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六色の蛹 の商品レビュー

4.1

32件のお客様レビュー

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2024/06/25

 前半は単発で文芸誌に掲載された作品、後半は単行本としてのまとまりを意識した書き下ろし、計六作を収録した短編集。  本書内でのまとまり以外に、過去作品とのつながりが見える箇所もあった。もちろん、前作を読んでいないと楽しめないということは全くないが、単に「この言及されているエピソー...

 前半は単発で文芸誌に掲載された作品、後半は単行本としてのまとまりを意識した書き下ろし、計六作を収録した短編集。  本書内でのまとまり以外に、過去作品とのつながりが見える箇所もあった。もちろん、前作を読んでいないと楽しめないということは全くないが、単に「この言及されているエピソード知ってる」と思えるという以上に、魞沢くんの物語の深まりが感じられ、読み応えあるなあと読書の喜びを噛みしめた。  あとがきで、ミステリというジャンルの魅力と自分の作品について櫻田さんが語っている言葉もまた印象深い。「ミステリーらしい/らしくない」「ミステリーなのに」というような表現はあまりしたくないが、魞沢くんシリーズを三冊目まで読んでみて今このシリーズに対して抱いている印象は、「ミステリーであることを忘れて読んでた」という感じ。良い短編を読んでいるなかに、そういえば謎解きの気持ち良さもあった、みたいな読み心地だ。  このたび三省堂書店で購入時限定の特典という特別書き下ろしなるものが読みたくて、幸い行こうと思えば行ける距離に店舗があったのでただ買えばいいだけだったのだが個人的に色々あって、すったもんだの末やっと読めた。図書館生活に慣れてしまい新刊本購入は躊躇しがちだったが、満足度の高い買い物ができて嬉しい。これからも推していきたい。今使っているスマホではエリの字が打てずこれまではカタカナにしていたが、ファンとしてまずは「魞沢」を辞書登録した。  以下は、個人的備忘メモ。 ■白が揺れた 「俺はそれを、どぶに捨てた人間だ」「拾って洗えばいいじゃないですか」 ■赤の追憶(既読) ■黒いレプリカ 信じ、疑い、離れ、喪い、閉じていた蓋がまた開けられる時に、魞沢くん。 ■青い音 櫻田さん、音楽もいけるのね。倍音。 ■黄色い山 魞沢くんシリーズの深み極まれり。 ■緑の再会 魞沢くん初登場時の、亜愛一郎風と思われたおとぼけ会話を彷彿とさせるところがありながら、これまでの魞沢くんの物語を読んできた私はもう魞沢くんの涙を唐突とは思えない。 ■ミツバチと押し花※ やさしかわゆしロマンス ■青の追憶※ 書き出しは笑いました ※三省堂書店限定特別書き下ろし

Posted byブクログ

2024/06/24

虫好きの魞沢くんが探偵役としてさりげなく謎を解決するミステリの三作目。相変わらずどこかとぼけた風貌の心優しい魞沢くんが、ささやかなヒントから謎を鮮やかに紐解いていく物語。 ではあるものの、あくまで「真実を暴く」のではなく、「当事者の心痛を取り除く」ために寄り添うように彼が存在して...

虫好きの魞沢くんが探偵役としてさりげなく謎を解決するミステリの三作目。相変わらずどこかとぼけた風貌の心優しい魞沢くんが、ささやかなヒントから謎を鮮やかに紐解いていく物語。 ではあるものの、あくまで「真実を暴く」のではなく、「当事者の心痛を取り除く」ために寄り添うように彼が存在しているのが好きだなと思いました。 今回の作品集ではとりわけ「赤の追憶」が好きです。号泣しました。ささやかなところまで無駄なく敷きつめられたミステリらしさの完璧さと、登場人物たちの想い、切ない希望まで同時に描き上げた、秀逸な一編だと思いました。大好きです。

Posted byブクログ