八月の母 の商品レビュー
9月になったのに『八月の母』です。予想はしていたものの、いやはや連日の猛暑同様、肌にまとわりつくような湿度で、苦しくしんどい読書でした。 この物語は、実際に2014年8月に起きた「愛媛県伊予市の市営団地での少女集団暴行死事件」に端を発する作品とのこと。物語では、母と娘の業や...
9月になったのに『八月の母』です。予想はしていたものの、いやはや連日の猛暑同様、肌にまとわりつくような湿度で、苦しくしんどい読書でした。 この物語は、実際に2014年8月に起きた「愛媛県伊予市の市営団地での少女集団暴行死事件」に端を発する作品とのこと。物語では、母と娘の業や呪縛の壮絶さが、1977年〜2013年の間、親子三代にわたって断ち切れない負の連鎖として描かれます。 母性の役割が「受容・安心」だとしたら、父性は「自立・啓発」? どっちも子どもの健全な成長に必要と思いますが、バランスが取れた関わりができているなら、性別関係なくシングルでも子どもの心が安定し、良好な親子関係を築けると思うのですが… でも、こんな期待や願いは、この物語を読み進めるほど綺麗事の理想論のように虚しく響き、やるせなさが増します。 女、母、娘であることの呪縛だけでなく、登場する男や土地に鎖で繋ぎ止められ、囚われ続け、抗うことのできない地獄の痛みに、重く深い息を吐くばかりです。 40ページにも及ぶエピローグに辿り着き、救いと希望をもらった気になりました。親は、自分の物語を子どもに負わせちゃいけませんね。そして、断ち切ることが救いになる絆もあるんですね。 長い年月の多層的で断ち切れない負の連鎖へ、大胆に楔を打ち込んだ物語でした。
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世代を超えて、断ち切ろうとしても切れない呪縛のようなものの存在が読んでいて心苦しかったです。愛情表現の仕方もすごく難しいと感じました。登場人物達の個性がリアルで、ページを捲る手が止まらなかったです。面白かった!
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イノセントデイズ再来?!のキャッチコピーで読みましたが、初めから最後までイヤミスであり少しズレを感じた。 (因みにイノセントデイズは★5) 調べたら愛媛県で実際にあった少女暴行殺人事件を元にしてるらしい。 祖母から母へ、母から娘へといったネグレクトの連鎖のような話。 実話だからこ...
イノセントデイズ再来?!のキャッチコピーで読みましたが、初めから最後までイヤミスであり少しズレを感じた。 (因みにイノセントデイズは★5) 調べたら愛媛県で実際にあった少女暴行殺人事件を元にしてるらしい。 祖母から母へ、母から娘へといったネグレクトの連鎖のような話。 実話だからこそ救いがない感じがリアリティがあり、ドキュメンタリーに近いかと。 事実は小説よりも奇なりですね、、
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ラストに向けて衝撃的で残酷な描写が続いて苦しくなったり、悲しくなったり、感情を激しく揺さぶれました。 母と娘の角質、母性とは、男と女の溝、暴力、優しさ、色んな感情がかき乱されて最終章に向けて涙が抑えられ無かった。 特に紘子が殺されたていくのに、他人の陽向を守ろうする儚げさとその...
ラストに向けて衝撃的で残酷な描写が続いて苦しくなったり、悲しくなったり、感情を激しく揺さぶれました。 母と娘の角質、母性とは、男と女の溝、暴力、優しさ、色んな感情がかき乱されて最終章に向けて涙が抑えられ無かった。 特に紘子が殺されたていくのに、他人の陽向を守ろうする儚げさとその母のエリカを他人でありながらもママと呼び、本当の母との角質でエリカの家でその角質を埋め合わせしようとしたり、そして最後死ぬ間際に、電池が切れていたにも関わらず携帯に電源を入れ本当の母親に電話しようとするシーンでは涙が抑えられ無かったです。 また実際の事件がベースとなった作品と読了後しり、余計に悲しくなった。 重い作品で色々考えさせられたお話でした。
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美智子はエリカをエリカは陽向を妊娠し産もうと決意した時、この子を幸せにしてあげたいとこの子と幸せになるんだと思ってたはずなのに 現実にもそう願って産んだ子を虐待する親はごまんといる。 例えシングルになっても立派に心豊かに子どもを育てあげる母親父親もいる。 その違いは一体なんなんだろう。母性なのか? 美智子もエリカも渇望していたものはついぞ与えられず母親になってしまった。満たされていないものを人にはあげられないということなのか。 理想の母親像はあれど、なり方はわからなくて、気づけば少しずつずれていって、そのずれに気付いた時にはもう手遅れで。 そこで覚悟を決めて一からやり直そうと思えればよかったけど、幼い頃から染み付いてしまった諦め癖が信念に負けてしまった二人の母親。 最後の最後まで人にも環境にも恵まれずにきたが、その選択をしてしまったのも結局は二人自身で。 血は繋がらずとも陽向の幸せを最期まで祈った紘子のそれは母性だったのか。自分の幸せをずっと頑なに信じて背を押してくれた紘子の存在は大きい。だからこそ自分のしたことが許せない陽向。つらいなぁ。幸せになった自分を見せたい人はもうこの世におらず目を見て顔を見て心から謝りたくても謝れないのは遺恨が残ってしまうよね。 だけれど最後きっちりと母と決別することを選べた陽向には紘子が望んだようにこのままずっと幸せであれ紘子のぶんもと願ってしまう。 恭介お兄ちゃんは本当にヒーローだったなぁ…… 本当に真理だと思う 生きたいように生きるために行動を起こす。それしかないのだ結局。幸せに生きたいなら尚更。ちゃんと道は用意されているはずだから。
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螺旋階段のくだりで今まで言葉にできなかったけど感じていたものはこれかもしれないと思った 知りたくなかったことまで知ってしまった 見ないようにして、普通になりたかったのに、この本を読んでしまったことで、自分が見てみぬふりをしているのを自覚させられた
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「イノセントデイズ」を読了した時と同じ しばらくボーッとしてしまった あと文章の書き方がなんか好きでハマった この人の作品読んでる時は 気が散るとかなくて ずっと没頭できるのなんで また新作出たらチェックします!
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前作の、高校野球の小説とは大違いの、世代を超えた負の螺旋から逃れる、逃れられない、の因縁果で重い作品でビックリしました。ミステリー的な要素はほとんどなくて、最後まで読み通してみて振り返るとジンワリとした味わいがあります。
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この作品を、「いい!」って表現して良いのか迷います。誰にも共感できず、「なんで、なんで」という展開。誰が主人公なのか、誰が被害者なのか読み進めていきました。 螺旋のように続いていくつながりを、被害者や被害者の家族、夫、父親の愛情と言葉が断ち切ってくれます。(この人が父親だったの?とびっくりしましたが)こんなふうに、辛いことはなかなかないだろうけど。ふと流れるニュースの中で、聞いたことがあるような事件。物語としては、とてもわかりやすく、読み進めたけれど。 紘子が兄に救われ、憧れたように、主人公も紘子がいなくなった後に紘子の言葉に救われていく。苦しかった物語が、最後は涙なしには読み進められません。 エリカが、「面倒を見て欲しい」と海辺で話すところは、思わず涙が止まり笑ってしまいました。
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500ページ弱の分量と、内容の重さからして時間がかかるかもと思ってましたが、気が付けば時を忘れてのめり込み、あっという間に読み終わりました。 早見さんの文章は本当にわかりやすくてスラスラ読めますが、内容はかなりヘビーですので、読了するにはそれなりの胆力と覚悟が必要だと思います。 ...
500ページ弱の分量と、内容の重さからして時間がかかるかもと思ってましたが、気が付けば時を忘れてのめり込み、あっという間に読み終わりました。 早見さんの文章は本当にわかりやすくてスラスラ読めますが、内容はかなりヘビーですので、読了するにはそれなりの胆力と覚悟が必要だと思います。 帯にある、あの子を殺したのは「なに」という表記。「誰」とか「何故」とかではなく、「なに」に込められた思いを知るために最後まで読みましたが、だいぶ心を削がれました。軽々にお勧めはできないですが、読めて良かったと思える作品です。
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