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きつねの窓 おはなし名作絵本27
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | ポプラ社 |
発売年月日 | 1977/04/01 |
JAN | 9784591005545 |
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きつねの窓
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商品レビュー
4.4
34件のお客様レビュー
『あ!きつねのまどって、指でやるやつだよね!』と、子供達は、怪談話で知っていたようで、読み始めると しんっと集中して聞いてくれました。 日が暮れるのも段々と早くなり、なんとなくセンチメンタルになる秋。じわっと心に沁みます。
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〝鉄砲を担いで、青い桔梗の花畑の中を白い子キツネを追っていた時の話です。 不意に小さな染物屋が現れて、その店からひと目で子キツネと分かる男の子が出てきました。「どんなものでもお染します。指先を染めると、とても素敵ですよ」男の子は、青く染めた自分の指でひし形の窓をつくると「ちょっと...
〝鉄砲を担いで、青い桔梗の花畑の中を白い子キツネを追っていた時の話です。 不意に小さな染物屋が現れて、その店からひと目で子キツネと分かる男の子が出てきました。「どんなものでもお染します。指先を染めると、とても素敵ですよ」男の子は、青く染めた自分の指でひし形の窓をつくると「ちょっと覗いてみて下さい...これ、ぼくの母さんです...ずうっと前に、ダーンとやられたんです。鉄砲で・・・」〟安房直子サン作、織茂恭子サン絵による、切なくも優しさのある、教科書に載った名作童話です。
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安房直子さんの作品は、幻想的要素を絡ませながら、共に生きるもの同士の心の交流を温かく描くことから、大人向けのものが多く、それはこの絵本(1977年)も同様ですが、教科書にも出てくるそうで、はたして子どもたちが、どのように感じるのか気になるところです。 表紙の文字のフォントからも...
安房直子さんの作品は、幻想的要素を絡ませながら、共に生きるもの同士の心の交流を温かく描くことから、大人向けのものが多く、それはこの絵本(1977年)も同様ですが、教科書にも出てくるそうで、はたして子どもたちが、どのように感じるのか気になるところです。 表紙の文字のフォントからも分かるように、始まりは、どことなく不穏な雰囲気で、終始落ち着かない気分にさせられ、それは織茂恭子さんの寒色系の多い背景もありますし、更に杉林から一転して、突然現れた、一面桔梗(ききょう)の花畑が、それに輪をかけたように思われるのは、主人公の男の職業が、きつねを追いかける猟師なのもあると思います。 また、序盤は絵本ならではの、ページをめくった、すぐ後の文章の転換の仕方の上手さも印象的で、めくった先の文と、それに合わせて動き出しそうな絵を見て、思わずドキッとさせられるような臨場感には、これから何か恐ろしいことが男を待ち受けているのではないかと、更に不安感を煽ってくれます。 ところが、その後の展開は意外性を見せ、最初こそ、きつねを捕まえようと考えていた男だったが、それを覆すような共感を覚えたのが、『大切な人を失ったことによる孤独感』であり、これによって、私は最初、ここで二人を対峙させたのが、きつねの男に対する恨みなのかと思っていたのが、実は、序盤に男がとりとめもなく考えていた、昔大好きだった少女(今はもう決して会うことができない)に、同じような共感の思いを、きつねが寄せたのではないかと思ったのです。 そして、そんな共感の思いをきつねへと寄せた、男が得たものは、ききょうの花の汁で青く染め上げた、四本の指を菱形に合わせて作った窓から覗くことの出来る、今は決して見ることの叶わない、失った人や場所のかつての面影であり、そこには大好きだった少女や、死んだ妹、焼けて失われた家が現れて、これさえあれば、もう寂しくないと感じた男でしたが、その別れは、意外ながらも非常に現実的な人間らしさという、悲しき本能によって、すぐ訪れることになるのが、また何とも言えない気持ちにさせられます・・・が、しかし。 ここで私が思ったのは、はたして、これって本当に幸せなことなのかということで、人それぞれの価値観や人生観があるので、断定こそいたしませんが、どんなに悲しいことがあっても、いつかはそれらに別れを告げて、前を向かねばいけないと思いましたし、過去の映像を見ることが出来るだけというのは、却って胸を締め付けられるような辛さを、そのうち覚えるのではないかとも思いましたし、理由はどうであれ、その訪れたという事実を受け入れる、死者への尊厳も大事なのではないかと思いました。 桔梗の花言葉は、「永遠の愛」、「変わらぬ愛」、「誠実」等であり、確かにその力を借りて見ることの出来た映像には、それらがあるのでしょうが、どこか現実性に乏しく不安感を覚える言葉たちに、私は素直に身も心も委ねる気には、とてもなれそうにありません。 しかし、それでも表紙の桔梗を胸に抱えた男の子の思いや、裏表紙の麦わら帽子にひとさしの花を見てしまうと、それに委ねたくなる気持ちも分かるようで切なくなるし、といった、このどちらとも付かない思いの葛藤を抱かせる、この絵本は、ある意味、安房直子さんの真骨頂なのだと思います。
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