夜が明ける の商品レビュー
主人公2人の生い立ちと生き様が壮絶過ぎて、読んでいて辛くなってきた。特にテレビ業界の働き方は、フィクションと分かっていても、読んでいて心が痛んだ。本作終盤、アキの日記がフィンランドから届いたところから、ようやく心穏やかに読むことができた。後輩の森の行き方が好き。そして、嫌な先輩だ...
主人公2人の生い立ちと生き様が壮絶過ぎて、読んでいて辛くなってきた。特にテレビ業界の働き方は、フィクションと分かっていても、読んでいて心が痛んだ。本作終盤、アキの日記がフィンランドから届いたところから、ようやく心穏やかに読むことができた。後輩の森の行き方が好き。そして、嫌な先輩だった田沢からの言葉、苦しかったら、助けを求めろ。は心に響く。この夜は本当に明けるか分からないが、読了時には、漠然とした希望を持てたことは確かである。
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描かれている問題で苦しんでいる人はたくさんいる。誰かに頼りなさい、相談しなさいとみんな言う。でもできない。学校も教えない。 あまりにも根が深い問題。
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西さんの、人の弱さとの向き合い方の描写がすごく好き。 主人公には印象深い友人がいた。フィンランドの俳優に激似の「アキ」は、背が驚くほど高くて顔の造作が日本人離れしており、吃音がありそれはそれは優しかった。 一度は選挙カーに轢かれそうになった主人公を庇って自らが跳ね飛ばされ(軽傷...
西さんの、人の弱さとの向き合い方の描写がすごく好き。 主人公には印象深い友人がいた。フィンランドの俳優に激似の「アキ」は、背が驚くほど高くて顔の造作が日本人離れしており、吃音がありそれはそれは優しかった。 一度は選挙カーに轢かれそうになった主人公を庇って自らが跳ね飛ばされ(軽傷だった)、それを自慢することなく静かに笑うだけだった。 アキは唯一の肉親だった母親から十分に愛されず、ケアされずに育ち、貧困とともに生きていた。 アキにとって、主人公から与えられた「俳優に似ている」という啓示は生きる希望であり、その俳優の所作やセリフを真似ることで自分を超える何かになることができた。 一方の主人公はバラエティ制作会社に勤め、パワハラやセクハラ、長時間労働に「根性」で耐え続ける。当然のように心身を病み、そのことに向き合うこともできず負のスパイラルに陥り、廃人のようになってしまう。奨学金が返せず、家賃も滞納し、貧困とともに生きることになる。 最後に彼に、「救い」を(ほんの少しだけど)与えることになるのは、元の会社の後輩で、古く望ましくない慣習を変えようと声を上げていた(だからこそ疎ましかった)女性あったり、 同じく元の会社の先輩で、ゴリマッチョな働き方を教えた張本人でもあり、その「勝ち負け」の捉え方に今では疑問を感じている女性であったり。 そして件の俳優が行きたフィンランドに渡り、穏やかな余生を過ごして亡くなった「アキ」の日記だったり。 とにかく主人公は、今置かれた「貧困」や「心の病気」や「うまくいかないこと」を、自分自身の不甲斐なさだけのせいにせず、周りに「助けてほしい」と言えるようになったし、正しく今の状況を恐れられるようになった。 西さんが後書で書いていたように、ただやみくもに「乗り越える」のではなく、状況を、心境を、「引き受け」て、歩いて行く感じ。 まだ夜明け前。 一番暗いところから抜け出せていない。 だけど、一番暗いところだと、自覚できている。
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とにかく疲れた…。 闇の中をぐるぐると歩かされているような感覚で… 読み始めたことを後悔したけれど、何とか読み終えて 読み終えた先に、達成感もなくてただ疲れだけが残った。
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読書という行為はどこか達観した印象があります。言うまでもなく物語は綴られたページの中でしか存在しないものであり(例えノンフィクションであっても)読者は外側からその世界を眺めるだけ。 この小説を読み進める中で、その意識がいつのまにか変わっていました。自分はこの物語世界と同じ地面に...
読書という行為はどこか達観した印象があります。言うまでもなく物語は綴られたページの中でしか存在しないものであり(例えノンフィクションであっても)読者は外側からその世界を眺めるだけ。 この小説を読み進める中で、その意識がいつのまにか変わっていました。自分はこの物語世界と同じ地面に立っているべきである、と。気づけば充血した眼で喰らいつくように読んでいました。 読み終わって本を閉じると、やはり小説と自分は切り離された存在で、「読み切った」という気持ちが浮かんでしまいました。しかし、物語を思い返すと、そこには確かに必死で世界にのめり込んでいた自分も存在していました。 良い読書体験でした。
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読みながら、同じように苦しんで焦って疲れ果てたような気がする。そのくらい重い文章だった。無理やり感のない終わりがとても好き。
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読んでいて辛くなりました、読み始めた事を少し後悔しながら読み終えました。 貧困やハラスメントなどが描かれているのですが、本当に苦しんでいる人たちは、助けて欲しいと声を出すことは難しい。 今の政治では解決出来ないだろうって考えると、辛さが増してきます。
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15歳で出会った俺とアキ。 そこから10数年、過酷な時代を生きた二人の物語。 西加奈子の描く物語はいつだって突き刺さる。 それは彼女の描く主人公が近すぎるからだ。 まるでこの小説を手に取り読んでいる自分を描かれている様な、 そんな心を抉られる感覚を何度も覚える。 一歩間違ってい...
15歳で出会った俺とアキ。 そこから10数年、過酷な時代を生きた二人の物語。 西加奈子の描く物語はいつだって突き刺さる。 それは彼女の描く主人公が近すぎるからだ。 まるでこの小説を手に取り読んでいる自分を描かれている様な、 そんな心を抉られる感覚を何度も覚える。 一歩間違っていたら自分もこうなっているのかもしれない。 そんな恐怖を毎回身に染みて感じてしまう。 だからこそ、読み手に覚悟を求める作家だと勝手に思っている。 だって、ここに書かれているのは自分自身の物語なのだから。
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読みながらずっと苦しかった。 日本社会の闇を垣間見た。 こういう苦しみを背負っている人って本当にいるんだろうな、と思うこの現実味の無さも、よくないのかもしれないけれど。 何が正解なのか分からなくて、自分の意思を持ちながらでも押し付けてはいけなくて。 自分も大切にして周りも大切...
読みながらずっと苦しかった。 日本社会の闇を垣間見た。 こういう苦しみを背負っている人って本当にいるんだろうな、と思うこの現実味の無さも、よくないのかもしれないけれど。 何が正解なのか分からなくて、自分の意思を持ちながらでも押し付けてはいけなくて。 自分も大切にして周りも大切にするのってすごく難しい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
最初から最後までシリアルな雰囲気で、私の好きな西加奈子作品とは毛色が異なっていると感じた。特に後半は息が上がるほど苦しい描写が続いた。過重労働、ハラスメントの描写は番組制作スタッフから実際に聞いたインタビューをもとに書いたとのことでリアリティがあった。主人公と年齢が近いこともあり、彼らの置かれている状況やこれから生きていく未来は他人事に思えなかった。作者の熱意を痛いほどに感じ、読むのがつらかったはずなのにページをめくる手を止められなかった。西加奈子の作家としての神髄を見た気がした。
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