゃくちゃにされる。 それがものすごくうまい。 登場人物もみんな好きだった。 特にトミーにはかなり愛着が湧いた。 子どものころは癇癪を起こしたり、周囲とうまく合わせられなかったりするけれど、その不器用さも含めて一番まっすぐな人に見える。 嬉しいと嬉しいし、傷つけば傷つく。 うまく取り繕えない。 だから読んでいるうちに、自然とトミーのことが気になるようになった。 一方でルースは、たぶん誰の中にもある嫌な部分を、少し大きくして描いたような人物だと思う。 自分を大きく見せたり、知らないことを知っているように振る舞ったり、人間関係の中で優位に立とうとしたりする。 正直、読んでいて嫌だなと思うところもある。 でも、完全には嫌いになれない。 「自分には価値があると思いたい」とか、「仲間外れになりたくない」とか、「自分が愛されていることを確認したい」とか。 そういうものって、程度の差はあっても多分みんな持っている。 だからルースを見ていると、人の嫌な部分を見せられているというより、自分の中にもあるものを少し拡大して見せられている感じがした。 そしてキャシー。 一番冷静で、一番まともに見えるけれど、この人もやっぱりどこか欠けている。 感情がないわけではない。 むしろかなり細かく人を見ている。 でも、大事なことに対して驚くほど強く抵抗しない。 傷ついても少し距離を取る。 好きな人がいても強く奪いにいかない。 自分の運命についても、基本的には決められた枠の中で受け入れていく。 ただ、それを弱さと言ってしまうのも違う気がする。 もしかするとキャシーは、何かを失うことに耐えるために、物事を少し離れたところから見る癖がついているのかもしれない。 だから、この小説は悲しい出来事がたくさん起きているのに、キャシー自身は「私はこんなに悲しかった」とはあまり言わない。 代わりに、「あのときルースがこう言った」とか、「そういえばこんなことがあった」と淡々と思い出していく。 その淡々とした語りの中に、ものすごく大きな感情が埋まっている。 たぶんこの小説は、登場人物だけじゃなくて、小説そのものも「何かが欠けている」ように作られているんだと思う。 世界について細かく説明しない。 登場人物の感情も全部は説明しない。 何が正しくて何が間違っているのかも作者は言わない。 時間もバラバラ。 重要なことも少しずつしか教えてくれない。 だから読者が、その足りない部分を自分で埋めながら読んでいくことになる。 そして気づいたころには、キャシーやトミーやルースの人生が、自分の記憶みたいに頭の中に残っている。 読み終わって、「感動した」という言葉だけでは何か違うと思った。 もちろん悲しいし、考えさせられる。 でも、それ以上に、 「こういうふうに小説って書けるのか」 という驚きが残った。 理解できないことを、理解できるようになる少し前に置いておく。 意味の分からない記憶を先に渡しておいて、あとからその意味を変える。 読者の頭の中まで使って物語を完成させていく。 読み終わった今、一番しっくりくる感想はやっぱり 「なんだこれ。うますぎる。」
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キャシーは、ヘールシャムと呼ばれる施設で育ち、現在は「提供者」たちの「介護人」をしている。ヘールシャムで過ごした日々や保護官たちとのやりとり、友人関係が、キャシーの視点から淡々と語られていく。しかし読み進めるうちに、その語りのどこかに少しずつ違和感を覚えるようになる。 キャシー...
キャシーは、ヘールシャムと呼ばれる施設で育ち、現在は「提供者」たちの「介護人」をしている。ヘールシャムで過ごした日々や保護官たちとのやりとり、友人関係が、キャシーの視点から淡々と語られていく。しかし読み進めるうちに、その語りのどこかに少しずつ違和感を覚えるようになる。 キャシーが語る出来事は、現在の彼女が過去を振り返り、改めて意味を与えていくものである。当時はわからなかったことが、時間を経て別の意味を帯び、その理由や背景が明らかになっていく。そのたびに浮かび上がる出来事の取り返しのつかなさに、静かにゾッとさせられる。 物語を読んでいるというより、キャシーの記憶と感情のなかに、長いあいだ浸り続けているような作品だった。
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