究極理論への夢 自然界の最終法則を求めて

スティーヴンワインバーグ(著者), 小尾信弥(訳者), 加藤正昭(訳者)

• 販売会社／発売会社: ダイヤモンド社
• 発売年月日: 1994/10/27
• JAN: 9784478830079

商品レビュー

2017/06/24

アメリカでの超大型衝突器の建設を契機として、社会と科学をめぐって幅広い論考が繰り広げられている。

絶版なのは惜しいが、入り口である衝突器の話題が終わってしまっている今、出版ビジネスとしては仕方ないか。

衝突器のことはさておいても、内容は大変に興味深い。
究極理論そのものに関する言及は数式を用いず、言葉だけで意を尽くして、迫真に迫っている。

量子力学に対するゆるぎない信頼や実験をめぐる泥臭いトピックも印象的だ。

物理学者の秘めたる能力である原理、法則に対する妥当性を見極める力＝審美眼について書かれた第６章　美しい理論は本書の白眉だろう。宇宙が有効な教育機械として働いていること、科学者は美しい解答を持ちそうな問題を選ぶ傾向があること、基本的な問題を研究していることの三つを挙げている。

哲学が物理の発展のために妨げにさえなっていることを論証した部分もおもしろい。同じ根源を探求する異なる営みでありながら、哲学が人間という装置を介在させている限界ではないだろうか。