果てしなき渇き 宝島社文庫

深町秋生【著】

• 内容紹介: 部屋の麻薬のカケラを残し失踪した加奈子の行方を追う、元刑事で父親の藤島。一方、三年前。級友から酷いイジメにあっていた尚人は、助けてくれた加奈子に恋をするが……。現在と過去が交錯し、少しずつ浮かび上がる加奈子の輪郭と、探るほどに深くなる彼女の謎。驚愕の結末に全選考委員が圧倒された第3回『このミス』大賞受賞作品。読む者の心を震わせる、暗き情念の問題作。
• 販売会社／発売会社: 宝島社/宝島社
• 発売年月日: 2007/06/12
• JAN: 9784796658393

商品レビュー

2009/12/25

普通の小説では味わえない

[yui]

ノワール小説が持つ抗いがたい魅力。愛でもなく温かみでもない、暴力とセックスとドラッグ。普通の小説では味わえないものが、これでもかとばかりに詰まっている。『このミステリーがすごい！』大賞受賞作品。

2025/10/21

表現が生々しく、思わず目を背けたくなるが読む手は止まらなかった。
特に最後の一言がこの一冊の全て表しているようで抜群に面白かった。

2025/09/25

元刑事の藤島。
ある日、別れた女房から連絡がくる。
娘が居ない。今から家に来て欲しい、来たらわかるから。
そう言われて妻と娘が住むマンションへ向かった。
そこで見つけたのは、大量の覚せい剤とその道具。
美人で頭が良くて賢い子だと思っていた娘には似ても似つかない物。
父親は母親に頼まれて娘の行方を追っていく。
そこで明らかになるのは自分の知らない娘の話ばかりだった…。

自分の知らない娘の姿。自分の知らない娘の交流。
娘と関わりのある人物をしらみ潰しのように当たっていく藤島に狂気が浮かぶ。

加奈子は何処だ。加奈子の居場所を教えろ。

何度もその言葉を口にする。
藤島も、加奈子に関わりがある人物も、皆何処か狂ってる。
次々と湧いて出てくる暴力。それでも読む手が止まらない。
娘を必死に探す父親。
その言葉だけ見れば立派な物だが、そこに隠された思いが所々に散らばめられていて気分が悪い。
妻を愛していた。やり直したかった。娘を必死に探す父の姿を娘に見せたかった。娘の事を1番知っているのは自分だ。自分が知らない娘を他の誰かが知っている事に嫌悪する。

加奈子という娘と藤島という父。
それに絡む誰も彼もが狂っていて、何かに飢えている。
そして藤島は知る。自分の犯した罪と、加奈子という娘が何をしてきたかを。
それでもやっぱり最後まで加奈子を探し続けて、「娘の願いは自分の願いだ」とまた罪を重ねる。
加奈子の行動力はあまりにも大きくて狂気すら感じる。だが一貫して彼女の印象は美しいという印象しか残らない。
裏の世界に手を染めた理由だけは普通の加奈子のような気がする。
加奈子の居場所を藤島は「本当に」探し当てられたのだろうか。

最後の最後まで、藤島が居なくなった加奈子を追い求める話だった。