1,800円以上の注文で送料無料

水たまりで息をする の商品レビュー

3.7

27件のお客様レビュー

  1. 5つ

    4

  2. 4つ

    12

  3. 3つ

    7

  4. 2つ

    2

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2024/06/26

「夫が風呂に入らなくなった」 という印象的な出来事から始まり、そこからの夫婦の生活が描かれる。 終始、妻・衣津実の視点で綴られ、夫は多くを語らず、風呂に入らなくなった本当のところの理由は明らかにされない。 そんな夫との暮らしを維持し大切にしたい感情と、後半から現れる夫を許せない感...

「夫が風呂に入らなくなった」 という印象的な出来事から始まり、そこからの夫婦の生活が描かれる。 終始、妻・衣津実の視点で綴られ、夫は多くを語らず、風呂に入らなくなった本当のところの理由は明らかにされない。 そんな夫との暮らしを維持し大切にしたい感情と、後半から現れる夫を許せない感情の両方を内面に持ち、その状況を俯瞰する冷静さもある衣津実。 このような二面性が、ある。割り切れない複数の感情は、同時に存在し得る。 生活を現状維持しようとしても、周囲は待ってくれない。 衣津実は変化を決断するが、そこからは周囲にじわじわと苦しめられていく。 結末は突然訪れる。 時が経てば状況が良くなるかもしれない。苦しみが続く可能性もある。それらが全て消えた(ように思える)結末。 それでもこれから「生き延びて」いくであろう衣津実の強さを感じるラストだった。

Posted byブクログ

2024/06/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

不穏でざわざわして、ちょっとだけ切ない。 でもこれは夫婦の愛の話なのかなあ。 夫がお風呂に入らなくなった、という 一見非日常な設定なのに、描写がものすごく日常的で、 だからこんなことが自分の人生に起こらないと言い切れるのか…?と言う気持ちにさせられてしまった。 自分が主人公の立場だったらどうするかなと思うけど、突き放す自分も受け入れる自分も両方想像できてしまうので、わからない。 最後まで不穏だし、ハッピーエンドとは程遠いけど、なぜか読後感は悪くない…と言うか辛くはならなかった。

Posted byブクログ

2024/06/17

夫がある日を境に風呂に入らなくなった。理由は分からない。でももう全てが嫌になる瞬間って人生である気がする。東京に来た頃、押しつぶされるような満員電車に毎日乗り、明らかに普通の状態でない人が周りにいても無視を決め込む人たちに驚いた。自分の人生経験上明らかに異常な光景だった。この先う...

夫がある日を境に風呂に入らなくなった。理由は分からない。でももう全てが嫌になる瞬間って人生である気がする。東京に来た頃、押しつぶされるような満員電車に毎日乗り、明らかに普通の状態でない人が周りにいても無視を決め込む人たちに驚いた。自分の人生経験上明らかに異常な光景だった。この先うまくやっていけるのかと不安になった。でもすぐに自分は慣れてしまった。というか鈍感になった。 風呂に入らないことで生じる弊害はたくさんある。会社からの評判、姑の不満。でも夫が周りにどう思われるかという1点を除いては妻にとってはそれはどちらでも良くて、周囲の目がない場所に2人で暮らせば関係のない話である。妻にとっても夫が入浴しないことが日常になっていく。 川魚なのに海水混じりの場所に放流された「台風ちゃん」のように夫がこの先うまく生きていけるか分からないし、あの雨の後に夫がいなくなったかも分からない。でもきっと大丈夫なんだと思う。それくらいの楽観的な感覚というか、鈍感になってしまっても良いかもしれない。 明確な悪意を持った登場人物が出てきて、それに対して特に言葉にはしないけど心の中で考えてしまう主人公。でもそれを決して態度には出さない。一緒になって嫌な気持ちになれる。高瀬先生の作品を読むと、自分の負の感情が鋭利な形になって引き摺り出される感覚に陥る。

Posted byブクログ

2024/06/16

夫が風呂に入らなくなったという一点のみで進む、ある意味すごく尖った作品だと思う。 普通は狂気じみるところを、なるべくそうならないように描かれたように感じた。

Posted byブクログ

2024/06/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

お風呂に何日も入らないことがないので、どのくらい入らないとどのくらい臭うのか、見た目の変化などよく分からないが、自分のイメージするそれとは少し違っていて、そういう違和感みたいなものを感じながら読み進めた。 後半は、母の言葉や台風ちゃんの話が、夫にこれから起きるであろうことを示唆していて、それは読んでいる途中で気が付いてしまったので、大体この先に起きることが分かってしまったのが少し残念だった。 主人公にとって、夫は拾ってきた魚と同じなんだろうか。魚は本来の川に戻ったということでいいのかもしれないが、夫は都会育ちだし川に戻るわけでもないし、魚に例えられているようないないような、なんかちょっとしっくりこないなぁ、という感想。 ただ、主人公の主体性のなさや、心のなかで考える夫への愛や怒りなど、共感できるところも多かった。

Posted byブクログ

2024/06/12

常識からの逸脱により、果たして夫は救われたのだろうか。堪えられてしまう地獄があり、そんな地獄を生きながら、ある日突然ぷつんと線が切れるように、何かができなくなる。そんな経験が自分にもあるけれど、ここまで徹底して、周りをかえりみずに行動できるのは、すごいなと思ってしまった。自分もそ...

常識からの逸脱により、果たして夫は救われたのだろうか。堪えられてしまう地獄があり、そんな地獄を生きながら、ある日突然ぷつんと線が切れるように、何かができなくなる。そんな経験が自分にもあるけれど、ここまで徹底して、周りをかえりみずに行動できるのは、すごいなと思ってしまった。自分もそこまで外れることができれば、もっと楽に生きられるのだろうにと思わなくもない。

Posted byブクログ

2024/06/10

ある日、夫が風呂に入らなくなった このインパクトは強すぎる。。 自分が妻の立場だったら別れも考えるが ここまで見守る衣津実の行動も苦しく考えさせられた。 雨に打たれるってもう普通じゃないけど 普通ってなに、、とも考えてしまった。

Posted byブクログ

2024/06/06

風呂に入らなくなった夫の話。 最初は普通・常識に囚われない!みたいな話かと思ったけど読んでみるとそんなに単純な話ではなくて、都会と田舎、結婚と独身、出産と友人関係などなど色々と絡み合って話が展開していく感じ。 風呂に入らない夫、という極めて単純な導入なのに。 高瀬隼子さん作品、や...

風呂に入らなくなった夫の話。 最初は普通・常識に囚われない!みたいな話かと思ったけど読んでみるとそんなに単純な話ではなくて、都会と田舎、結婚と独身、出産と友人関係などなど色々と絡み合って話が展開していく感じ。 風呂に入らない夫、という極めて単純な導入なのに。 高瀬隼子さん作品、やっぱり好きだ! 終盤衣津美の生々しい感情、素の部分が見れたのが良かった。 最初の衣津美の印象は「夫が大好きな人」「人と比較しないで自分を強く持ってる人」って印象で、流れで結婚したけど段々愛情が芽生えてきたという「普通」の妻なのかなと思ったけど違った。 最後読んだあとはここに来て魚の話…?と不思議な気持ちになったけど解説を読むうちにゾッとして鳥肌たった…。「取り付く島もないなあ。」怖…。 衣津美は冷たいとも違うけど、自己愛が強いというわけでもなさそう。不思議。。こういう女性は世間ではよくいる女性なのだろうか? 共感したのは「持ち堪えてしまう」というところ。 私もどんなに辛くても狂えない自信があるし、辛かったら「今自分結構辛いなあ」とちょっとメタな思考になるから 心は泣いてても表向きは分からないことが多い気がする 素晴らしい作品だし感動したけど拙筆なせいで走り書きのように感想を書きました。 もっとゆっくり落ち着いて言語化していきたい。。

Posted byブクログ

2024/06/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

夫がなぜお風呂に入らなくなったのか 世間は入らない彼を不思議に思うし、不愉快に思う。でも主人公の妻は徐々にお風呂に入らない夫を受け止めて、自分の実家の川の近くに住むことも受け止める。愛なのか、なんなのかな。 最後はやはり夫は流されてしまったのかな

Posted byブクログ

2024/06/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

黙って距離をとって避ける、普通な家庭であり続けるはずだったのに、夫が、外から見たらそんなヤバい人になり、けれど衣津実は何もなかったかのように出勤し、夫の変わりぶりを冷静に見守る。読んでいて自分の心が静かになっていった小説だった。すごい。 衣津実の本心が分からない。でも本心なんて本人も分からないんだろうなとも思った。 いちいち感情的になっては社会で生きていけない。 優しさってなんだろうとか、自分たちの人生を生きていくってどういうことなんだろうって感じたし、選択したり行き着く先が社会でいう普通ではなかったら、幸せと感じるのは難しいのかな。 それでも、生き延びてしまう残酷さ、残酷という言葉で書かれた水上さんの解説に共感したし、それが現実…と思わざるを得なかったけど。 少しでも自分が心地よいという感覚に敏感でいたいと思った。 私にとってはとっても大切な読書体験となった。 心理描写がすごく丁寧で言葉選びが好きで、 高瀬さんの他の著書を読みたいと思った!

Posted byブクログ