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転落の歴史に何を見るか 奉天会戦からノモンハン事件へ ちくま新書
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 筑摩書房/ |
発売年月日 | 2002/03/20 |
JAN | 9784480059376 |
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転落の歴史に何を見るか
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商品レビュー
4.2
11件のお客様レビュー
人は何度も過ちを繰り返し、その都度失敗に学びながら進歩してきたわけだが、中々そう上手く進化していない事も多くある。本書は過去に日本が経験してきた数々の戦争や事変を歴史の中の「転落」と捉えて、そこから何を得て何を得なかった(繰り返した過ち)かについて、主に後者について述べていく。そ...
人は何度も過ちを繰り返し、その都度失敗に学びながら進歩してきたわけだが、中々そう上手く進化していない事も多くある。本書は過去に日本が経験してきた数々の戦争や事変を歴史の中の「転落」と捉えて、そこから何を得て何を得なかった(繰り返した過ち)かについて、主に後者について述べていく。そして後者を並べることにより、今後将来の日本が迎える困難に何を活かすべきかを論じていく。前者については筆者がその解を導き出す様な形で進んでいく。筆者が本書を書くきっかけとなったのが、名著「失敗の本質」であった事から、概ね転落を反省し、そこから学ぶことのできなかった過去の日本、という形で話は始まる。 なぜ日本が日露戦争に勝てて、その後のノモンハンや太平洋戦争に勝利できなかったのか。一つの答えとしては組織の問題が挙げられる。明治の時代には東郷平八郎や乃木希典、大山巌に児玉源太郎と、戦争だけに長けたスペシャリストではなく、内政に関しても日本という国を俯瞰的に捉え、物事の本質を見誤らないジェネラリスト的な人間が多く活躍した。彼らは目の当たりにする一つの戦局で戦うのではなくスパイ工作や終戦工作など外交面・諜報面そして日本の国力や生産力にまで精通し、戦争を幅広く時間と空間で捉えながら戦ってきた。一方、その後の日本軍は特定のスキルに長けたスペシャリスト教育が中心となったため、作戦家は騎乗の作戦だけ、歩兵は歩兵戦術のみ、水雷屋は敵艦を魚雷で沈めるだけの人材が増加していく。そしてそれらを纏め上げる優秀なジェネラリスト達が老いと共に去っていく。そこに出来た大きな崖を、日本という国家はそのまま転落していく。 もう一つ主義にこだわる点も大きく影響する。白兵銃剣主義に艦隊決戦主義、大艦巨砲主義など、一度成功を見た戦術をそのまま変えずにいつまでも貫き通す。当たり前だが、敗れた側はその戦い方を研究して攻略してくるから、本来それを見越した戦術の転換などが必要であり、我が国は過去の形に拘りすぎるために容易に破られていく。ジャンケンで初回に買ったグーを出し続ける様なものだ。 さらに失敗の本質や山本七平の「空気の研究」でも散々述べられてきた、周りへの同調、空気感に飲まれる人や組織の問題、失敗しても処分できない体質からは反省も当然の如く生まれない。本書はそうした過去の日本が繰り返してしまった敗北とその原因を追っていく点では、失敗の本質同様に読みやすく、加えてわかり易く論じてくれる。 後半については日本が団塊の世代が一斉リタイヤし正に転落必死の崖を前にして、一体これら失敗から何を学び取りどうしていく必要があるか、筆者の考えもヒントにしながら一緒に考えていく必要性を訴えていく。少子高齢社会待ったなしの現在において国民一人一人に突き付けられた難問である。これを何も学ばず放置すれば、崖からの転落が待ち受ける。過去の大戦敗北で日本がそうだった様に、再び経済戦争で大きな敗北を迎えるだろう。そうならないためにも本書を手に取り、考えるきっかけにしてみてはどうだろうか。日本社会にただ待ってるだけでは秋山真之は現れない。
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210816転落の歴史奉天会戦からノモンハン齊藤健◎ 新書だがコロナ禍にある日本社会を見る視点としては有益 「失敗の本質」が現代日本にも脈々と繋がっているという現実 それを確認することからしか「ポストコロナ」はあり得ない 1.日本軍は戦略転換が苦手 野中郁次郎→『何が物事の本質か...
210816転落の歴史奉天会戦からノモンハン齊藤健◎ 新書だがコロナ禍にある日本社会を見る視点としては有益 「失敗の本質」が現代日本にも脈々と繋がっているという現実 それを確認することからしか「ポストコロナ」はあり得ない 1.日本軍は戦略転換が苦手 野中郁次郎→『何が物事の本質か』 ①大鑑巨砲主義②白兵銃剣主義 源田実 水平の失業問題 →予算の制約が大きい 軍事費は日本の体力の限界を超える 現代日本も社会保障費で硬直 未来への戦略投資が出来ず閉塞化 2.軍人指導者の視野狭窄 組織内の純粋培養 大局観が育たない 世界観・歴史観を踏まえた戦略転換に及ばない 小才を育てた陸士・陸大教育=現代の偏差値教育 平時は成績主義⇒非常時は実力主義・抜擢人事 二次大戦の米国軍人事 3.ノーブレス・オブリージュ 明治期は武士道が担ったが、昭和にはそれがなくなった 変わるものもない 大義なき侵略戦争は将兵の意識劣化をもたらした 現代日本もエリートの理念を持ち得てはいない 金銭至上は卑しい 4.組織的欠点①希望的観測②ドグマに無批判③代替案の拒否 日常の自転 思考停止 ワンパターンの作戦 失敗の繰り返し 独創性の軽視・異分子の排除 5.人材の育成 社会の最大のテーマ 「国家社会の経営」という意識の希薄さ ex捕虜収容所の運営 日本は属人的・権力的 親分・子分 欧米は組織設計ありき 機能 6.虚偽 大本営発表 チャーチル 失敗を報告 国会・社会の受け入れ 信頼感と人材育成 包容力 エリートの育成 社会的仕組み 「政治家の登用・育成」 利権から隔離 国会議員は国政のみ 小選挙区制だけでは逆効果 7.環境次第 昭和の軍隊が特別だったのではない オイルショックの時に買い占めを行った商社マンも全く同じ 170815 転落の歴史に何を見るか 齋籐 健 奉天会戦−ノモンハン 著者は59年生まれ83年東大から通産官僚へ 日本の組織社会に危機感を持ち 昭和の日本との比較・反省の書として本書を上掲 「組織の共同体化」これにつきる 実力主義を回避し、年功制、トップも世襲制⇒組織はどんどん劣化していく 最期、組織の破綻まで転落を続けるしかない、ホラーストーリー 30数年の間に栄光からどん底へ 誰もが改革を求めながら暗転 1−1 大艦巨砲主義からの転換 なぜ日本は出来なかった? 合理性より水兵の雇用問題 米英は出来た 緒戦敗北のショック 合理的改革へ転換できた 社会の支持とリーダーシップ →現代の「英語教育」「IT教育」 既存の先生の雇用確保が優先され改革が出来ない 「野中郁次郎教授」(22) 何が本質かー判断基準とする 人間関係や過去の経緯に捉えられると意思決定が歪む 2−1 奉天からノモンハンへ 日露戦争までは政略優先 →軍部大臣現役武官制 統帥権の独立へ 原敬暗殺後、ジェネラリスト人材の枯渇 19211104 →19220201山縣有朋の死 「人材育成システムが機能しなくなる」 なぜか? システムではなく、経験の問題とすると、社会制度は進歩できないことになる 『良質の指導者』をいかに育むか という問題意識がないのではないか(67) ⇒組織の共同体化 合理性より仲間意識 ボス 村八分 息苦しさ 学習やイノベーションからほど遠い組織 「日常の自転」(80)思考停止 組織の学習は不活発 組織の劣化 セクショナリズムによる部分最適化 全体最適=組織目的意識の喪失 (1)指導者層の変質 (2)道徳的規律の喪失 (3)組織の自己改革力の喪失 (4)歪んだ戦史の悪影響 大艦巨砲主義 白兵銃剣主義のドグマ 3−1 イギリスの政治体制 有能な人材の確保 国家的政策に集中 ⇒「政の優位」を確保できる (日本の民主党政権 小澤政治の拙速) ⇒国の存亡をかけた国家間の争い(117) 有能なリーダーを輩出、選抜しなければ滅んだ 狩猟民族のトップ選出 「真のエリート」(司馬遼太郎)126 (1)公のために自己犠牲 (2)冷徹なリアリズム →ノブレスオブリージュ
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さすがは現役エリート官僚。設定したテーマから僅かばかりも外れる事なく論を進め、きちんと結論を導いている。頭の良い人ってこう言うものなんだと改めて感心した(何様目線?!)。 何故日露戦~先の大戦の間に日本軍の能力が転落したのか、その原因は有能なジェネラリストの明治の元勳が表舞台から...
さすがは現役エリート官僚。設定したテーマから僅かばかりも外れる事なく論を進め、きちんと結論を導いている。頭の良い人ってこう言うものなんだと改めて感心した(何様目線?!)。 何故日露戦~先の大戦の間に日本軍の能力が転落したのか、その原因は有能なジェネラリストの明治の元勳が表舞台から消え、狭い専門教育を受けたスペシャリストのエリートに世代が替わったから。これはこれで非常に説得力のある論考だが、著者の書き方からは明治元勳が標準で以降の世代の能力が著しく劣っているとの前提に立っているように感じる。でも矮小な無能指導者層が現在まで続いていることをみればむしろ明治のリーダーが突然変異的、例外的に優秀だっただけなのではないか? 最終章で明治維新と戦後はどちらもゼロベースからの出発だったと言っているが、それは違う。江戸時代に育まれた豊かな文化や精神の基盤がなければ明治維新は成功しなかったし、非常事態のなかで異才が登用された結果だった。その意味で維新元勳は継続的な人材の発掘育成システムの構築には失敗したわけだ。 そう思うと明治維新のような革命的な動乱が起こらない限り明治のリーダーに相当する人材は(仮にいたとしても)表舞台には出てこないと思われる。世襲ばかりの国会議員を見てりゃすぐわかるけどね。
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