死生論

西部邁(著者)

• 販売会社／発売会社: 日本文芸社
• 発売年月日: 1994/11/07
• JAN: 9784537050356

商品レビュー

2022/05/22

著者は、自意識を失った後、肉体だけが生かされている状態を生きていると考えていない。あくまで自分が自分であると認識できるうちに、人生を終わらせたいと考えている。そのため、安楽死も尊厳死よりも自己認識のあるうちに簡便に死ぬことを薦めている。その理由は、いくら本人が尊厳死や安楽死を希望したとしても、それらを選択するのは、本人の親族だからである。尊厳死や安楽死を判断した親族たちが、あとでその判断に対して後悔の念を抱かないようにするために、簡便に死ぬことを選ぼうというのだ。
　著者は死について、宗教的な考えは持っておらず、あくまで死後は精神および肉体が無に帰すると考えている。そうなると、私はニヒルな感情をもたずにはいられなかった。
　本書では、生が死へ向かう具体的な過程を入念に思すいすることで、死への恐怖を乗り越えようと試みている。読んでいても自分も同じように死への準備ができるか甚だ疑問である。人生経験が浅いためかニヒルリズムからの脱却が難しい。それは今後の自分のテーマにしたいと思う。
　そのほか、死について、哲学、社会学など様々な視点から考察されており、そういうのが好きな方は、是非読んでみてほしい。

2012/06/07

(1999.12.07読了)(1994.11.22購入)
（「BOOK」データベースより）amazon
戦後半世紀におよぶ、生き長らえば良しとする「生命至上主義」を根底から疑い、現代における「死」を冥界の神秘のなかではなく、癌告知・尊厳死・脳死・臓器移植という具体的な問題のなかで考察し、「意志的な死=自殺」をも肯定しつつ、「生の輝き」を思想のレヴェルで思索した書下ろし最新特別評論。