夜が明ける の商品レビュー
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現代社会における苛烈で不遇な人生を、2人の主人公を通して精緻に描いた作品。「重い」というかメンタルを引きずられるので、読むタイミングは選ふかも。 描かれている境遇は、今も多くの人がその最中にあるありふれたものなのだろうが、「貧困家庭」「シングルマザー」「虐待」「ブラック」という言葉だけでは表現できない苛烈さがあると感じさせられた。 ありふれているというのは決して取るに足らないという意味ではないのに、どこかこれらの言葉で表される境遇や問題に「あーそれね」と慣れてしまっていた自分に気づかされ、恥ずかしくなる。 カテゴリ化・ステレオタイプで物事を見るのは楽なのだが、弊害も大きい。このことも、多様な方法で描かれている。 「当たり前に幸福を享受している奴ら」と作中で評される人々を決して悪いとは思わない。どこかに自分より不幸な人がいるからといって、幸せを感じてはいけないはずがない。人生、人と比べるものではない。 ただ、自分の人生で関わる数少ない人達に対して「目の前にいる困った人を助ける」という姿勢を持つことは、誰かの光になりうるのではないか。ニュースを見て様々な問題があるなと頭でっかちになるより、まずはその姿勢が尊いのではないか。他人の境遇ではなく、自分の状態を見て「助けて」と言えることが、その光を掴むきっかけになるのではないか。「助けて」と言える環境やきっかけをどう作れるのか。そんなことを考えた。 視線や見るという表現の多さは、現代社会(特に日本)の特徴の1つを表しているのであろうと思う。世間や人目を気にして生きるのは、ある意味社会で生きる以上当たり前なんだけど、今はネットもあるし、過剰かも。 アキは死が救いになってしまったのか、という部分は少し悲しい。彼がそれに憧れ、どこか願っていたとしても、アキラとして生きられたのだろうか?自分として生きられない人生もあるということなのか。 自分を不幸だと思い、人を恨み、なにか巡りが悪くなっていくスパイラルは、どこか昔持っていた感覚と似ていた。そこから抜け出せたのは、環境だったり人の巡りあわせであり、それを幸運だったというのだろう。感謝。
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重たかった。 人間は誰でも、あっという間に貧困に陥る可能性があるのだ。自分も、主人公のようにならないとは限らない。 世の中のことをもう少し知って、自分の頭で考えなければと思えた。 そういうことは、元気で余裕がある時にだけ考えられる。 自分のことでいっぱいいっぱいだといろんなこと考えられないから、やっぱり貧困は悪でしかない。 「夜が明ける」という言葉、とてもいい。 小泉今日子さんと同じで、私もアキ•マケライネンを検索した。実在して欲しかった。
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もうおじさんというかおじいさんに近い歳なのに、なんでこんなに揺さぶられるのでしょうか?西加奈子さんの小説は熱量がすごくて、それに飲み込まれちゃう感じがします。この小説も、冒頭から一気に掴まれてしまいました。主人公のような生活から程遠いので、惹かれるところがあるのかなあ? そして、...
もうおじさんというかおじいさんに近い歳なのに、なんでこんなに揺さぶられるのでしょうか?西加奈子さんの小説は熱量がすごくて、それに飲み込まれちゃう感じがします。この小説も、冒頭から一気に掴まれてしまいました。主人公のような生活から程遠いので、惹かれるところがあるのかなあ? そして、御多分に洩れず、私も調べちゃいました。民明書房以来だな。
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社会を生きていく辛さ。頑張りすぎてしまう様に読んでて重苦しくなる。 そして、彼の夜は唐突に明ける。描くのに疲れてしまったのかと思うほどあっけなく。 俺の夜は明けず。差し込む光に手を伸ばす。その程度。 どこまでも重苦しくて、何を思えばいいのかわからない。 落ちた人は這い上がれないの...
社会を生きていく辛さ。頑張りすぎてしまう様に読んでて重苦しくなる。 そして、彼の夜は唐突に明ける。描くのに疲れてしまったのかと思うほどあっけなく。 俺の夜は明けず。差し込む光に手を伸ばす。その程度。 どこまでも重苦しくて、何を思えばいいのかわからない。 落ちた人は這い上がれないのが現実。
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うーん、夜は明けるのか···? アキの夜は明けたのかもしれない。でも、夜明けの光を見たところまでだった気がする。 「俺」の夜明けはどうなるのだろう?
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腕を切りたくなる衝動、その描写 全てが痛々しく、目を細める程に辛い、ただひたすらに辛く救いのない状況を 読み続けることができず、読見終わるのに時間がかかってしまいました。 ですが、読んで良かったです。「負けない」という言葉は自分を奮い立たせ、いつしか呪いになっていき、その呪いに気...
腕を切りたくなる衝動、その描写 全てが痛々しく、目を細める程に辛い、ただひたすらに辛く救いのない状況を 読み続けることができず、読見終わるのに時間がかかってしまいました。 ですが、読んで良かったです。「負けない」という言葉は自分を奮い立たせ、いつしか呪いになっていき、その呪いに気づかず溺れてしまう。 そんな時に差し伸べてくれる、正してくれる、光があってよかった。自分がそうなった時、その光はあるのだろうか、こわくなった。
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私には文体が合ってて、すごい厚みの本だけど意外とグングン読めた 思ったよりも展開があるわけではなく、これでもかというほど身体性を描写してくる 大学で貧困の社会構造の講義を受けながら気が遠くなった気持ちを思い出した 描写が厚すぎてもういいよ、、、ってなるぐらいに 自己責任をやめよ...
私には文体が合ってて、すごい厚みの本だけど意外とグングン読めた 思ったよりも展開があるわけではなく、これでもかというほど身体性を描写してくる 大学で貧困の社会構造の講義を受けながら気が遠くなった気持ちを思い出した 描写が厚すぎてもういいよ、、、ってなるぐらいに 自己責任をやめよう、助け合おう、若い世代は古い世代の対話して世の中を少しずつ変えようといえはっきり政治色が出ている、そしてそれをオシャレな若手女子が担うところに西さんの期待を感じる 私も周囲をちょっとずつ良くする生き方がしたいよ
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西加奈子さんの著書は何冊か読んだと思い、本棚検索してみたら、なんと「サラバ!」だけでした。 人間って何者なんでしょうね?巻頭に3人の方の言葉が掲載されていて、市原悦子さんのは『悪人善人というのはない。人には美しい瞬間と醜い瞬間があるだけだ。』とありました。まさに人間を表してい...
西加奈子さんの著書は何冊か読んだと思い、本棚検索してみたら、なんと「サラバ!」だけでした。 人間って何者なんでしょうね?巻頭に3人の方の言葉が掲載されていて、市原悦子さんのは『悪人善人というのはない。人には美しい瞬間と醜い瞬間があるだけだ。』とありました。まさに人間を表している言葉だなと感じました。 読んでみて生きることが苛酷だなと感じるこの本のタイトルがなぜ「夜が明ける」なのかということも意識して読んでましたが、終盤の終盤でわかりました。あまり大きな意味はなかったけど(笑)、それぞれの苦悩にも必ず夜が明けるように解き放たれる時が来るよということなのかな... これで2022年に本屋大賞にノミネートされた10作品を読み終えたことになります。 下記がその時のランキングです。 ・本屋大賞『同志少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬 ・2位『赤と青とエスキース』青山美智子 ・3位『スモールワールズ』一穂ミチ ・4位『正欲』朝井リョウ ・5位『六人の嘘つきな大学生』浅倉秋成 ・6位『夜が明ける』西加奈子 ・7位『残月記』小田雅久仁 ・8位『硝子の塔の殺人』知念実希人 ・9位『黒牢城』米澤穂信 ・10位『星を掬う』町田そのこ これを自分なりに評価すると(毎度エラそうにすいません)、こうなりました。 ・1位『同志少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬 ・2位『赤と青とエスキース』青山美智子 ・3位『スモールワールズ』一穂ミチ ・4位『星を掬う』町田そのこ ・5位『正欲』朝井リョウ ・6位『黒牢城』米澤穂信 ・7位『六人の嘘つきな大学生』浅倉秋成 ・8位『夜が明ける』西加奈子 ・9位『硝子の塔の殺人』知念実希人 ・10位『残月記』小田雅久仁 やはり順位を付けるということは難しいですね。たぶん読んだ順番だとか、読んだ時の環境とか心の余裕度とかで順位は大分変ってくるのかな?と思います。やはり人間っていい加減ですよね。
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星2.5 何とも言えない重苦しさ。一気に読み進めばしたものの、辛かった。 唯一、最後の方の森さんと俺のやりとり(と言うか一方的な森さんからの語りかけ?)は辛いながらも救いを見出してくれていたように思う。 西さんの悲しみや怒りなどどちらかというとやり切れないマイナス方向のモノを、アキと俺という二人の物語に投影し、痛烈に訴えかけているという印象。 ちょっと苦し過ぎる内容なので、評価は辛口になりました。でも、極めて完成度は高い本だと思います。
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「アキ マケライネン」 これを検索した人は多いのでは。 実在?架空? ずるいよね、小説って。 なんでもアリだもん(褒め言葉)。 一刻も早く休んで!誰かに頼って!と主人公に声をかけたくなっちゃったけど、実際にそれを言われたところで耳に入らないよね。 人はどうやって追い詰められて...
「アキ マケライネン」 これを検索した人は多いのでは。 実在?架空? ずるいよね、小説って。 なんでもアリだもん(褒め言葉)。 一刻も早く休んで!誰かに頼って!と主人公に声をかけたくなっちゃったけど、実際にそれを言われたところで耳に入らないよね。 人はどうやって追い詰められていくのか、社会がどうやって人を追い詰めていくのか、とても苦しい、だけどとてつもない現実のお話だった。 孤立ほど怖いものってないかもしれない。 二人の高校生時代の素敵なつながりを心の支えに、最後まで読んだ。
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