女の子たち風船爆弾をつくる の商品レビュー
独特の文体で最初は掴みづらいところもあったが、女の子たちが夢あふれ、憧れの制服、タカラヅカ、キラキラしたものから段々戦争が身近なものになり、自分たちが爆弾を作る側に回る。コンニャクが原料だったとは。 戦後ゼロ年東京ブラックホールを読んだあとだったので、戦後のあれこれも答え合わせの...
独特の文体で最初は掴みづらいところもあったが、女の子たちが夢あふれ、憧れの制服、タカラヅカ、キラキラしたものから段々戦争が身近なものになり、自分たちが爆弾を作る側に回る。コンニャクが原料だったとは。 戦後ゼロ年東京ブラックホールを読んだあとだったので、戦後のあれこれも答え合わせのような感覚で読んだ。 かつての女学生もずっと苦しんでいたんだとずっしり来る話であった。
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「わたしは」「わたしは」「わたしたちは」 いつまでも青春の只中にあるあの日の少女たちは こんな小説初めて読んだ。 個人が主人公でもない。主人公はいるかもしれないし、いないかもしれない。わたしは、わたしたちは、といった主語で綴られていく、確かにあった記憶の数々。 少女たちの戦争は...
「わたしは」「わたしは」「わたしたちは」 いつまでも青春の只中にあるあの日の少女たちは こんな小説初めて読んだ。 個人が主人公でもない。主人公はいるかもしれないし、いないかもしれない。わたしは、わたしたちは、といった主語で綴られていく、確かにあった記憶の数々。 少女たちの戦争は、たとえ形式的に戦争が終わったとしても、いつまでも続いていく。 あの太平洋戦争を、戦時中の部分だけを切り取ってはい、戦争は終わり。という話ではない。 そのことに、強い衝撃を受けた。 なんとも言えない、壮大な少女たちの記録を読み、様々な感情が胸で入り混じる。 ぜひ読んで、その読後感を、噛み締めてほしい。
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膨大な資料や証言を元に「名もない」女の子たちの戦争体験をつづった圧巻の書。 これまでも戦争の話は聞いたり読んだりしてきたと思っていたけど、まだ全然足りてなかった。女性の、弱い立場の人たちの体験、被害者であると同時に加害者でもあるということ。 他人事ではないし、「かつて」の話でもな...
膨大な資料や証言を元に「名もない」女の子たちの戦争体験をつづった圧巻の書。 これまでも戦争の話は聞いたり読んだりしてきたと思っていたけど、まだ全然足りてなかった。女性の、弱い立場の人たちの体験、被害者であると同時に加害者でもあるということ。 他人事ではないし、「かつて」の話でもない。戦争は、今を生きるわたしたちに地続きであることを、強く感じさせる作品だった。
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関東大震災以降、長く続いた先の戦争の時代、さらに戦後から現代に至るまで、権力側ではない市井の人々が、権力側の人々により翻弄された(というか、破壊された)生活を、今も変わらず差別されている人たち(少女)からの視点で描かれてる 事実をもとに描かれてる(と思う)、ただ表現の仕方に、読...
関東大震災以降、長く続いた先の戦争の時代、さらに戦後から現代に至るまで、権力側ではない市井の人々が、権力側の人々により翻弄された(というか、破壊された)生活を、今も変わらず差別されている人たち(少女)からの視点で描かれてる 事実をもとに描かれてる(と思う)、ただ表現の仕方に、読んでて初めは戸惑ったけど、わたしたちのと何度も何度も繰り返す意図が少し理解できてくると、今まで見たことがなかった表現に深く同意するようになる とても良かったです
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
戦争 もう遥かに遠いところまで来てしまったつもりでいるけれど、この彼女たちの声が次々に 耳元で聞こえる。全然遠くなんてない。 華やかな時、辛い時、痛い思いをした時、女の子たちはいつも声をあげている。 いまの私達にできることはこの彼女たちのあげた声を聞き続け伝え続け、そして考えること。 多くの資料を元に書かれたこの本は決してフィクションなのではなく本当にあったこと。 この機会で手に取らなければ、きっともう読まなかったかも、だって風船爆弾ですよ! 人間って愚かな生き物だと改めて思います。 その後、図書館で『女たちの風船爆弾』 亜紀書房刊をみつけよんでみたらよりノンフィクションで恐ろしかった。こちらの本は、 ISBNもなくブクログでは検索できないほんだった。女の子たちの笑顔の写真も多く、より痛々しい。 今回の新しい文藝春秋社刊の本がなかったら、こちらの図書館の本は人知れず埋もれてしまったのかと思うと切ない。 小林エリカさんの舞台芸術のような本に出会えてよかった。でも、もう一冊の方の本にも出会えてよかった。
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去年の夏から秋にかけて『文學界』で集中連載されていた(連載時のタイトルは「風船爆弾フォリーズ」)のをずっと読んでいたが、いろいろな点ですごい作品だったので単行本でもう一回読み返そうとずっと待っていた(の割に5月からいままでバタバタしてて購入が遅れてしまったが…)。 戦前のまだす...
去年の夏から秋にかけて『文學界』で集中連載されていた(連載時のタイトルは「風船爆弾フォリーズ」)のをずっと読んでいたが、いろいろな点ですごい作品だったので単行本でもう一回読み返そうとずっと待っていた(の割に5月からいままでバタバタしてて購入が遅れてしまったが…)。 戦前のまだすこしのどかだった時代から時間を追って、戦争の足音が近づき、戦争が始まって終わって、戦後の日々が続いていく中を生きていく女の子たちの日常が綿密な取材をもとに描き出される。
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物語は、日中全面戦争前夜の1935年(昭和10年)、東京都心で生活し、学校に通った少女の目を通して、第2次世界大戦の戦前、戦中、戦後を生活史の視点で描きます。1937年の南京陥落では提灯行列を行い、戦勝記念に湧きます。戦中は、風船爆弾組み立て工場として使用された東京宝塚劇場に集め...
物語は、日中全面戦争前夜の1935年(昭和10年)、東京都心で生活し、学校に通った少女の目を通して、第2次世界大戦の戦前、戦中、戦後を生活史の視点で描きます。1937年の南京陥落では提灯行列を行い、戦勝記念に湧きます。戦中は、風船爆弾組み立て工場として使用された東京宝塚劇場に集められ、製造に携わった女学校の生徒たち。風船爆弾は9300発がアメリカに向け放たれ、約1000発が米本土に到達したと推定され、アメリカ人6人が犠牲になった事実も丁寧に考証します。少女たちの目線から、戦争と無縁に見えた日常が国粋的な空気に包まれ、国家総戦力に駆り立てられる空気。戦争は、軍隊の戦闘による生死だけではなく、非戦闘員である生活者に最も被害が及び、国家の名のもとで駆り立てられる国民を自省史観でとらえる事の重要性が伝わります。この本は、248項の注釈、8ページの参考文献リストが巻末に記載され、校史や同窓会記録、証言資料など詳細な記録に基づく証言録ともなっています。そして、男性の戦争加害者、政治家等の名前を一切出さない異色の歴史小説であり、近現代史を男性名で学んだ人にとっては、理解に苦しむ作品かもしれません。そこに、この小説の名もなき女性、言葉を残したくても残せなかった少女らの名前を刻む著者の思いが伝わります。
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戦時中 女学生たちは、風船爆弾をつくった。 「わたし」で語られる個人史と 「わたしたちの兵隊」「わたしたちの満州」「わたしたちの大政翼賛会」など「わたしたちの」で語られる情勢。 戦争被害者ではあるけれども 加害者でもあることが「わたしたちの」で突きつけられる。 そして、それは当...
戦時中 女学生たちは、風船爆弾をつくった。 「わたし」で語られる個人史と 「わたしたちの兵隊」「わたしたちの満州」「わたしたちの大政翼賛会」など「わたしたちの」で語られる情勢。 戦争被害者ではあるけれども 加害者でもあることが「わたしたちの」で突きつけられる。 そして、それは当時を生きた人だけでなく戦後に生まれた私たちにも。 歴史は、良きことも悪しきことも地続きであると感じた。
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この物語の主人公は、「わたしたち」である。 戦争の話として登場する人々は、階級や役職や通称としての名は書かれているが、実名はない。 歴史に名を残すことなく、静かに暮らす人々を淡々と記したお話である。 前半はその表現に拒否反応がおこり、読む速さが落ちてしまったが、後半からはリズ...
この物語の主人公は、「わたしたち」である。 戦争の話として登場する人々は、階級や役職や通称としての名は書かれているが、実名はない。 歴史に名を残すことなく、静かに暮らす人々を淡々と記したお話である。 前半はその表現に拒否反応がおこり、読む速さが落ちてしまったが、後半からはリズムがつかめ「わたしたち」に感情を寄せることができるようになった。 春が来る。 桜の花が咲いて散る。 と言う一年を表しているフレーズと、冒頭の うゐのおくやま けふこえて あさきゆめみし ゑひもせす に込められた無常感を思うと苦しくなる。 しかし、それを静かに掬い取った作者の力に感動した。
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風船爆弾については、いろいろなところで読んできた。アメリカの原子爆弾に対抗して、日本は風船爆弾をアメリカに向けて飛ばしていた、と言う本を読んだときにはこれは本気だったんだろうか?これでアメリカに勝てると思ってやっていたのだろうか?半ば冗談の話では無いなんだろうか?と思いながら読ん...
風船爆弾については、いろいろなところで読んできた。アメリカの原子爆弾に対抗して、日本は風船爆弾をアメリカに向けて飛ばしていた、と言う本を読んだときにはこれは本気だったんだろうか?これでアメリカに勝てると思ってやっていたのだろうか?半ば冗談の話では無いなんだろうか?と思いながら読んだ記憶がある。 本書で風船爆弾を作る少女たちの物語を読むにつけ、陸軍登戸研究所、満州国731部隊、日本全国で100,000発の直径10メートルの風船爆弾を作っていたと言う事実に驚かされた。 様々な物語は、語り継がれること、語り継がれずに歴史の中に消えていくこと、戦争をどう考えるのか?いろいろなことを考えさせられた。
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