ひとりでカラカサさしてゆく の商品レビュー
80代の男女がホテルの一室で猟銃自殺した。この衝撃的な内容から物語がどう展開していくのか、恐る恐る読み進めた。遺された家族や友人などの心境や生活を繊細に描き、生者と死者の関係を様々な人の視点でテンポよく表現されていて、これはショッキングな内容よりも亡くなった方との出会い直しの物語...
80代の男女がホテルの一室で猟銃自殺した。この衝撃的な内容から物語がどう展開していくのか、恐る恐る読み進めた。遺された家族や友人などの心境や生活を繊細に描き、生者と死者の関係を様々な人の視点でテンポよく表現されていて、これはショッキングな内容よりも亡くなった方との出会い直しの物語だなと思った。生前は関係がうまくいってなかったり、あまり接する機会がなかった家族が心の中で会話したり感謝したりする行為は、死者と新たな関係を築き直したんだなと読んでいて深く感じた。 とても心温かくなる小説だったと思う。
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萌音ちゃんの解説とてもよかった 登場人物が多くて、この人はだれとどういう関係の人だっけ??ってちょこちょこなってしまった
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80代の親友3名が一緒に人生を終えるところから物語が始まる。衝撃的な出来事から始まるが、悲しみの物語ではなく、それぞれが自分の人生を懸命に生きてきたことが分かっていく。江國香織さんの淡々とした静かな文章の中で、命や人と人の出会い、繋がり、どう自分らしく生きるかなどを考えさせられる...
80代の親友3名が一緒に人生を終えるところから物語が始まる。衝撃的な出来事から始まるが、悲しみの物語ではなく、それぞれが自分の人生を懸命に生きてきたことが分かっていく。江國香織さんの淡々とした静かな文章の中で、命や人と人の出会い、繋がり、どう自分らしく生きるかなどを考えさせられる。江國さんの小説に登場する女性は、いつも凛として潔くかっこいい。 そして、上白石萌音さんの解説もいい。多くの人の読後感を、とても的確に素直に表現されているように思う。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
死を覚悟する人の気持ちは、たとえ家族や長年連れ添った親友でも分からないものなのだと思った。 孤独な老人が命を断つだけでも、周りの多くの人の人生に影響を及ぼす。命の重みをひしひしと感じました。
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書影の美しさ、 上白石萌音さんの帯と 裏のあらすじが繋がらず 気になって手にとった一冊です。 ------------------------- 何も言わず、どこにも触れずに、 ただ誰かがそばにいてほしいと思うとき、 私には、この本がいてくれる。(上白石萌音) 人生に訪れる喪失...
書影の美しさ、 上白石萌音さんの帯と 裏のあらすじが繋がらず 気になって手にとった一冊です。 ------------------------- 何も言わず、どこにも触れずに、 ただ誰かがそばにいてほしいと思うとき、 私には、この本がいてくれる。(上白石萌音) 人生に訪れる喪失と終焉、 そして前進を描く物語。 ------------------------- 大晦日の夜、 ホテルに集まった80代の男女三人。 彼らは仕事仲間であり、古くからの友人だった。 そんな三人が猟銃で自ら命を絶つ。 残された子、孫、友人たち。 物語は、 三人の最後の夜と、 その後の周囲の人間たちの日常とで、 進んでいきます。 三人の夜はとても穏やかで優しくて、 それでもやはり物悲しさもあるけれど、 自分たちで終えるという意志も感じる。 残された家族たちは、 それぞれの関係と距離感、 性格と生活環境で、 受け止め方、その後は異なるけれど、 これまでになかった繋がりが生まれたり、 違う角度から眺めたり。 とても穏やかで静かな文章と、 猟銃という言葉の強さ、 だけどそれを選んだ背景があり。 それぞれが誰にも縛られずに生きている感じ、 不思議と清々しくて。 「あたしの人生は上出来だった」 私もそう思えるように日々を過ごしたい。
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久しぶりの、本当に久しぶりの江國香織。 登場人物がたくさんいて、話者がコロコロ変わるのは『枇杷の木、薔薇の木、檸檬の木』のようでなつかしい。という言い方もヘンだけれど。 途中であ、と思う。 血管に江國香織が入ってきたような感覚。 やっぱりこの人は普段見えないことを言ってくれるの...
久しぶりの、本当に久しぶりの江國香織。 登場人物がたくさんいて、話者がコロコロ変わるのは『枇杷の木、薔薇の木、檸檬の木』のようでなつかしい。という言い方もヘンだけれど。 途中であ、と思う。 血管に江國香織が入ってきたような感覚。 やっぱりこの人は普段見えないことを言ってくれるのが私の江國香織たるところ。 死が、今までのように漠然と遠いところにあるのではなく、生と死とがくっきり際立っているのは、作者が歳を重ねてくれたからだろう。 人生いろいろ取捨選択して今まで生きてきたのに、死だけは選べない。大抵の場合。 3人はそれを自分の意思で選び取った。 生きている皆、誰もできないことを。 いいこと悪いことというジャッジは出来ないけれど、力強くて憧れないわけじゃない。 自分に死がもっと近づいてきたらどう考えるのか、まだわからない。 けれど、その時読み返してみても悪くないかも。
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積読していたものをやっと読み切り 大晦日の夜に80代の男女が猟銃自殺をして、家族など周りの人々から故人の様子が語られていく話 勝手に3人の死の理由がサスペンス的に謎解きされる話かと思っていたので、特に明確な答えがなかったので、拍子抜け(こうやって何でもかんでも答えを求めるのは...
積読していたものをやっと読み切り 大晦日の夜に80代の男女が猟銃自殺をして、家族など周りの人々から故人の様子が語られていく話 勝手に3人の死の理由がサスペンス的に謎解きされる話かと思っていたので、特に明確な答えがなかったので、拍子抜け(こうやって何でもかんでも答えを求めるのは良くないところかと思いますが) 上に書いた(こうやってなんでもかんでも〜)のかっこ書きみたいな感じで、文章中に長いナレーション入るのが若干読みづらいなぁと思ったけど、読めば読むほどなんだか親しみが持てて、かっこ書きにも魂が宿ってるような?温かみのある文体だった。 あたしはお金はあるんだけど、お金があってもほしいものがなくなっちゃったの。ほしいものも、行きたいところも、会いたい人も、ここにはもうなんにもないの。 の一文は、つらかった…きっと、歳を重ねて自分も80代になったら亡くなってしまった3人の気持ちが痛いほど分かって、いろんな後悔が生まれて、そして一緒に自殺できるような仲間がいる3人を羨ましく思うんだろうな。 もう少し歳を重ねて、また一度読み返してみるといいかなと思う一作でした。
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解説まで読んで、 「あー、終わらない感じが大好きだ」と あらためて思った。 ずっと、自分の周りにあるような、 そんなお話し。 自分の近くで、踏子さんも、翠さんも、葉月さんも、 生活しているように感じる。 みんな、そんなふうにして、生きているし、 ある年齢的になったら、自分で自...
解説まで読んで、 「あー、終わらない感じが大好きだ」と あらためて思った。 ずっと、自分の周りにあるような、 そんなお話し。 自分の近くで、踏子さんも、翠さんも、葉月さんも、 生活しているように感じる。 みんな、そんなふうにして、生きているし、 ある年齢的になったら、自分で自分の人生の終わりを決めたくなるのだろう。 自分の終わりはあっても、自分の周りの人の生活は終わらない。 寂しいようで、寂しくない。
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80代の男女3名が猟銃自殺した。 老衰でも病死でもない意図的な死。 普通なら悲愴感に包まれる展開なのに、予想に反して穏やかに物語は進む。 読みながら思ったのは「死にゆく者の胸の内と、遺された側の思いは少しも交わらない」ということ。 置いていかれた方は、後悔したり寂しく感じたりいろ...
80代の男女3名が猟銃自殺した。 老衰でも病死でもない意図的な死。 普通なら悲愴感に包まれる展開なのに、予想に反して穏やかに物語は進む。 読みながら思ったのは「死にゆく者の胸の内と、遺された側の思いは少しも交わらない」ということ。 置いていかれた方は、後悔したり寂しく感じたりいろんな思いが溢れるだろう。 じゃあ反対に、先に逝った人はどんな気持ちなのだろう。 どれだけ想像したところで分かるはずがない。 黙って逝った、という事実しかない。 ホント、永遠の謎になってしまったな。
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結局最後まで「なぜ?」の思いが消えなかった。すべてを詳らかにする必要はないけれど、どうしても思いが届かない、いまだに僕は、もどかしさの最中にある。 タイトルから受けた印象は、しなやかに、軽やかに浮世を闊歩してゆくイメージだった…のに。一筋縄ではいかない人生の一方の端と、その向こう...
結局最後まで「なぜ?」の思いが消えなかった。すべてを詳らかにする必要はないけれど、どうしても思いが届かない、いまだに僕は、もどかしさの最中にある。 タイトルから受けた印象は、しなやかに、軽やかに浮世を闊歩してゆくイメージだった…のに。一筋縄ではいかない人生の一方の端と、その向こう側。もう一方の端の、こちら側。僕自身は、どの辺に立っているのかな。 多くのことを諦め続ける人生、ひと言、自業自得で括られて、多くを望まない生き方に、すっかり慣れてしまった。それはそれで不満も不都合もないけれど、もしかしたら、なんて思うことも、ないわけではない。嫉妬したり嘆いたり、後悔だって日常茶飯事。それでもどうにか生きている。不満はないけれど満足もしていない、つまり、そういうことかな、きっと人生とは、そういうものなのだろう。 それゆえに、この物語の中で目の当たりにした、ある決断には、僕自身理解の及ばない点もあるけれど、人生の深みに思いを馳せるきっかけになった。彼らの決断は、あくまでも自分らしく、そんな生きかたを貫いた結果なのだろう。そう考えると、それはそれで、ひとつの希望だと思った。読者の立場としては、残された側の人生を“これから”として生きてゆく。その傍には、きっと、この物語の存在があるのだろう。 文庫本の帯に上白石萌音さん、彼女が解説の筆を執ったとのこと。それを見つけたのが、この物語との出会いだった。彼女の文章も、これまた味わい深く、言葉を知っている人の文章だな、と思った。萌音さんの文章、もっと読んでみたいな。
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