渇愛 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
興味深く読んだが、少し物足りなかった。渡辺受刑者の心理面を理解するために、たとえば臨床心理士や精神科、カウンセラーなどの知見から掘り下げてみることは出来なかったのだろうか。それはジャーナリズムの範疇を超えてしまうのだろうか。 一方で支援者の立花氏や草下氏のコメントは、様々な事件や加害者を見てきた人達だからなのか、社会やその他の事件の文脈の中で、渡邉氏と自分たちの関わりを位置付けるもので、奥行きがあり読み応えがあった。 渡邉氏の有罪は当然であり、本人が罪を理解出来ていない様子であることは被害者のことを考えても問題だが、著者のエピローグのコメントには、なぜか心がザラついた。 p252 彼女は、自分の「罪」を本当の意味で理解しないまま受刑者となったー私はそう思っている。 「詐欺は悪いことだとわかった」「税金を使って拘置所で暮らしているのは申し訳ない」そう 語ってはいたが、自分の行為が被害者の生活を一変させたこと、そして何より深く傷つけたことへの反省は、ついぞ彼女の口から聞くことはできなかった。それどころか、「私を買ったことも風俗のことも、それは許されることなのでしょうか」と話し「私だって傷ついた、ある意味で私だって被害者なのだ」と最後まで主張し続けた。 私はそのことが、とても哀しい。 渡邊被告は、8年半の服役を終えれば、社会に戻ることになる。しかしそれまでに、自分の”本当の罪”と向き合うことができなければ、本当の意味で更生することは難しいのではないか。もし、自分の罪が「法律の規範を逸脱した」ということのみだと認識したまま日常に戻れば、次は「法律の目をかいくぐって」他人を傷つけるような行為に及んでしまうかもしれない。 家族関係に恵まれなくても、真っ当な道を歩いている人たちは五万といる。だから渡邉氏は罪を償わなければならないし、被害者への弁済に取り組む責任がある。 しかし、家族に恵まれず、虐待されたり、教育を受けられなかった若い女性に、一部の社会の人間や男性がいかに凄まじく冷たいか、悪用をしていくか。その激しさや若年者の性を買う行為への罰則の非対称を考えずにはいられない。 渡邉氏の被害者が全財産を失い困窮している辛さに同情するとき、この国で性犯罪の被害者が同じだけの同情を社会全体として持ち得ているのか、と考えずにはいられない。 渡邉氏個人の罪を考えるのと同時に、社会のあり方からももう少しその背景を考える作品であってほしかったなという感想を持った。今も歌舞伎町にあつまるホスト狂いの女の子達を第二のりりちゃんにしないためには、何が必要なのか、と考える。
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誰かの小説紹介でこの本の存在を知り、その時ネットで知り合った友達が元ホストだったこと、最近進撃のノアちゃんというもとキャバ嬢にハマっていることがきっかけで夜職に興味をもったので、読みたくなって手に取った。 りりちゃんのことを詳しく知らなかったし、事件の詳細も知らなかったから、ま...
誰かの小説紹介でこの本の存在を知り、その時ネットで知り合った友達が元ホストだったこと、最近進撃のノアちゃんというもとキャバ嬢にハマっていることがきっかけで夜職に興味をもったので、読みたくなって手に取った。 りりちゃんのことを詳しく知らなかったし、事件の詳細も知らなかったから、まずこの事件や歌舞伎町のこと、夜の世界のことを知れてよかった。 「歌舞伎町の命は軽い」という言葉にそんな事ないと思った。命は平等に重いと思う。 ホストにハマるのは貢いでさえいれば、たとえ偽りでも「愛」と「居場所」をくれるからだと思う。 りりちゃんはお金欲しさに、言うなればパパ活のようなやり方で詐欺を働いたわけだけど、そのお金ホストに通い「愛」と「居場所」と「生きがい」を求めていたんだと思う。育った環境や取り巻く人がくれなかったそれを他人に求めてしまった結果なんだろうなと思った。本当に欲しかったものは「お金」じゃなくて「愛」だったんだと思う。 この罪は、「法律を犯した」ことではなく、他人の「助けたい」っていう善意を、嘘で固めた悪意で踏み躙って傷をつけた事だと思った。それが嘘じゃなくそこに本当の愛があったのなら詐欺じゃなかったかも知れない。善意を善意で受け取れたかも知れない。なんてことも思考した。 最後の方で「お金を渡して欲しくなかった」と話したりりちゃんの言葉がとても刺さった。1人で立てなくなるのはいつだって周りが常に支えてくれるからだ。人間が1人で立てることを知らないからだ。お金を渡す側も(誰かを助け続ける側)も、もしかしたらその人を狂わせてしまっているのかも知れないなと思った。 これは男女の話、恋愛の話じゃない。 人間の「愛」と「善意」の話。 めちゃくちゃタメになる本だった。
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最後までりりちゃんのことが理解できなかった。詐欺行為は認めているものの、反省や被害者への謝罪の気持ちはなく、自分も搾取された被害者だと言い出す始末。言うことがコロコロと変わってどれが真実なのかわからなくなる。 ただ、騙す方が悪いのは当然なんだけど、マッチングアプリの出会いから、僅...
最後までりりちゃんのことが理解できなかった。詐欺行為は認めているものの、反省や被害者への謝罪の気持ちはなく、自分も搾取された被害者だと言い出す始末。言うことがコロコロと変わってどれが真実なのかわからなくなる。 ただ、騙す方が悪いのは当然なんだけど、マッチングアプリの出会いから、僅か一週間で大金を渡してしまうのも、ちょっとどうなのとは思ってしまった。 りりちゃん、支援者達との関係も壊れてしまって、ちゃんと更生していけるのか気になるところ。
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筆者自身が客観性を失い、りりちゃんに魅了されていく様が描かれていて非常に興味深い内容でした。 被害者意識が強く、加害者意識を持てない子っているんですよね。無意識のなかで鈍感であろうとして、気づけないふりをする。鈍感であることで自分の精神を保とうとするというか。彼女の防衛本能のよう...
筆者自身が客観性を失い、りりちゃんに魅了されていく様が描かれていて非常に興味深い内容でした。 被害者意識が強く、加害者意識を持てない子っているんですよね。無意識のなかで鈍感であろうとして、気づけないふりをする。鈍感であることで自分の精神を保とうとするというか。彼女の防衛本能のようなものかもと。 ただ、彼女がやったことは悪であることに変わりないです。後半にある『困難を抱える人を型にはめたのであればそれは「悪」』という話は、まさしくそうだと思う。 正直なところ、彼女の生い立ちや家族のことをもっと深掘りして知りたかったところはあります。 彼女を「頂き女子りりちゃん」にしたのは周囲の人間によるものが大きいのだけど、その根っこにある、もっと幼い頃の小さな彼女を救う手立てがなかったのかと思うと 胸が痛い。
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りりちゃん像を記者さんの目線で記者さんの言葉で書かれているそのドキュメンタリー性が良い。 この書籍に限らず歌舞伎町のよもやま話が割と好き。どん底からたたき上げで圧倒的なカリスマになる人も居るかと思えば、見る影もないほどに落ちぶれる人も居る。愛憎が利用されて大金が動く様は「ウルフオ...
りりちゃん像を記者さんの目線で記者さんの言葉で書かれているそのドキュメンタリー性が良い。 この書籍に限らず歌舞伎町のよもやま話が割と好き。どん底からたたき上げで圧倒的なカリスマになる人も居るかと思えば、見る影もないほどに落ちぶれる人も居る。愛憎が利用されて大金が動く様は「ウルフオブウォールストリート」を観ているかのような絢爛で危うい面白さがある。 この本は良くも悪くもりりちゃんに寄った内容となっている。筆者が自認するようにりりちゃんに強烈に惹きつけられて、筆者が同性であることも相まって、本の始まりの方では被害者を軽視気味に捉えており、筆者はりりちゃんの味方ともとれる描き方をしている。 中盤で被害者に取材したところから筆者も読者も被害者目線を知ることができてりりちゃんの罪を意識する。しかし筆者は被害者目線よりもりりちゃん目線により多くの文量を割いている。読み終わった感想としては私もやはり、りりちゃんに肩入れした感情を抱いた。 ただこれは筆者に問題があるというよりは、マスメディアで被害者目線が報道されてきた分、需要としてりりちゃん目線の方が求められているというのが一点。さらにはりりちゃんの持つ引力に筆者でなくとも、どれほど中立を気取った人物でも抗えなかったのが理由だと想像する。 この本がりりちゃんに割いている文量がそのままりりちゃんの引力を表していると思う。
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一気に読んでしまった。 私がタイムラインに流れてくる「ごくちゅうにっき」を読んで軽い気持ちでいいねを押してた裏でこんな取材が行われていたとは… 記者の方は終始フラットな書き振りだけど、ご本人が書いている通り、りりちゃんに心を持っていかれそうになっている感じが伝わってノンフィクショ...
一気に読んでしまった。 私がタイムラインに流れてくる「ごくちゅうにっき」を読んで軽い気持ちでいいねを押してた裏でこんな取材が行われていたとは… 記者の方は終始フラットな書き振りだけど、ご本人が書いている通り、りりちゃんに心を持っていかれそうになっている感じが伝わってノンフィクションだなあ〜!って思った。 りりちゃんは極端な例だけど、彼女が複雑で時に矛盾した人間性を持っているのと同じで、私たちも一貫した精神で一貫した人生なんて歩めないと思う。どんなきっかけで、どんな人格が、どんな風に助長されるか分からない。事件で一躍有名になった彼女にはたまたま人に好かれる才能があって、人に読ませる文章を書く才能があって、ブランディングが上手で、メイクがうまくて、愛情を求める女の子だっただけなのかもしれない。 彼女が更生する兆しをあまり感じられない終わりだったけど、それは言うまでもなく彼女の人生の複雑さに起因してるし、これから彼女が世間から忘れられていって語られなくなった後、彼女はやっと自由になれるのかもしれないと思った。
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あっという間に読んだ。りりちゃんも愛着障害なのかな。母親との関係が充分だったらあのまにゅは別の役にたったのかな。対象をよく見てフォローまでして、ってなかなかやり手。
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会うたびにコロコロと印象の変わるりりちゃんの取材をされるのは大変だったと思います。 被害者の方は大変だと思いますが、すべてを渡してしまう心境は理解ができなかった。冷たいようですが、自分で選んで決めたことなんじゃ…と思ってしまった。 未知の世界を覗かせてもらいました。
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著者の綿密な取材のおかげで、複数の人物視点での今回の一連の事件の様相が記されている。 りりちゃん視点での頂き行為、被害男性視点での詐欺行為。 りりちゃん視点での歌舞伎町に辿り着くまでの記憶と母親から見ていたりりちゃんの様子。 詐欺で大金を詐取したのは事実だが、りりちゃん本人は自...
著者の綿密な取材のおかげで、複数の人物視点での今回の一連の事件の様相が記されている。 りりちゃん視点での頂き行為、被害男性視点での詐欺行為。 りりちゃん視点での歌舞伎町に辿り着くまでの記憶と母親から見ていたりりちゃんの様子。 詐欺で大金を詐取したのは事実だが、りりちゃん本人は自分も性の対象にされた被害者なのだ、と。認識が変わっていくのだろうか・・。
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面白かった,理解できない部分が多過ぎて興味深かった。 元々、詐欺事件らしいって位で事件の概要はあまり知らなくてただ、頂き女子って言葉だけ覚えてた。 たまたま本屋で見かけて、ノンフィクションだし読んでみようかな、程度で。 結果、読んで良かったと思った。 ネットで事件の事調べながら、...
面白かった,理解できない部分が多過ぎて興味深かった。 元々、詐欺事件らしいって位で事件の概要はあまり知らなくてただ、頂き女子って言葉だけ覚えてた。 たまたま本屋で見かけて、ノンフィクションだし読んでみようかな、程度で。 結果、読んで良かったと思った。 ネットで事件の事調べながら、読んだ。 自分の中のものさしを、人に振り切った子だったのかなって感じた。 道化師みたいな感じ。 理解が出来ないから、興味がわいた。 面白いなって思った。 マニュアルは、純粋に凄いなーって思う。 人の事、よく見てるなって言うか。 それが、ホストの人からやられてた事なのであれば、ホストの人って凄いなぁって。 この子の頭の中は到底理解出来ない訳だけど、同じ位に出会って数日の人に、困ってるから、でお金出せる人の頭の中も自分には理解出来なかった。 最後の方に出てきた信頼できる人ってのが、一体どんな感じの人だったのか。 気になる。 今まで助けてくれた人達を切ってまでその人の手を取るまでに至らせたものって何だったのか。 理解出来ない世界が広がっていて、一気に読めた。 面白かった。
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