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気違い部落周游紀行 冨山房百科文庫31
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 冨山房 |
発売年月日 | 1993/07/08 |
JAN | 9784572001313 |
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気違い部落周游紀行
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商品レビュー
3.6
12件のお客様レビュー
マルセル・モースのもとで人類学を学んだ著者が、戦中から戦後にかけて暮らすことになった山村での人間関係を、エスプリの利いた筆致でえがいた本です。 近代的な社会に生きているつもりの日本人にとって、本書で明かされている閉鎖的な集落の掟が、遠い世界のことであるように思える一方、現在のわ...
マルセル・モースのもとで人類学を学んだ著者が、戦中から戦後にかけて暮らすことになった山村での人間関係を、エスプリの利いた筆致でえがいた本です。 近代的な社会に生きているつもりの日本人にとって、本書で明かされている閉鎖的な集落の掟が、遠い世界のことであるように思える一方、現在のわれわれの行動もこれに類する暗黙の了解に束縛されていることに気づくことになるのではないかと思います。人類学を学んだ著者は、そうした前近代的な社会のしくみをただ批判しているのではなく、現代社会の深層を掘り起こして、普段は忘れ去られているものの今なお根強く存在している構造を明らかにしています。 吉本隆明は、柳田國男などの民俗学に学びつつ、「大衆の原像」という拠点に立って丸山眞男に代表される戦後の啓蒙主義的な社会像に対する批判をおこないましたが、著者は閉鎖的な集落の境界に位置をとることで、吉本が見ようとしていた大衆のとらえがたい性格にせまろうと試みたということができるのではないかと考えます。
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挑発的なタイトルであるが内容は古き良き時代のインテリの文章だ。“大学の先生”が戦後すぐに東京を離れて田舎の山村(と言ってもおそらく関東)に住み、村人と共に暮らしてそこで起きたことや見たものを書いている。 普通ならこういう田舎の暮らしは「牧歌的」とか「純粋」とかいう言葉で美化...
挑発的なタイトルであるが内容は古き良き時代のインテリの文章だ。“大学の先生”が戦後すぐに東京を離れて田舎の山村(と言ってもおそらく関東)に住み、村人と共に暮らしてそこで起きたことや見たものを書いている。 普通ならこういう田舎の暮らしは「牧歌的」とか「純粋」とかいう言葉で美化され、「都会人が失ってしまった大切な心の交流が‥‥」などと描かれることが多い。しかし本書はまったく違う。怠けたり人を出し抜いたりする人間の醜い姿が包み隠さずさらされており、息子が書いた文庫版のあとがきによれば、本書発行後は少々きまずい関係になったようだ。 とはいえ、本書に出てくる人々の醜さは、振り返れば我々にだって備わっているものであり、普段は隠して表に出さないだけで、田舎だろうが都会だろうが関係ない人間の本質だろう。だから、読んでいても彼らに対する嫌悪感はわいてこない。 なんとも評価しづらい本だが、面白いのは面白い。シニカルな笑いがこみあげるが、その笑いの対象は自分も含まれているのは間違いない。
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きだみのる『気違い部落周游紀行』(冨山房、1981)を読む。 えげつないタイトルで図書館でも貸出禁止になっていますが、中身は正統派社会学に連なるものです。 ファーブル昆虫記などの翻訳で知られる著者は戦前からフランス留学をした国際派。しかし敗戦のあおりで日本に「閉じ込められ...
きだみのる『気違い部落周游紀行』(冨山房、1981)を読む。 えげつないタイトルで図書館でも貸出禁止になっていますが、中身は正統派社会学に連なるものです。 ファーブル昆虫記などの翻訳で知られる著者は戦前からフランス留学をした国際派。しかし敗戦のあおりで日本に「閉じ込められて」しまうことに。 それなら内部の探検だ!とばかりに八王子の古寺に居を構え、曰く「気違い部落」の愛すべき英雄たちの観察日記を雑誌連載。(曰く「珍らしい菌や昆虫の不思議な行動の観察と同じ」と。)そのまとめがこれです。 自ら漢籍、ギリシャ古典に詳しいというだけあって戦前知識人の重厚な、でありつつ諧謔を秘めた文体もなかなかに味わい深いものです。 一見知識人の傲慢にも思えますが、禅的反語で愛情の裏返しなのかもしれません。(続編がシリーズ化しています) 【本文より】 ◯だがもし部落の勇士たちが、自己を常に中庸或は中道を歩き、その行動の基礎をなす判断は、一般の人がしかく思い込みたがるように、恰も常に謬りなく中正であると信ずる習慣を持って云云しているのだったら、彼らは殆ど存在しない中庸人の地帯上にあるというよりも、むしろ真実気違いに属する症状を示していると考うべきであろう。 ◯思考の結果は極めて犀利な場合もあるが、思考を導く方法に欠陥がある場合には思考の病気を表すこともある。何れにもせよ、観察者に深い興味をそそることは、珍らしい菌や昆虫の不思議な行動の観察と同じである。
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