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ベンヤミン解読
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ベンヤミン解読

道籏泰三(著者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 白水社/
発売年月日 1997/12/22
JAN 9784560019993

ベンヤミン解読

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2010/11/09

ドイツ文学者によるベンヤミンの解読。現実を破壊し、その瓦礫を縫い合わせることで新たな道を構築しなおそうとするベンヤミンの思考が論じられるが、哲学的・分析的な仕方で議論が進められているわけではない。他方で、ホーフマンスタールと対比しつつ、カフカとベンヤミンとの「近さ」を論じたところ...

ドイツ文学者によるベンヤミンの解読。現実を破壊し、その瓦礫を縫い合わせることで新たな道を構築しなおそうとするベンヤミンの思考が論じられるが、哲学的・分析的な仕方で議論が進められているわけではない。他方で、ホーフマンスタールと対比しつつ、カフカとベンヤミンとの「近さ」を論じたところは、さすがに読みごたえがある。 ベンヤミンの世界は、世紀末の憂鬱な崩壊感覚を描いたホーフマンスタールの『チャンドス卿の手紙』にも似ている。ただしホーフマンスタールは、この現実とはまったく異なる次元の新たな言語によって、陰鬱な現実からの脱却を遂げようと試みた。だが著者によれば、そうした夢想的な言語によって一足飛びに現実を超えようとする試みは破綻せざるをえない。そうした方法は、フッサールの「現象学的還元」が、あまりに主観的な方法に基づいてコギトの世界というもう一つの呪われた世界を打ち立ててしまったのと同様の道をたどることになるだろう。 ベンヤミンは、カフカの世界に登場する醜い異形たちを「せむしの小人」と呼ぶ。彼らの存在は、遠い過去に忘却された願望を保持し続けながら、いつもそれが挫折してきたことを私たちに宣告する。だが他方で、カフカの生み出す奇妙な形象たちは、もはや意味指示能力を失ったアレゴリーのようなものとしてなお存在し続け、「遊びの空間」を切り開いてその内を自由に跋扈する。それらはいわば、「失われて二度と再び発見できない幸福の何かがある」ということを飄々とした姿で告げているサンチョ・パンサのような存在だ。カフカの世界は、「せむしの小人」と「サンチョ・パンサ」という二つの焦点からなる楕円である。 もはや失われた希望の「想起」という方法に基づく歴史哲学を構想したベンヤミンは、こうしたカフカの世界に共感を覚えていた。カフカの描く世界にいっさいの希望がないと感じたブロートに対して、カフカは微笑みながら次のように答えたという。「希望ならじゅうぶんあるさ、無限にたくさんの希望がね。ただし、ぼくらにとってではないんだ」。ベンヤミンはこうした、「掟」が「掟」として告げ知らされることのない状況を、「断片の恩寵あふれる未完結性」と読み解く。私たちがけっして到達することのなかった「夢」の断片を、歴史の瓦礫の中から拾い出すベンヤミンのまなざしは、限りないやさしさに満ちている。

Posted by ブクログ

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