夜露がたり の商品レビュー
江戸下町の長屋に生きる訳ありの人々の姿を通して、人の心のうちにある昏い部分を描き出す8つの短編。 夫婦、幼馴染、親子、友達、好いた女、昔の男。共に長い時間を過ごしても互いに明かせない思いがある。好きな相手だからこそ言えない思い。相手を思うが故に苦しむ主人公たちのやるせない思いが伝...
江戸下町の長屋に生きる訳ありの人々の姿を通して、人の心のうちにある昏い部分を描き出す8つの短編。 夫婦、幼馴染、親子、友達、好いた女、昔の男。共に長い時間を過ごしても互いに明かせない思いがある。好きな相手だからこそ言えない思い。相手を思うが故に苦しむ主人公たちのやるせない思いが伝わってくる。 どうにもならない思いを抱えながら、それでも食べて、生きていかなければならない切なさは今も昔もなんにも変わらないんだろうなぁとしみじみ。 どれもなかなかダークな物語だけど、それでも終わりに少しの希望が見える「半分」と「妾の子」に救われた。
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市井物の時代短編集。8編「帰ってきた」「向こうがわ」「死んでくれ」「さざなみ」「錆び刀」「幼なじみ」「半分」「妾の子」 初期のどうしようもなく暗かった頃の藤沢周平を思い出します。 まあ、砂原さんご自身が「デビュー直後から藤沢周平への私淑を公言していた。」とおっしゃっているので影響...
市井物の時代短編集。8編「帰ってきた」「向こうがわ」「死んでくれ」「さざなみ」「錆び刀」「幼なじみ」「半分」「妾の子」 初期のどうしようもなく暗かった頃の藤沢周平を思い出します。 まあ、砂原さんご自身が「デビュー直後から藤沢周平への私淑を公言していた。」とおっしゃっているので影響を受けているのは間違い無いようです。 そうは言っても「焼き直し」ではありません。短編ながらストーリーのヒネリがやや強く、クルリと反転する感じは周平さんと少し違います。また、最後の一編を除き、主人公が闇に堕ちて行くところは似ていますが、その闇は初期の周平さんの様な漆黒ではなく、やや月明かりが差す闇の様です。 暗転ではなく、暗から明に転回する「妾の子」を最後に置き、少し晴れ晴れとした読後感になりました。
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市井の人を題材とする時代小説で、これまでの架空の神山藩の侍とは違っているのですが、砂原さんの文章のファンの方には楽しめると思います。短編集なのですが、8編通して「夜露がたり」ですね。
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冒頭の「帰ってきた」以外は粒揃いで、流石砂原作品は市井ものも面白い。ただ神山藩シリーズのような傑作とも思わなかった。武士(浪人だが)が出てくる「錆び刀」はラストの展開含めやはり面白いので、武家ものがあってると思う。短編タイトルに込められた一筋縄でいかないストーリも良い。
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時代物小説ながら勧善懲悪ではなく、人間の業を肯定する結末に満足できた。人の心の理不尽さを描くことで、登場人物への感情移入を容易にしてくれた。 8編の中でも「死んでくれ」「さざなみ」「錆び刀」「妾の子」が好みだ。 砂原浩太朗作品は追いかけていきたい。
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「予想外の展開と結末を堪能できます」とあるが,個人的にはやりきれない結末が多い。 朝のラジオで紹介されていて読んでみたくなってジュンク堂書店で購入
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