一線の湖 の商品レビュー
墨一色に無限の色彩を映し出す水墨画_ 水墨画の奥深さに 何度もため息がもれました… 水墨画という世界を知れば知るほど… 霜介は描き方の技法ばかりに心が 囚われていたことに気づく 忘れかけていた大切なものと向き合い 過去の自分を受け入れ 心や筆の赴くままに描い...
墨一色に無限の色彩を映し出す水墨画_ 水墨画の奥深さに 何度もため息がもれました… 水墨画という世界を知れば知るほど… 霜介は描き方の技法ばかりに心が 囚われていたことに気づく 忘れかけていた大切なものと向き合い 過去の自分を受け入れ 心や筆の赴くままに描いていく… 師匠から託された未来を 取り戻していくストーリー 墨や紙 白と黒 そして 線というシンプルなものから 形成される表現の世界の複雑さや奥深さの中で 霜介が一つひとつ目に見えないものを掴んでいく様… その感触や匂いが文面から鮮やかに伝わってきました! 心地よく耳に流れるような数々の言葉から 静けさを感じながらも力強さも感じられ 水墨画を描く躍動感と共に 何度も心に迫ってくるものがありました!! 墨のグラデーションのように スーッと溶けていく感じが心に広がりました 素敵な物語が読めて幸せです…♡ この余韻を味わいながら 眠りにつきたいと思います
Posted by
「線は僕を描く」の続編。前作はひょんなことから水墨画の師につくことになった大学生・霜介のお話だった。この主人公は両親を不慮の事故で亡くしていて、その喪失感から抜け出せず漠然と日々を過ごしていた。そこで水墨画に出会い、湖山会を率いる湖山先生と弟子たちとの交流があり、ひたすら線を描く...
「線は僕を描く」の続編。前作はひょんなことから水墨画の師につくことになった大学生・霜介のお話だった。この主人公は両親を不慮の事故で亡くしていて、その喪失感から抜け出せず漠然と日々を過ごしていた。そこで水墨画に出会い、湖山会を率いる湖山先生と弟子たちとの交流があり、ひたすら線を描く修行をするなかで、自分の人生を再び取り戻してゆく物語だった。 前作および本作は、水墨画というニッチな世界を丹念に描いていくものでもあり、大変興味深かった。墨と筆で線を描きその線の連なりで絵をなしてゆくことが大変難しいことだということが伝わった。一つの線にその人が表れる。その意味で、前作は「僕は線を描く」ではなく「線は僕を描く」というタイトルだったのだろう。率直に言って、とても好きな作品だった。今作のタイトルについては、ネタバレになるので詳しくは言わない。 前作では、水墨画を描くことで自分の人生を取り戻した主人公だったが、続編である今作では、新たに子供たちとの交流などを通じて両親の死を受け入れ、自分の進路を選び取ってゆくという話が紡がれた。今回はより、芸術を生み出す芸術家の世界を垣間見たように思う。静謐な世界の中で、主人公はときにくよくよしながらももがき何かをつかんでゆく。 今作の中で響いた箇所がある。亡くなった教師の母親が成してきたことに、主人公が気がつくところだ。水墨画家でなくとも、人は、未来につなぐ線を、自分自身の人生の長さを超えるスケールを想定して描いている。その人の描いた線は、その人の命が尽きたあともこの世界に残るというのが真理ではないか?と。以下引用: 「母は自分が生きた一瞬や自分自身のために、力を尽くしていたのではない。人を育て、自分自身さえ見ることはないかもしれない遥かな未来に向けて、線を描いていたのだ。 子どもたちの宝物をみつめ、想いを託すことで、線を送った。時を超える線を、母は描いていたのだ。 人は命よりも永く線を描くことができる。」(引用) ちなみに前作は横浜流星と清原果耶で映画化されており、映画版も私はすごく好きだった。よって本作を読むにあたっては、私は脳内で横浜流星と清原果耶を想像しながら読んだ。これも読書および小説の映像化の醍醐味。
Posted by
水墨画の魅力がまたたっぷり感じられる1冊でした。以前に読んだ「線は、僕を描く」では、自室で寝食を問わず一心不乱に課題に取り組んでいた描写が印象的で、なんか孤独感あって暗いな…と。ただ今回は「揮毫会」という、絵師が白紙から作品を書き上げる工程をそのまま披露する会があり、パフォーマン...
水墨画の魅力がまたたっぷり感じられる1冊でした。以前に読んだ「線は、僕を描く」では、自室で寝食を問わず一心不乱に課題に取り組んでいた描写が印象的で、なんか孤独感あって暗いな…と。ただ今回は「揮毫会」という、絵師が白紙から作品を書き上げる工程をそのまま披露する会があり、パフォーマンスを失敗できない緊張感や臨場感、華やかさも感じられました。複数名で一緒に一枚の絵を描く共作も前回はなかった要素で、小学生との取り組みは、主人公の孤独感が薄れてて良かったε-(´∀`*)ホッ 『無限の形をした菊の花が、眼前に現れた。すべての絵が乱れ、流麗な線は一つもなく、どれも巧くはなかった。けれども、どの花も生きていた。』 2024.9
Posted by
『線は、僕を描く』の続編。霜介が講師として訪れた小学校の子どもたちから得た「気づき」は、読者にも響いてくるものだと思いました。
Posted by
349ページ 1800円 9月4日〜9月6日 忘れた頃にやってきた続編。前の本を読んだときには、霜介の気持を想像するしかなかったけれど、今は世界が白いこととかなんとなくだけどわかる気がする。子どもたちのおかげもあり、人としての感覚を取り戻していき、水墨画家として壁にぶつかる霜介...
349ページ 1800円 9月4日〜9月6日 忘れた頃にやってきた続編。前の本を読んだときには、霜介の気持を想像するしかなかったけれど、今は世界が白いこととかなんとなくだけどわかる気がする。子どもたちのおかげもあり、人としての感覚を取り戻していき、水墨画家として壁にぶつかる霜介から、不思議と目が離せない。水墨画に興味が湧くと共に、自分も描いてみたくなった。
Posted by
最後のページを読むのが大変だった。 涙で文字がぼやけてしまって。 ぼやけてしまうから何度も同じ所に戻ってまた涙が出て読めなくなってを繰り返してやっと読み終えた。 本を閉じた今もスンスンしてて若干の酸欠気味。 こんなに泣いたのいつぶりだろう? 優しくて強いなぁ。 前作はとても色鮮や...
最後のページを読むのが大変だった。 涙で文字がぼやけてしまって。 ぼやけてしまうから何度も同じ所に戻ってまた涙が出て読めなくなってを繰り返してやっと読み終えた。 本を閉じた今もスンスンしてて若干の酸欠気味。 こんなに泣いたのいつぶりだろう? 優しくて強いなぁ。 前作はとても色鮮やかだった記憶に対して、今作は白と黒の世界だった。 この対比がまたすごい。 話は変わるけど前に別の本で絵本を通じて知り合ったお友達が亡くなったと書いたんだけど、実は私彼女が亡くなった事を彼女を知る人誰とも話ができていないの。 私は読み聞かせの代表をしているからその関係で学校から知らされた。 その時には既にお葬式も何もかも終わっていてお別れも何もできなかった。 ご家族の意向もあって学校側から口止めされた。 だから誰にも言えなかった。 でもそれってとてもしんどい事だったんだね。 誰とも悲しみを分かち合えないってこんなにも辛い事だったんだ。 そろそろ話してもいいよと彼女が言っているような気がした。 あー泣きすぎて目が痛い。 午後の仕事に差し障らないかしら笑
Posted by
美しく繊細で、そして力強さを感じる前作からの続きでした。 水墨画と人の心の描写に、圧倒され、こちらが乗り遅れないよう読み捉えるのに必死でした。 登場人物の心の動きが、水墨画が描かれることを通して伝わってきて、悲しさ苦しさ愛おしさ、言葉では表せない想いをぶつけられた気がしました。 ...
美しく繊細で、そして力強さを感じる前作からの続きでした。 水墨画と人の心の描写に、圧倒され、こちらが乗り遅れないよう読み捉えるのに必死でした。 登場人物の心の動きが、水墨画が描かれることを通して伝わってきて、悲しさ苦しさ愛おしさ、言葉では表せない想いをぶつけられた気がしました。 不甲斐ない自分に苦しくなって目を瞑りたくなり、動けなくなってしまった時、立ち止まって待つ勇気、目を向けて周りを見渡す勇気を持つことも大切なのだと、自分の中にしか目が行かずもがいている時、先が見えなくてつらい時、また読み返してみたい本でした。 それぞれが持っている自分だけの線、みんなとの繋がりの線、そんな一線を大切にしていきたいなと思いました。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
今作もよかったなぁ。 霜介の悩みや葛藤を打ち破ってくれたもの。 そのきっかけは子どもたちだった。 子どもたちとの出会いにより、自身の過去を見つめ、成長していく姿が描かれる。 その心の描き方がとても繊細で。 「どんなに素晴らしい技術があっても、それを生かす心がなければ意味がない。器そのものが大切なわけではない。器に何を注ぐかが大切なことなのです」 という、湖山師匠の言葉がもう答えなのだろう。 でも、その答えの先は、自分で導き出すしかなくて。 そして「大切なのは受け入れること」だったと霜介は気づく。 それは、謙虚であることの尊さであるようにも思った。 自然を描くということは、人間もその一部に過ぎないことを知ることから始まるのかもしれない。 何かを表現するとき、自分の力ですごい作品を作ろうとするんじゃなくて、心の声に耳を澄ませることが大切なのだと思った。 水墨画を通して描かれる、霜介の成長や湖山師匠の生き方に胸をうたれた。
Posted by
「線は僕を描く」の続編。前作に劣らず良かった。水墨画を描くシーンの文章表現は心が動く。「線は僕を描く」の映画を観てから読むのがオススメです。
Posted by
前作が良かったので、今作をかなり楽しみにしてきたのだが想像以上に面白かった。 水彩画を描くときの言葉による表現が巧みで言葉選びが美しいという言葉では言い表せないくらい好き。私の想像力では賄いきれないほど緻密で繊細で濃厚な世界が広がっていて、果てしなさに目眩を起こしそうになった。...
前作が良かったので、今作をかなり楽しみにしてきたのだが想像以上に面白かった。 水彩画を描くときの言葉による表現が巧みで言葉選びが美しいという言葉では言い表せないくらい好き。私の想像力では賄いきれないほど緻密で繊細で濃厚な世界が広がっていて、果てしなさに目眩を起こしそうになった。自然を慈しみたいと思った。 指に墨をつけて描くという手法を初めて知り、面白いなと思った。指で描くことで遊び心が生まれて趣深くなるのだと知った。 両親を亡くした傷が癒えていない中、母の勤務した学校で子供たちと向き合い、当時の先生と会って話をする中で過去を受け入れていくシーンが特に好き。母の学習指導要領を見たり、当時の先生から母が子供を心から愛していることを知ったりする中で母の慈悲深さや子供のまっすぐな目、素直さに感嘆するところが良かった。 印象に残った言葉 子供は自然を観るのではなく変幻自在に遊ぶ。 拙さが時に優秀さよりも勝る時がある。 誰もが心の中に絵師を持っている。無限の可能性を持つ存在。だけど時ともに忘れてしまう。絵師とはそれを心の中に維持続けようとすることなのかもしれない。 99 全員が千差万別、無限の変化を探しているように思えた。水墨画というのはもしかしたらこんなふうに発展したのではないかとさえ思ってしまう
Posted by