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蔵(下) 中公文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 中央公論新社 |
発売年月日 | 1995/07/18 |
JAN | 9784122023604 |
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商品レビュー
4.2
9件のお客様レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
家族とはなんだろう、と考えさせられた一冊。 舞台は明治後半から大正、昭和初期。 新潟の亀田にある、庄屋であり、酒造りをはじめてまだ二代目の田乃内家だ。 当時の人の規範となるのは、いかに代々の土地屋敷を守り、家族を保持し、ご先祖さまに恥ずかしくないよう生きるか、だ。 初めて読んだ宮尾登美子。 以前、姉が何かの宮尾登美子作品を読み、口調がうつりまくる、と言っていたが、私も案の定うつりまくりでした。 新潟弁なんも知らんねすけ、ひっで不思議なことらあん。(←多分絶対違う) 主人公は盲目の少女、烈。 美しく賢く、プライドの高い烈だが、なんといっても、この時代に、田舎で、女で、盲目なのだから、人生ハンデは凄まじい。 冒頭から、家ではたくさんの子供が夭折してきたことが語られる。 やっとぶじに育った烈の目が見えなくなるさまは、胸が苦しい。 家族は常に、人が増え、減っていくものだが、特にこの家では前半の人口減少が苦しい。 そしてついには、酒蔵二代目、一人息子の意造と、その一人娘の烈だけになってしまう。 そしてそこに、烈のおばで、亡くなった母の賀穂に代わって、烈の生涯の母代わりとなる佐穂がいる。 そこへ、意造の後妻でまだ若い、せきがやってくるも、せきの息子は事故死し、意造は心身を壊していく。 意造は酒蔵もしめ、縮み行く一族を静かに閉じようとする。 ここから、家庭は暗く重い幕の中に入っていくが、光は突然やってくる。 烈は酒蔵を継ぎたいと宣言して意造を説き伏せていく。 ここから始まるカタルシス!と思いきや、私は何度も、せきーーー(怒)!となったし、読者の10人中9・5人はそう思ったでしょ。 せきのまわりゴタゴタはイラっとしたけど、まあ、でもこう言うことってあるだろうなあとも思った。 人生っていろいろだもんなあああ。 家族って不思議なものだなあとしみじみわかった。 歳を重ねるとさらにそう思いそう。 怒涛の展開に突然のラストで驚いたけど、人物たちのその後がさらっと語られるエピローグには涙がぽろりと出てきた。 烈は生きて走り抜けた。 そして、どちらかといえば、読者は意造や佐穂の視点から物語を見てきたので、彼らのその行末にもジーンと感動が広がった。 こんな形があるんだなあと深い情に感じ入った。 (雪国モノはやはり耐え忍ぶターンが長いなあ。 この頃の新潟ってとてつもなく冬が長かっただろうなあ。 作中で烈が勉強に使った、新潟の地誌、北越雪譜に興味を持ちました。) それにしても、烈姉貴!よくがんばったね。 読んでる間、烈兄貴(こしたてつひろ先生)が変なところで脳内に蘇ってきて笑えました。あほか。 ところで、この本を伊丹市のあるカフェで読んでいたのだけど、それってまさに酒蔵のオフィスのあった場所で、その酒蔵のオーナーの名前も本書に登場していて、まさにこの場所ならではだったな!と偶然の符号一致に興奮してしまいました。 灘、伏見、伊丹、と酒どころに連続して住んできたけど、ほぼ酒飲めない私。 ただ、酒どころの人々のプライドと、酒の産むお金、人材招聘力が形成するサロンが存在する、文化の拠り所となる様をたくさん見てきたので、そう言う点でも感動を勝手に覚えました。
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