踊れ、愛より痛いほうへ の商品レビュー
母親の堕胎について子どもの頃に聞かされると多少なりともショックを受けるのはわかるが(むしろそれが他人からならなおさら)それが、自分の存在を揺るがす様な悪夢につながる、という視点がまじで共感できなかった。
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アンノと葉山の掛け合いは特に印象的だった。アンノの好奇心は世界を広く知りたいだけではなく、「自分が生きていける場所」や「生きていてもいいと思える世界」を探る動きに見えた。その時期、葉山の隣にいることがそれを保証していたのかもしれない。だから二人の会話は軽口でも戯れでもなく、生き延びるための確かめ合いのように響いた。 向坂くじらさんの文体は、物語全体に重さと陰影を与えている。その重さは不幸を演出するためではなく、痛みや執着の描写に倫理と敬意を保つためのものだと思う。どの登場人物にも血の巡りを感じたのは、向坂さんが彼らの歪みに最後まで寄り添っていたからだと思う。 アンノは踊りから離れていたのではなく、ただ踊らないまま生きていただけだと思う。身体は忘れない。筋肉も呼吸も、視界の端の光の取り込み方さえ、踊っていた頃の「瞬間」を記憶している。だからアンノは踊っていないように見えても、ずっと踊りと隣り合わせにいた。本人が気づかないまま踊っている場面すらあったのではないかと感じた。 タイトルについては、「自分に向けられている言葉」として受け取った。劇中でアンノは「踊って」と求められていたけれど、「生きて」ということかも、と解釈する。「愛より痛いほうへ」とは死を選べという意味ではないはずだ。むしろ、生きること自体が痛い。痛みを引き受けたまま生き続けることを肯定している。物語には決別も死別もあったが、その中でアンノは生きる側に残り続けている。
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淡々とした穏やかな文章で痛みの輪郭をくっきり浮き立たせられるみたいな本だった。私は彼女の踊りを見たことがないけど、彼女の踊りを知っているような気がした。 【読んだ目的・理由】芥川賞の候補作が読みたかったから 【入手経路】買った 【詳細評価】☆4.2 【一番好きな表現】流線形の犬...
淡々とした穏やかな文章で痛みの輪郭をくっきり浮き立たせられるみたいな本だった。私は彼女の踊りを見たことがないけど、彼女の踊りを知っているような気がした。 【読んだ目的・理由】芥川賞の候補作が読みたかったから 【入手経路】買った 【詳細評価】☆4.2 【一番好きな表現】流線形の犬のように走る体を、かぎりない遅さへと引き延ばすことが、そのときアンノの踊ることだった。(本文から引用)
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実家の庭に張ったテントでたてこもり生活をしている二十歳のアンノ。 母親に対してわりと一方的な確執を抱きつつも実家を離れることはしないあたりが、彼女の未熟さを粒立てていて面白い設定だなと思った。 アンノは、付き合っている明宏の祖母である"あーちゃん"の家に明宏と...
実家の庭に張ったテントでたてこもり生活をしている二十歳のアンノ。 母親に対してわりと一方的な確執を抱きつつも実家を離れることはしないあたりが、彼女の未熟さを粒立てていて面白い設定だなと思った。 アンノは、付き合っている明宏の祖母である"あーちゃん"の家に明宏と別れてからも出入りしていて、自分の本の置き場所としても利用させてもらっているが、やがてあーちゃんの半ば強制的な引っ越しや、自宅の庭を駐車場にするためのテント立ち退き問題などが起きて、不満と安寧の生活はやがて終わりを迎える。 俗に言う「キレる」に似た感情を「割れる」というオリジナルの表現にしたり、アンノという主人公の個性が随所に感ぜられる作品だった。
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気のせいか、最近の女性作家(特に新しめの)の作品って、一般社会に馴染めずに零れ落ちてるヒロインの物語が多くないですか?
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主人公が幼い頃はまだ大丈夫でも、成長するにつれてはみ出し、いられる場所が少なくなり、行き場を失う様子は悲しい。 気持ちがたかぶり、自分が割れてしまう感覚。おさえようにも、どんどんと中身があふれ出す感じが伝わって苦しくなった。 詩的で繊細な文章が良い。
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芥川賞候補作 親子でも感覚や価値観が違うと分かり合うことが難しく、お互いの心を守るために距離を取る必要がある。 世界にはさまざまな考え方を持つ人がいるので、少しでも分かり合えたり、心地よい時を共有できる人に、アンノがこの先出会えたら良いなと思いました。 https://opac...
芥川賞候補作 親子でも感覚や価値観が違うと分かり合うことが難しく、お互いの心を守るために距離を取る必要がある。 世界にはさまざまな考え方を持つ人がいるので、少しでも分かり合えたり、心地よい時を共有できる人に、アンノがこの先出会えたら良いなと思いました。 https://opac.shodai.ac.jp/opac/volume/560512?current=1&q=%E8%B8%8A%E3%82%8C%E3%80%81%E6%84%9B%E3%82%88%E3%82%8A%E7%97%9B%E3%81%84%E3%81%BB%E3%81%86%E3%81%B8&total=1&trans_url=%2Fopac%2Fsearch%3Fbase_url%3Dhttps%253A%252F%252Fopac.shodai.ac.jp%26count%3D20%26defaultpage%3D1%26defaulttarget%3Dlocal%26order%3D%26q%3D%25E8%25B8%258A%25E3%2582%258C%25E3%2580%2581%25E6%2584%259B%25E3%2582%2588%25E3%2582%258A%25E7%2597%259B%25E3%2581%2584%25E3%2581%25BB%25E3%2581%2586%25E3%2581%25B8%26searchmode%3Dnormal
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またタイトルに惹かれて初めての作家さんに出会えました。橋の上で踊るアンノの描写から始まる物語。なんだろう…捉えどころのないように思えてイメージはクリアに浮かんでくる。そして読みやすい。私の人生でアンノほどの個性の持ち主は出会わないんじゃないかと思う。この先のアンノは どうなるのか...
またタイトルに惹かれて初めての作家さんに出会えました。橋の上で踊るアンノの描写から始まる物語。なんだろう…捉えどころのないように思えてイメージはクリアに浮かんでくる。そして読みやすい。私の人生でアンノほどの個性の持ち主は出会わないんじゃないかと思う。この先のアンノは どうなるのかな?
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生きづらさと それを物ともせずに、貫く魅力を感じた。 彼女の周りも彼女の魅力に気がついている。 てすが やっぱり 私なら楽に生きたい。 そして彼女なりにこれからの生き様を 踊りで表現して欲しい
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矛盾の上に成り立つ営みに私は折り合いが付けられず頭が割れそうになる。瞬間の中に特有なモノが見えるからと言って先回り出来るような便利なモノじゃない。 ここではないどこかへ行きたい。往きたい。愛より痛いほうへ。 主演は當真あみさんがお似合いだと思う。
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