灰の劇場 の商品レビュー
単行本で解説がなかったので「0」「1」「(1)」が何なのか分からずモヤモヤとしながら読んでいた。後半になるに連れてフィクションとノンフィクションが交錯していくと、フィクションのパートでふたりの女性に小説家が飲み込まれていきそうになる、というか境界が曖昧になっていく感じが面白かった...
単行本で解説がなかったので「0」「1」「(1)」が何なのか分からずモヤモヤとしながら読んでいた。後半になるに連れてフィクションとノンフィクションが交錯していくと、フィクションのパートでふたりの女性に小説家が飲み込まれていきそうになる、というか境界が曖昧になっていく感じが面白かった。 人間は意外に衝動的に、瞬間的に死ぬんだな。これから結婚せず1人で生きるという人も増えると思うけど。結婚しなかった場合、ひとりで死ぬまで何十年も変化の無い生活を続けていくんだなと思うと、ふと死にたくなるかもしれない。
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一緒に暮らしていた女性二人が橋から飛び降りて、自殺をしたという事件がずっと残っていた”私”がそのことを調べて小説にしていくというところから始まる、フィクションとノンフィクションパートが交互にくる構成の1冊 なんというか恩田陸さんのノンフィクション部分が、ある事件をもとにフィクショ...
一緒に暮らしていた女性二人が橋から飛び降りて、自殺をしたという事件がずっと残っていた”私”がそのことを調べて小説にしていくというところから始まる、フィクションとノンフィクションパートが交互にくる構成の1冊 なんというか恩田陸さんのノンフィクション部分が、ある事件をもとにフィクションを制作するということでその女性二人の想像上の人生に呑み込まれそうな感じもあり、そのあたりの境目があやふやになりそうで、何度か今どのパート読んでるっけ?とページをめくりかえした その感じが自分もこの「灰の劇場」の世界に気がついたら呑まれている感じもして、今までにない読書体験だった また恩田陸さん自身もこの女性たちも40代のなかば~後半の女性ということから、その時代のジェンダーロールや、いわゆる氷河期世代のなかで生きていくこと、生きていたことの切実さは、おそらく私には体感できないことで、可能な限り想像をして、その過酷さに胸を痛めることしかできない また実際の事件をフィクションとすることの困難さやどうしても付随してくる罪深さ、創作そのものの業のようなものも、あの恩田陸が書いてくれているのはなんというか勇気づけられた。おもしろくて、私にとっては良い小説だった
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何気なく見てずっと心に引っかかっていた中年女性の2人が自死したという新聞記事を小説に書き下ろすという話。フィクション(1)とノンフィクション(0)の交互展開で書かれていて、切り替えながら読み進めていける面白さあり、作者の実際の(日常の)考えてることや視点に「それ、あるある」という...
何気なく見てずっと心に引っかかっていた中年女性の2人が自死したという新聞記事を小説に書き下ろすという話。フィクション(1)とノンフィクション(0)の交互展開で書かれていて、切り替えながら読み進めていける面白さあり、作者の実際の(日常の)考えてることや視点に「それ、あるある」という共感あり。でも終始、私にはモヤっという読書を強いられてる感じで、読み進めるのが正直たいへんでした。。。
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事前情報なく読み始めたのがよかった。 0部分がノンフィクションと知らず、この本の言葉を使うと単なる能としての小説家(顔を思い浮かべなかった)セクションとして読み、 1部分は0部分の小説家が描いた小説の内容なのか?それとも事件があった2人の本当の過去編なのか?と読み進めた。 読了後、TとMに想いを馳せる。自分に重ねる。 Tは自分の未来ではないか? わたしは今後誰かと死にたいと思うのだろうか? 自分に絶望して死を選んだのち、 才能のある人間の食糧として消費されていたら。
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一気に読まなかったから0,1表記がなんだかごっちゃになっちゃったな。 直後に読んだ「どうしても生きてる」とかなり似てるところがあった。死は特別ではなく日常の連続の中に不意に訪れる。揚げ物の油を固めるやつがなかったことに気づいたときみたいな、最期のきっかけは些細だけど絶望的な何か。
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「ザリガニ」の隣に堆く積まれてたので、小生初の恩田陸さん。仲良し2人の女性が自殺に至った、原因と考えられる「人生の不都合」を物語る。話を聞いてあげられたらなー、と思いながら読んだ。ラストの構成も圧巻。
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始まりは、とある三面記事。 一緒に暮らしていた女性2人が飛び降り自殺を図ったという内容。 作家である著者は数十年も前に目にしたその記事がずっと心に引っかかっていた。 著者(ノンフィクション)と記事の女性たち(フィクション)を交差させる物語の運び方に夢と現が混じり合うような不思議...
始まりは、とある三面記事。 一緒に暮らしていた女性2人が飛び降り自殺を図ったという内容。 作家である著者は数十年も前に目にしたその記事がずっと心に引っかかっていた。 著者(ノンフィクション)と記事の女性たち(フィクション)を交差させる物語の運び方に夢と現が混じり合うような不思議な気持ちで読み進めた。 "結局自分の理解する範囲でしか物事を見られない。ましてや人間には感情があって、必ずしも合理的な行動を取らないことは証明されているし、他人の考えていることも決して理解できない。記録があっても、それを残したのは勝者と決まっているから、何か事件があっても「どうしてなのか」を知ることは無理だろう。数行の記述にまとめられた事典の内容だけでは、歴史の輪郭にすら触れられない。" 著者の想像で作られた彼女たちの日常、人生… 第三者がいくら頭を捻ろうと真実は分かるはずがない。 そんな虚構の世界。 しかし、どこか他人事とは思えない世界。 限られた情報であらゆる推測を立てて結末へ繋げようとする作家の思考が垣間見えた気がした。 余談だが、著者の書くエッセイが読みたいと思った。
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恩田陸自身の感情がふんだんに組み込まれなノンフィクション&フィクション作品。実際にあった、新聞の小さな記事に書いてあった事件を題材に、その事件の真相と、その事件を選んだ彼女自身の葛藤を描く物語。 「0」がノンフィクション、「1」がフィクションというわ変わった形式。最初は...
恩田陸自身の感情がふんだんに組み込まれなノンフィクション&フィクション作品。実際にあった、新聞の小さな記事に書いてあった事件を題材に、その事件の真相と、その事件を選んだ彼女自身の葛藤を描く物語。 「0」がノンフィクション、「1」がフィクションというわ変わった形式。最初は理解ができず、何度かページを遡った。この本の見どころは、実際にあった事件について、事件が起こったこと以外の事実がわからないまま、彼女なりの「虚構」として事件を描いていることだ。この「虚構」を描く中で、葛藤や悩みが相当あったことが文章からわかる。 「日常」とは何か。「死」とは何かを問いながら、自然の流れのまま死=消えゆくMとTへの思いを、ノスタルジアの魔術師として描く、奇妙で、それでいて温かみがある本であった。
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新聞の隅っこに、ひっそりと載せられた記事。それが棘のように、1人の作家の胸に刺さる。その棘から生み出された作品です。 名言:本や映画に一定の時間をさくというのは、それだけ孤独を強いられるということでもある。
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過去に起こった女性2人が心中した事件を題材とした物語。 過去と現在を行ったり来たりで、ちょっと難しかった。。 この物語を作る側は、特に何の真相は求めてないのです。 ただ過去に新聞の三面記事に載っていた『女性2人の心中事件』が心に引っかかり、それを基に物語を表現しようと奮闘する。...
過去に起こった女性2人が心中した事件を題材とした物語。 過去と現在を行ったり来たりで、ちょっと難しかった。。 この物語を作る側は、特に何の真相は求めてないのです。 ただ過去に新聞の三面記事に載っていた『女性2人の心中事件』が心に引っかかり、それを基に物語を表現しようと奮闘する。 どうしても頭の中で、心中事件の女性2人をイメージすると阿佐ヶ谷姉妹が出てきてしまう。。笑 事件が起こった当時と、物語を書いている現在が入り混じった書き方をされているので難しかったです。 でも、「物語を書く」「表現する」裏側が覗けたようで楽しかった。
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