夜露がたり の商品レビュー
砂原さんを追って、6冊目。一時、だれた感無きにしもという作品、箇所もあるにはあったが。 これはよかった。若い頃、時代物にはまった後、定型的人情噺に厭いて、離れた(特に女流作家ものは) 近年の雑誌連載物をまとめているが概ね、江戸期に底辺の男女愛と行方を綴っている。 士農工商がが...
砂原さんを追って、6冊目。一時、だれた感無きにしもという作品、箇所もあるにはあったが。 これはよかった。若い頃、時代物にはまった後、定型的人情噺に厭いて、離れた(特に女流作家ものは) 近年の雑誌連載物をまとめているが概ね、江戸期に底辺の男女愛と行方を綴っている。 士農工商ががっつり社会の骨に組まれていた当時の社会。 幕末社会の風俗写真を見ても臭ってくるような時間だったことは想像に難くない。 まして長屋住まいなどは。 砂原氏はお家騒動、跡目もの、道場藩校と士族の日常を出しており、そちらも面白かったが、今回は「創造とはいえ、リアルに眼前に情景が見えてくる」ような作品揃いだった。 最期の「妾の子」はよい。 終始、湿り気を帯びた救いのない惨めな流れでの作品の終わりが、これでシャント着地で来た・・江戸の時間も捨てたものじゃない事もある。
Posted by
砂原氏の描く懐の深い老武士が好きなので、市井物もなんとなくじんわりと余韻を味わえる作品を想像していた。見事に救いのない結末を迎える作品ばかりで呆然としてしまったが、「市井物だからこそこうなのか」という他の方のコメントを読んで納得した。最後の作品は砂原氏から読者へのお詫びなのではな...
砂原氏の描く懐の深い老武士が好きなので、市井物もなんとなくじんわりと余韻を味わえる作品を想像していた。見事に救いのない結末を迎える作品ばかりで呆然としてしまったが、「市井物だからこそこうなのか」という他の方のコメントを読んで納得した。最後の作品は砂原氏から読者へのお詫びなのではないか、と思ってしまった。
Posted by
長屋住みの人たち。産まれも育ちも貧しくて、抜け出せない。貧しさが人を蝕む。岐路に立っても、ダメな方の選択肢を選んでしまう。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
暗くなる話ばかりで途中で読むのをやめようと思ったが、書き手の上手な話の運びについつい読み進めてしまった。 そして最後の「妾の子」がハッピーエンドで本当にほっとした。繁蔵が良い奴でよかった。るい、幸せにねー!
Posted by
勧善懲悪ではなく、江戸の暮らしの中で「人間の業や理不尽な運命」に翻弄される庶民の姿。醜い心持ちにげんなりだけど、そこは砂原さん、最後はなんとなく肯定。後味はそれほど悪くない。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
【収録作品】帰ってきた/向こうがわ/死んでくれ/さざなみ/錆び刀/幼なじみ/半分/妾の子 生まれや環境からは逃れられないのか。救われない、これが現実。人の悪意や自分の努力だけではどうにもならない事実をつきつけられる。 これは江戸時代だから、ではない。今も変わらぬ現実である。確かにうまいけれど、辛い。 「あたしはあたしのもんだっ」と叫べたおみのに希望を見るけれど。
Posted by
江戸の長屋で慎ましく暮らす人々を描いた八篇の短編集。行間に漂う、しめやかな冥さと心の機微が秀逸。恨みつらみに気が鬱ぎつつも、彼らの生への執着や人情に微かな希望が見えた。
Posted by
江戸市井物の短編集 氏の長編が大好きなのだがこれはこれでたいそう面白かった 通り一遍の人情物と思わせて一捻りがあったりなかったり 短編集としてのバランスが実に良い
Posted by
市井を描く八篇からなる短編集。 砂原浩太朗さん、そう来たか! 長屋に住む人々の物語。 どういう展開になるのか楽しみにしていた。 腰高障子を引けば全てが見渡せるほどの狭さ。 井戸端でのかしましい声。 全編を通して伝わる、長屋のじとっとした空気が重苦しい。 「幼なじみ」 P183...
市井を描く八篇からなる短編集。 砂原浩太朗さん、そう来たか! 長屋に住む人々の物語。 どういう展開になるのか楽しみにしていた。 腰高障子を引けば全てが見渡せるほどの狭さ。 井戸端でのかしましい声。 全編を通して伝わる、長屋のじとっとした空気が重苦しい。 「幼なじみ」 P183 〈いちど裏長屋に生まれたら、ふたたび表通りは歩けない〉 「錆び刀」は、浪人に落ちた者の話。 どうしようもなく自分の想いに流されてしまうが 清々しさも感じられる一編。 武士の矜持を描いた物語も読み応えありだが 精一杯生きる市井の人たちも良かった。 今作が初めてという読者のみなさん。 既刊もぜひ。
Posted by
江戸の市井の 決して裕福ではない人々の営みを ありのまま描きながら 奇をてらうでもなく 誰にでもあるような気持ちの裏側を さらっと見せるのがうまい。 情景や人物たちの様子が 淀みない言葉によって ありありと浮かび上がってくるから その中へ入り込んでいるような気になる。 いつまでも...
江戸の市井の 決して裕福ではない人々の営みを ありのまま描きながら 奇をてらうでもなく 誰にでもあるような気持ちの裏側を さらっと見せるのがうまい。 情景や人物たちの様子が 淀みない言葉によって ありありと浮かび上がってくるから その中へ入り込んでいるような気になる。 いつまでも過去を引きずってしまう男より 気持ちだけでは生きてはいけない と突っぱねられる女の方が 昔も今もしたたかでたくましいものだなー。
Posted by