地図と拳(上) の商品レビュー
史実と創作の見事な融合と言ったらいいのでしょうか、圧倒的な臨場感に引き込まれます。近代史を再勉強したくなります。頻出する中国語読みが気になって確認のためにページを戻る回数が多くて、読み進めるのに時間が相当かかるのが難点。いざ下巻へ!
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小川哲の直木賞受賞作。 満州というかつて様々な国の思惑が重なった地図に、様々な背景の人間が心を描く群像劇。 全部読み終えた今、高木が小刀を頑なに手放さなかったのは何故だろうと考えてみる。小刀が指す意味は『拳』であり、つまり戦争である。高木は葛藤の末、その拳を手放さなかった故に...
小川哲の直木賞受賞作。 満州というかつて様々な国の思惑が重なった地図に、様々な背景の人間が心を描く群像劇。 全部読み終えた今、高木が小刀を頑なに手放さなかったのは何故だろうと考えてみる。小刀が指す意味は『拳』であり、つまり戦争である。高木は葛藤の末、その拳を手放さなかった故に細川が命の危険に陥るものの、細川はその拳を回収することに成功する。 この物語において、戦争は決して肯定されるものではないが、その拳がなければ高木が決死の戦線に向かって死線を守ったように、今がこの形で存在していたかはわからない。戦争において、拳は必ず必要なものなのだ。 しばらくして、その細川によりオケアノスの意味を持つ名前を授かった須野明男が生を受け、明男はその小刀に興味を持つものの、母の恵子により取り上げられてしまう。 つまり、明男が請け負った使命は、拳を使用せずにオケアノスを目指すことだ。オケアノスを発見することはかのアレキサンダー大王すら成し遂げていない偉業であるにも関わらず、その手段である拳は取り上げられてしまった。そこで、明男は次なる手段として『建築』を習得していくことになる。 以上の流れから、小刀とは拳、つまり戦争の象徴であり、小刀を持たない明男は、戦争とは無縁の、平和を建築するための人物として育っていくこととなる。 さて、明男はこの惨劇の製造機である戦争のその先に、平和を築くことはできるのだろうか―――
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第168回(2022下)直木賞。上下で700頁を超える長編。日清戦争後から終戦まで、満州に造ったとする理想郷の統治。その意味でSF。速いテンポで主人公も明確に展開するので、サクッと楽しんで下さい。
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初めは少しごちゃごちゃするけど、後半からスピード感がすごい。人物たちがどんどん動く。 下巻が読みたくなる。
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歴史の勉強にもなるし、面白い これは映画化するんでは?とか考えながら読みました 小川さんの他の作品と雰囲気が違う こんな歴史物も書けるなんて本当にすごいです
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途中から急激に面白くなっていく印象 明男と丞琳の出会いとか、細川の思想とか。 満洲が今後どうなっていくか、関東軍がどんなことをするか、という大まかな歴史を知っているからこそ、副題の年号が1932,1937,1941年に近づいていくほどドキドキした。 今後満洲がどうなるのか、細...
途中から急激に面白くなっていく印象 明男と丞琳の出会いとか、細川の思想とか。 満洲が今後どうなっていくか、関東軍がどんなことをするか、という大まかな歴史を知っているからこそ、副題の年号が1932,1937,1941年に近づいていくほどドキドキした。 今後満洲がどうなるのか、細川や明男、丞琳やクラスニコフはどうなるのか、下巻も見守りたい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
満州をめぐる戦争の話、群像劇かつ年代がコロコロ変わっていくので場面を理解するのが難しかった。おまけに固有名詞は中国語読みなので人の名前を覚えるのが難しくて仕方なかった。 内容としてはとにかく救いなく、当時の日本のイカれ具合が伝わってくる。1932年春などで登場する孔明に憧れていた少年の話などはより一層残酷さを読者に感じさせてくる。 上巻だけで見るとまだ細川であったりの思想がはっきりとせず目指す先がぼんやりとしてる印象を受けた。地図もあまり関係して来ずその点は下巻に期待。
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とても面白かった。 登場人物それぞれの視点で戦争が進んでいくので、1人の人物に肩入れせず客観的に戦争が考えられる物語。
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当時の時代背景やそれに伴う人間心理が描かれている。千里眼などの弱SF要素が加わることで、現実にあったはずの当時の状況に対する認識の錯誤が面白く読めた。 自分には難しいところが多々あったため、下巻で自分の中で上手くまとめたいと思った
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話の展開が遅くてちょっとしんどい感じがあります。外国人の名前がなかなか覚えられません。かなりしんどい状態です。ただ歴史にはとても興味があり、日露戦争満州事変日中戦争など興味はとてもあります。いかんせん、ストーリーがなかなか進みません。
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