蔵(下) の商品レビュー
セリフに強い訛りがあ…
セリフに強い訛りがあるので、慣れるまでは読みづらい。雰囲気を掴む為に、私は先に映画を見てから読むことをオススメします。結末は素直にあなたの胸を打つこと間違いなし。
文庫OFF
烈を始めとする女性た…
烈を始めとする女性たちの生き様が胸を打ちます。
文庫OFF
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
家族とはなんだろう、と考えさせられた一冊。 舞台は明治後半から大正、昭和初期。 新潟の亀田にある、庄屋であり、酒造りをはじめてまだ二代目の田乃内家だ。 当時の人の規範となるのは、いかに代々の土地屋敷を守り、家族を保持し、ご先祖さまに恥ずかしくないよう生きるか、だ。 初めて読んだ宮尾登美子。 以前、姉が何かの宮尾登美子作品を読み、口調がうつりまくる、と言っていたが、私も案の定うつりまくりでした。 新潟弁なんも知らんねすけ、ひっで不思議なことらあん。(←多分絶対違う) 主人公は盲目の少女、烈。 美しく賢く、プライドの高い烈だが、なんといっても、この時代に、田舎で、女で、盲目なのだから、人生ハンデは凄まじい。 冒頭から、家ではたくさんの子供が夭折してきたことが語られる。 やっとぶじに育った烈の目が見えなくなるさまは、胸が苦しい。 家族は常に、人が増え、減っていくものだが、特にこの家では前半の人口減少が苦しい。 そしてついには、酒蔵二代目、一人息子の意造と、その一人娘の烈だけになってしまう。 そしてそこに、烈のおばで、亡くなった母の賀穂に代わって、烈の生涯の母代わりとなる佐穂がいる。 そこへ、意造の後妻でまだ若い、せきがやってくるも、せきの息子は事故死し、意造は心身を壊していく。 意造は酒蔵もしめ、縮み行く一族を静かに閉じようとする。 ここから、家庭は暗く重い幕の中に入っていくが、光は突然やってくる。 烈は酒蔵を継ぎたいと宣言して意造を説き伏せていく。 ここから始まるカタルシス!と思いきや、私は何度も、せきーーー(怒)!となったし、読者の10人中9・5人はそう思ったでしょ。 せきのまわりゴタゴタはイラっとしたけど、まあ、でもこう言うことってあるだろうなあとも思った。 人生っていろいろだもんなあああ。 家族って不思議なものだなあとしみじみわかった。 歳を重ねるとさらにそう思いそう。 怒涛の展開に突然のラストで驚いたけど、人物たちのその後がさらっと語られるエピローグには涙がぽろりと出てきた。 烈は生きて走り抜けた。 そして、どちらかといえば、読者は意造や佐穂の視点から物語を見てきたので、彼らのその行末にもジーンと感動が広がった。 こんな形があるんだなあと深い情に感じ入った。 (雪国モノはやはり耐え忍ぶターンが長いなあ。 この頃の新潟ってとてつもなく冬が長かっただろうなあ。 作中で烈が勉強に使った、新潟の地誌、北越雪譜に興味を持ちました。) それにしても、烈姉貴!よくがんばったね。 読んでる間、烈兄貴(こしたてつひろ先生)が変なところで脳内に蘇ってきて笑えました。あほか。 ところで、この本を伊丹市のあるカフェで読んでいたのだけど、それってまさに酒蔵のオフィスのあった場所で、その酒蔵のオーナーの名前も本書に登場していて、まさにこの場所ならではだったな!と偶然の符号一致に興奮してしまいました。 灘、伏見、伊丹、と酒どころに連続して住んできたけど、ほぼ酒飲めない私。 ただ、酒どころの人々のプライドと、酒の産むお金、人材招聘力が形成するサロンが存在する、文化の拠り所となる様をたくさん見てきたので、そう言う点でも感動を勝手に覚えました。
Posted by
上下巻一気に読んでしまう程 烈をはじめとする田乃内家の人々の それぞれの想いが新潟の澄んだ冷たい 空気を運んでくる様だ。 田乃内の女性達は、とても奥ゆかしいが 心の真の強さを心の奥に秘めている。 父親の意造の後妻のきりは、昔と言えど とても不憫で可哀想に思った。 烈は眼が見えなく...
上下巻一気に読んでしまう程 烈をはじめとする田乃内家の人々の それぞれの想いが新潟の澄んだ冷たい 空気を運んでくる様だ。 田乃内の女性達は、とても奥ゆかしいが 心の真の強さを心の奥に秘めている。 父親の意造の後妻のきりは、昔と言えど とても不憫で可哀想に思った。 烈は眼が見えなくても心の眼は誰にも負けず 新しい道を心眼で切り開き、自分の言葉を有言実行 し、短い人生ながらも強く太く最後まで生き抜いた。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
物語の後半では意造が病に倒れ、幼い丈一郎があっけなく死に、烈が14歳で完全に失明とさらなる不幸が田乃内家を襲う。大きなショックを受けながらも失明したことを周囲に気取られまいと振る舞う烈、それに気づいて駆け寄って抱きしめてやりたい衝動を必死に抑える佐穂、佐穂から密かに知らされて我が子の悲運に涙する意造。三者三様の、互いを思いやる深い悲しみようが胸にしみる。 それでも烈はその名の通りの気性の激しさで逆境に立ち向かい、意気消沈する父を励まして一度は廃業した蔵を再開して引き継ぐと言い出す。 それぞれの登場人物の心情がよどみない文章で細やかに描かれ、実在の家族の歴史を見ているような親近感を持って物語の世界に没入できる。新潟弁のセリフも大正末期から昭和初期の地方の暮らしを生き生きと伝えるようで、あまり読みにくさはない。 また、もう一人の主人公とも言える烈の叔母・佐穂は義兄の意造に思いを寄せながらも後妻にもなれず、烈の養育者として未婚のまま年をとっていく。自分を抑えて田乃内家を支える彼女の生き方は我の強い烈とは正反対だが、常に周囲に気を配り烈だけでなく意造やせきにとっても最善の道を探そうとする真摯な姿に感動を覚える。 やがて18歳になった烈は蔵人の一人に恋をし、父の反対を押し切って結婚に至るが、ハッピーエンドに見えて実はほろ苦い結末が待っている。その余韻も相まってずっしりと重い読後感があり、骨太な大河ドラマを見終えた時のような満足感が得られる屈指の名作。
Posted by
初めての宮尾登美子作品、小説というより脚本を読んでいるような気分になった。 長編でありながら、最後まで駆け抜けるように読みたくなる、壮大な作品だった。慣れない新潟弁、話の面白みがなければ途中で挫折しただろう。 人物の感情を掘り下げるというよりは、人間関係に焦点を当てて描いているよ...
初めての宮尾登美子作品、小説というより脚本を読んでいるような気分になった。 長編でありながら、最後まで駆け抜けるように読みたくなる、壮大な作品だった。慣れない新潟弁、話の面白みがなければ途中で挫折しただろう。 人物の感情を掘り下げるというよりは、人間関係に焦点を当てて描いているように見受けられた。 ハンデキャップを持つ者、裕福な家へ嫁ぐこと、後継者問題、後妻、1つの家庭の中で時の流れとともに変化するパワーバランスの移り変わりを、豊かな雪国の情景とともに描き出してある。 限りなく登場人物に寄り添っているものの、客観的視点から、まるでカメラワークのように物語を紡ぐため、たとえば父がせきに惚れ込む感情面の揺れ動きなどは、心情を掴み損ねることがあった。あくまで、見えている部分のみしか描かれていないため、映像化するのに向いている作品だと感じた。
Posted by
図書館で順番で借りられなかったので、仕方なしに下巻から読むことになってしまった。全く問題なく読み進められた。方言も自然と受け入れられるのは作者の技量によるものか?ハラハラしながら一気に読めた。最後に後日談でハッピーエンドが分かり作中人物なから嬉しくなった。
Posted by
最高でした! もう、最後の数ページ、「宮尾先生ー!!」って叫びたくなるような、すばらしさ。雪深い北陸の地で、それぞれの人生の辛さと闘ってきた人々が、最後に幸せをつかんだ姿に、心が晴れました。プロローグを読むと、烈はその後も苦労はしたようですが…でも、本編が終わった時点で、烈がとて...
最高でした! もう、最後の数ページ、「宮尾先生ー!!」って叫びたくなるような、すばらしさ。雪深い北陸の地で、それぞれの人生の辛さと闘ってきた人々が、最後に幸せをつかんだ姿に、心が晴れました。プロローグを読むと、烈はその後も苦労はしたようですが…でも、本編が終わった時点で、烈がとても成長していたので、そんなプロローグも穏やかな気持ちで読めました。烈はどんな苦労にも負けまい、苦労に負けず、しっかりと自分の人生を歩んでいくにちがいない、と読者に思わせる主人公になっていましたから。
Posted by
息子を失った意造は悲しみのあまり蔵を閉める決心をする。失明した烈は自分が蔵元になって蔵を再開すると宣言する。雪国の酒造を舞台に度重なる不幸に見舞われながらも意志の強さと聡明さでそれを克服する烈と、家のために己を犠牲にして耐え抜く控えめな佐穂という対照的な二人の女性がスゴイ。
Posted by
- 1