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倭国神話の謎
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倭国神話の謎
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記紀神話の神代の記述を、歴史的な事実を反映したものとみなす著者の考えが開陳されている本です。 著者は、現在にまで伝わる記紀神話の原型となった「皇室版日本神話」が四世紀に存在していたと主張します。その後、天武天皇によって諸説からの「撰録」によって「正説」を定めることの必要性が主張...
記紀神話の神代の記述を、歴史的な事実を反映したものとみなす著者の考えが開陳されている本です。 著者は、現在にまで伝わる記紀神話の原型となった「皇室版日本神話」が四世紀に存在していたと主張します。その後、天武天皇によって諸説からの「撰録」によって「正説」を定めることの必要性が主張され、記紀神話としてまとめられることになりました。こうした主張の根拠として、著者は「本文」と「一書」から成る『日本書紀』の構成に注目し、それらは「皇室版日本神話」の資料とみなすことができると考えます。なぜなら、もし編纂者がそれらの内容に加工や改変をおこなうことで「正説」を構成しようという意図をもっていたのであれば、「本文」と「一書」を併記するという構成はまったく無意味だからです。さらに著者は、『古事記』についても『日本書紀』との対応を考えることで、その内容と「皇室版日本神話」の内容の対応を想定することが可能だと考えます。 しかし、こうした著者の想定は、いささかずさんではないかという思いをいだかざるをえません。もし記紀神話の編纂者が、天皇家を中心とする統治体制をイデオロギー的に補強しようとする意図をもって神話をつくりあげたのであれば、たしかに著者の主張するように『日本書紀』のような構成を採用することはないのかもしれません。しかし編纂者の関心は、そうした意図的なものだけにかぎられるわけではありません。彼は時代状況のなかで、単純にひとつの意図にまとめられない多様な関心をかかえており、それらの多様な関心によってそのつどさまざまな方向へ引っ張りまわされながら、テクストをつむぎ出していったはずです。 記紀神話の編纂にあたって歴史的事実が素材として用いられることはあったのでしょうが、第一義的にはそれは七世紀から八世紀にかけて「神話」として編まれた作品として理解されるべきではないかと考えます。
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