スノードームの捨てかた の商品レビュー
楽しみにしていた、くどうれいんさんの短編集。文章がみずみずしくって、繊細な心が表現されていました。短歌もエッセイも小説も絵本も書いているれいんさん。言葉の扱い方が上手なので自然に引き込まれました。そして、何かを捨てる出来事をうまく切り取って表現している短編集でした。物語の始めと終...
楽しみにしていた、くどうれいんさんの短編集。文章がみずみずしくって、繊細な心が表現されていました。短歌もエッセイも小説も絵本も書いているれいんさん。言葉の扱い方が上手なので自然に引き込まれました。そして、何かを捨てる出来事をうまく切り取って表現している短編集でした。物語の始めと終わりではすっかり変わっている心境の変化が、とても興味深かったです。 「スノードームの捨てかた」 自分の意思と違った別れの始末の付け方。誰かに何かがあればすぐに集まってくれる友人たちとの時間。子どもみたいなことをやっているうちに、心が落ち着くことってあるような気がしました。余計な気遣いせずにいられる関係は大切にしたいですね。 「鰐のポーズ」 ヨガ教室で親しみやすくなんでも話せそうな人は、自分の思うままに生きている人でした。自分の気持ちをそのまま伝えても、実は思うように伝わらないのかもしれないと思いました。 「川は覚えている」 捨てたい指輪。拾っているマッチ。夜の川で出会った二人はこれからどうなるのか、気になりました。最後の一文が、とてもよかったです。 「背」 自分の骨が下から積み木のように重なるところを想像しながら立つわたし。見続けることよりも見られ続けることの大変さ。好感をもっていた人だからこそ、簡単に言ってほしくなかった気持ちが、すごく伝わってきました。 「湯気」 彼女の書くしんにょうが変な形で気になっている彼氏。彼女に思わぬことを言われ、この後どうなったんだろうと、とっても気になりました。 「いくつもの窓」 心身が病む前に病めた仕事。その後にめぐらす思い。祖父のちぎり絵を額装したあとにめぐらす思い。何かをつかむきっかけになることは、意外なところにあるのかもしれないと思いました。
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とても不思議な気持ちにさせられました。喜怒哀楽がそれぞれの短編に揺り動かされ落とし所が見つけられない気持ちにもさせられました。面白かったです。
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何かを得ようとすれば 何かを捨てなければならないもので 指輪だったり、仕事だったり 大事なものを手放すことは 新しいことが また始まる第一歩なのかもしれない。 どこにでもありそうな出来事や 小さな悩み、戸惑いなんかが 大げさにならずに淡々と綴られていて どこか物足りさが残るけれど...
何かを得ようとすれば 何かを捨てなければならないもので 指輪だったり、仕事だったり 大事なものを手放すことは 新しいことが また始まる第一歩なのかもしれない。 どこにでもありそうな出来事や 小さな悩み、戸惑いなんかが 大げさにならずに淡々と綴られていて どこか物足りさが残るけれど そこが、きっと魅力なのだろうな。
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何も起きていないように見えて、少しずつ変わっている。 大事件や衝撃的な事実が発覚!みたいな展開にはならないけど、主人公の心持ちは、最初と最後で少し変化している。 それを描くのが、くどうれいんさんはとても上手い。 どの短編も、きっとすぐに忘れてしまう。でも、心のどこかでずっと残っ...
何も起きていないように見えて、少しずつ変わっている。 大事件や衝撃的な事実が発覚!みたいな展開にはならないけど、主人公の心持ちは、最初と最後で少し変化している。 それを描くのが、くどうれいんさんはとても上手い。 どの短編も、きっとすぐに忘れてしまう。でも、心のどこかでずっと残っていそう。 そしてもう一度読み返して、「そうそう、これだった!」と思えるような。 誰かの日々の些細な出来事を、こんなにもくっきりと切り取って、素敵な言葉に変えられるれいんさん、すごい!
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二週間前に取り置きしていた本を購入しに書店へ。サイン入りの本で、誕生日前日に自分へのご褒美。 それからやっと読むことができた。全六編からなる短編集。 「スノードームの捨てかた」三人の学生時代の同級生たちが、夜中に公園で穴を掘る話。(笑)30代にならではの悩みやすれ違いを描いていて...
二週間前に取り置きしていた本を購入しに書店へ。サイン入りの本で、誕生日前日に自分へのご褒美。 それからやっと読むことができた。全六編からなる短編集。 「スノードームの捨てかた」三人の学生時代の同級生たちが、夜中に公園で穴を掘る話。(笑)30代にならではの悩みやすれ違いを描いていて、私もいずれこうなるのかなあと少し悲しくもあり、楽しみにもなった。 「鰐のポーズ」不倫の話ではあるけれど、言葉にできない気持ちの揺れ動きを身の回りにあるものを仔細に表現することで、その心情が浮かび上がってくる気がする。 「川はおぼえている」マッチ拾いの青年と出会う話。なんでも物語にしたくて、全ての行動を意味付けしながら生きている。最後の終わり方にキュンとした。 「背」なんだかすごく不思議な話だった。美術館に勤める女性がしまうまの目で1日同じ場所で同じ展示を警備する。自分だったらじっとしていられない。けど、自我を殺してお客さんを欺けた時少し達成感を味わえそうな気もする。 「湯気」結婚間近の彼女の書くしんにょうがきになる。という話。結婚は、少しの違和感が引っかかって、その後に離婚につながることもあるというようなことを暗示しているのかな、と思ったり。結婚なんてまだまだ想像もつかないけれど、結婚した時に思ったことはなるべく言ってほしい!切実に思った。 「いくつもの窓」亡くなったおじいちゃんの山の絵を額に入れるという話。そんな自分は仕事を辞めて、アルバイトとして働いている。この本を今日読んで良かったと思うのが、6月30日の話が出てきたこと。夏の大祓という、一年の半分の日で、京都では水無月という三角形の和菓子を食べることが風習であるそうだ。これを見て、居ても立ってもいられず、和菓子屋で探し回ったがなかった。結局、シュークリームを買うことにした。家族も喜んでくれたし、その後れいんさんの別の本も買えたし、良かったかな。その本も楽しみだ。次は、水無月、食べたい。風習に倣ってご飯や日本のものをいただくことは、日本という国を生きているかんじがして好きだ。れいんさんは、料理も好きだし食べることも好きだ、ということが文章から伝わってきていい。私も料理の感想をあんなにうっとりとするような文でかけたら良いのに。頑張ってやってみたい!
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星の数つけるの難しいなぁ。 限りなく4なんだけど、短編とはいえどの作品も中途半端というか、え、ここで終わり?という感じの終わり方で個人的に心残り。 一作くらいちゃんとした終わりを読んでみたかったかも。 でも流れるような文章は、とても良かった
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ままならなさを感じた。 ままならないからこそ、愛しい日常があることも。 ずっと読みたいと思ってたくどうれいんさんの 初めての本は小説。 私は「湯気」が好き。 大体の日常生活ってこういう質感、温度感だなと思う。 小説のようにすっきりする終わりもない。 余韻の残し方とかが日常のそ...
ままならなさを感じた。 ままならないからこそ、愛しい日常があることも。 ずっと読みたいと思ってたくどうれいんさんの 初めての本は小説。 私は「湯気」が好き。 大体の日常生活ってこういう質感、温度感だなと思う。 小説のようにすっきりする終わりもない。 余韻の残し方とかが日常のそれで、凄いなと思った。 そうか、わたしにとってこれは日常を映した本なのか。 ままならないなあ。 でもそんな日々が人間らしく美しいと思えた。 わたしの人生も振り返れば美しいのかもしれない。
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この本の感想をここに率直に書くのは、ちょっと個人的すぎる。そんなふうに思うくらい、気持ちの温度感が近くなった。 30代前後の対人関係や感覚への、解像度の高さにびっくりする。 文章がとても心地よく、くどうれいんさんのエッセイを読んでいる時とも近い感覚。 誰にも吐き出せなかったことを...
この本の感想をここに率直に書くのは、ちょっと個人的すぎる。そんなふうに思うくらい、気持ちの温度感が近くなった。 30代前後の対人関係や感覚への、解像度の高さにびっくりする。 文章がとても心地よく、くどうれいんさんのエッセイを読んでいる時とも近い感覚。 誰にも吐き出せなかったことを登場人物が言葉にしてくれたり、感じたことのある気持ち悪さと近しいもの(同じ内容や体験という意味でなく)が抱えられていたり。 それから、特に「鰐のポーズ」の食の表現がすごく好きだった。 言葉を噛み締めながら、ゆっくり、物語について、いまの自分や身の回りのことについて考えたくなる。
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短編集 情景描写読み飛ばしがちなんだけど、れいんさんの描写がいつもすごく素敵でじっくり読んでしまう 美しすぎず等身大で爽やか 人間の皮肉さズルさを書いてたりもするけど、どこか優しく品を感じる 個人的にはもっと抉ってくれてもいいのもあったけどこれがくどうれいんさんらしさなのかも 「...
短編集 情景描写読み飛ばしがちなんだけど、れいんさんの描写がいつもすごく素敵でじっくり読んでしまう 美しすぎず等身大で爽やか 人間の皮肉さズルさを書いてたりもするけど、どこか優しく品を感じる 個人的にはもっと抉ってくれてもいいのもあったけどこれがくどうれいんさんらしさなのかも 「いくつもの窓」は仕事とプライベートの境目なく働いていた、そう働くのも楽しかった人にとっては共感しつつ刺さる
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
くどうれいんさんの短編集。たいへん読みやすく、会話はコミカルで、どことなく普段のエッセイを小説として膨らませたかのような、親しみのもてる文章だった。 おシャインさま、デリしぐさ、ぎょいー(御意)、「なんかいまの名言っぽい」「パルコ?」とか、サブカルみのある語録がおもろい。 『川はおぼえている』という13ページほどの作品がとくに好きだった。指輪を捨てそびれている石田まみ子と、そこにやってきた物語の話。不審者もとい宇津木さん、こんなこと言われたら好きになってしまうでしょうが。
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